Chapter 1-1
お待たせしました╰(*´︶`*)╯♡
「冒険者ライセンス停止っ!?」
「はい、エストレア様は長期間活動なさっていなかった為、規則により冒険者資格を白紙化されております」
怒涛のような二つの帝国を後にしたエストレア達は1度、シェートリンド王国に戻ってきていた。
目的は勿論、路銀を稼ぐため。冒険者という立場であることを思い出し、久方ぶりにシェアトの冒険者ギルド本部に足を運んだのだが……
「もし冒険者を続けるのであれば、新規発行ということになりますが……」
「ぐ、ぐぬぬ……!」
「それか、銀貨5枚で仮資格証を発行し、一定の評価達成で資格の再発行という方法もございます」
こうなってしまえば、背に腹は変えられない。エストレアは長考の末、仮資格証を職員から受け取ることにした。
「お、久しぶりじゃねえか」
受付を後にして、依頼が張り出されている掲示板に向かう途中、懐かしい声が聞こえてきた。
振り返れば、そこには背中に魔導銀製の両手剣を背負った青年、ジッド・スウェードの姿。隣には魔法使いの女性アンナの姿もあった。
「久しぶりだな、ジッド、アンナ。息災だったか?」
「そりゃ、こっちのセリフだっての。帝国にいたんだろ?戦争やら大災害やらなんやらで大変だったって聞いたぜ?」
「そうそう。貴女がいなくなったあと、帝国側からこっちに魔獣達の押し寄せが凄かったんだから。大移動じゃなくて、何かから逃げてきた、って感じだったけどね」
アンナの言葉に、エストレアはふむ、と顎に手を当てた。
「まあ、間違ってはいないな」
「そうなのか?」
「帝国では色々あったからな。本当に色々と」
詳しくは語らない。
語れば長くなるし、何より思い出したくない案件が山ほどある。
反政府集団の鎮圧や大使として出向く皇子の護衛をやったり。
マリウスとか。
他国を丸ごと巻き込んだ世界戦争一歩手前の戦争が起きた。
他にもマリウスとか。
世界そのものを焼き尽くす化け物を倒したりもした。
あとマリウスとか。
気が遠くなるようなとんでもな出来事に遭遇したことを思い出せば、自然と達観した気持ちが湧き上がってくる。あと、こうなるきっかけを作ったマリウスは絶対に許さない。
「目が遠くに行ってるわね」
「よっぽど激しかったんだろうよ」
「それよりお前達はどうしてここに?」
「依頼探しだよ」
アンナが掲示板を指差す。
「最近は海洋連合行きの護衛依頼が増えてるの」
「海洋連合?」
海洋連合といえば、船乗り達の国家だったはずだ。オルビス大海洋に浮かぶ移動する船団だと記憶している。
「なんでも未開域の海域で1発当てたらしくてな。開拓するのに人がいるらしい」
「私達も稼ぎ時と思って何か受けようと思っているの。もしよかったらまたパーティー組まない?アグニルとか喜ぶわよ」
「別に一緒に同行するだけでもいいぜ。そっちもそっちでパーティー組んでるなら、無理強いはしない」
今の冒険者達のトレンドが海洋連合、即ち海にあるというのならそれに乗っかるのも有りだろう。
道中の旅も、顔見知りなら心強い。とはいえ、今の自分はジェシカやイルナ達と旅する一行だ。パーティーとして加えるのではなく、同行くらいは大丈夫だろう。
エストレアは考えた末に、彼らの申し出に応えることにした。
「よっしゃ!そう来なくちゃな」
「じゃあ、行き先まではよろしくね」
こうして、エストレアは帝国の次は海を目指すことになるのだった。
◆◇◆◇
「というわけで、海行くぞ」
「うーん、突然だね?」
エストレアは冒険者ギルドから戻ったのち、手配していた宿で皆と合流して、次の目的地を決めた。
「海だなんて久しぶりですわ!」
「「私達は海なんて見たことないから、ちょっと気になる」」
ジェシカや双子の反応は様々だったが、まあ貴族令嬢とダークエルフという閉鎖的な種族とでは至極真っ当な反応だろう。
唐突な方向に対して、淡々とした反応を見せたのはマリウスだが、現在彼はエストレアが大外刈りで沈めて足蹴にしている。
着替え途中に転移して戻ってきてモロに見られたからなのだが、正直言ってマリウスのやることなすことはこっちが火傷している前提で最終的に上手くいくようにメイキングするため、扱いが雑になったところで対して痛くもない。
「それで、お姉様?どうして海に行くことになったんですの?冒険者ギルドで何か関係が?」
ジェシカの質問に対して、エストレアは端的に説明する。
資格失効は別にいう必要はないので、今現在海洋連合の未開域の開拓に需要が集まっているから、という理由を伝えた。
「既に護衛依頼を受けた。同行パーティーも一緒だ。ジッド達のパーティーだ」
「な、懐かしいですわね」
ジェシカもイルナ達も馴染みのある名前を聞いて、少しだけ顔が綻んだ気がする。
まあ、自分たちは言うのもアレだがまだうら若き少女。知らない他人と一緒よりかはだいぶマシだろう。
「ふむ、話を聞く限り、悪い話じゃないよ。ちょうど僕も次は君をどこに導こうかな?と思っていたけど君が行くなら渡りに船とはこのことだね」
すると、踏んづけていたマリウスがこちらに視線を向けてその口を開く。正直、こいつが言うことは信用はできるけど信頼はしていない。
だが、それよりも聞き逃せない台詞に対して追求しなければならない。
「ほう?帝国だと私達を奴隷に落としたお前が、今度はどこに導こうって言うんだ?」
「いや、ほら。あれは仕方ながないことだったんだよ、うん。済んだことはもういいだろう?今は先のことを考えないとおおおお!?」
まさかのやらかしの棚上げとは恐れ入る。もう一回、キャメルクラッチで腰の骨をへし折ってやろうか、と思うほどに沸々と怒りが込み上がる。
「それで、海洋連合なんだけどね?まあ、僕には見えているわけだけど、行き先は2択あったんだ。そのうちの一つが海洋連合ってわけさ。因みにもう一つの候補はペルア共和国さ」
「まぁ、どのみちどっちを選んでも君が行く末は変わらないし、別にいいかなって」
もはや言葉すら出てこない。預言者であり、最高峰の魔法使いである彼のいうことだ。ほぼその通りなのだろう。
クズも一周回れば、正常に見えるから不思議である。
「清々しいほどに腐ってますわね……」
「「だから部族のみんなはこいつ嫌い」」
そういうわけでエストレア達は海洋連合へ向かうべく、その準備を整えることに。
そして、三日後───………
◆◇◆◇
「それじゃ、よろしくな!」
「こちらこそ。お互い頑張ろう」
エストレア達はシェアトの門付近で落ち合ったジッド達と合流し、護衛対象の商隊と打ち合わせを行った。
前日に依頼者とはジッド達とスケジュールを組んではいるが、改めての確認である。
「人数よし、物資よし、体調よし!では行きましょう!」
アンナの掛け声で、商隊はシェアトを出る。これからエストレアは新たなステージに降り立つ。
だが今は、かつての仲間と花を咲かせるのも乙というもの。
(こういうこともいいな)
荷馬車に揺られながら、澄み渡る青空の下、彼らは進み出す。
星が巡る物語。
彼女が綴る絵本。
どうぞ、皆様。三幕目、お見逃しなく───………
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