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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
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Chapter Fatal Battle 4

お待たせしましたヾ(๑╹◡╹)ノ"



 灼熱を閉じ込めた異界、【夢幻回廊】に月が昇る。


 その光は、眩き天日たる輝きにあらじ。


 冬の冷たい月光、万象を凍てつかせ、刻を氷の牢獄と化し、永劫の静寂を強いる機能ルールならば。


 クンネチュㇷ゚──即ち夜に輝くカムイの如く、スカジの影のように天蓋を覆う。


「ふぅ…………。【告げる】」


 それは冬の狩りの果て、魂を天へ還す儀式なれば。


 眼前には破滅を齎す極光を今にも放たんとする怪物の姿。何をモタモタしてあるのかと言われそうではあるが、不思議と焦る気持ちが芽生えることはない。



「光来せよ、我が月震。古き約定にて、我が内に星を宿す時だ」


「其は輪廻を廻すもの。生きとし生けるもの、その全ての始まりにして終わり也」



──想い起こすは月光。静寂の水面に写し取られた盈月、その光に魅入られ、狂果てる狂気。



「草地を照らす日は黄昏の彼方に墜ち、地平の彼岸より月光は暗く照らしながら夜の帳が下りる」


 静寂の雪原に映る皓月、その光に魅入られたが最後、その心はかつての面影を残さない。


──我は嗤う。


 不死と不老を渇望せし愚かなセレネ、エンディミオンの寵愛を砂粒の如く零す様を。


「ならば狂愛とは月光の理なれば、あらゆる激情と万物の激変を我は永久とこしえに統べ、裁き、調停せん」



──古より月は神秘そのもの。その光は時の皇帝の心さえ惑わし、昂らせ狂わせる。



「月の祈りに救いなどなく、ただ水面に映る鏡月へ我が言葉ことのはを刻み込むのみ」


 チュㇷ゚カムイよ、クンネの闇に我が渇望を捧げよう。新月の影にて、狩りの牙を研ぐ時が来たのだと。


「『故に我は渇望せり、遍く悪よ沈黙せよ』」



 高密度の魔力が紫電となって迸る。焼けるような奔流が体の隅々まで行き渡る。


「日輪の焔が万物を照らし焼き尽くすならば、この手が光らせる月光は万物を停滞する刻の氷河である!」



 背後に現れる月より、気配がする。多くの動物と同じように臆病でありながら、決して芯を間違えない意思。


 古き造神つくりがみの残滓、月の残り香を纏う獣神の残響。


 ホロケウカムイの牙、スカジの狼の遠吠えを聞け。


 背後から抱きしめるような、抱擁される感覚を覚えつつもエストレアの身が月夜の煌めきの如き光を浴び始める。

 


【ならば星の娘よ、我が権能を貴方に還しましょう】

 


 古き黎明、リリスの夢を汝の渇望にて此処に示しめせ。


 チュㇷ゚の光にて、魂を天へ。スカジの弓にて、獲物を射抜く。



「是非もなし。小さき月女神よ、我が言祝ぎを祝福せよ」


「ペウレチュㇷ゚の如く、三日月の牙にて断ち、スカジの影より傷つける刃を与えよ!」


 エストレアの姿が変わる。


 アグルの力を発現した黄金の鎧は消え、白と銀を基調とした、踊り子めいた薄布の衣装に変わる。


 それは銀の毛皮を纏い、雪の装飾が輝く冬の女王。


 紅蓮の長髪はツインテールに纏められ、頭には湾曲の角と狼耳の冠――ホロケウカムイとスカジの狼の象徴を戴く。


 背後に三日月の光背(ペウレチュㇷ゚の弧)を背負い、その手に獣の爪牙を思わせる鋭利な勾玉を握る。


 それはカムイの牙から変じた狩りの刃。


「我が名エストレアの御名において、顕現せよ【寒永の盈月(マニニ・マヒナ)】!!」


 宣誓により、異界に神秘の月が現れ、灼熱の溶岩を掻き消して水面のような静寂が吹き荒れる。


 同時にアグルの力が消えた事で戦車はその力を無くしたが、ダークエルフの双子とネロの足元には鏡面の月のような波紋にも似た力場が発生し、彼らの身体を守る。


 そして、その手には月女神の権能が具現化した力。聖遺物にも並ぶとも劣らぬ、いや凌駕する代物。


 勾玉の姿をしたそれは、魔力を込めると身の丈以上の大鎌へと変化する。それは月女神がエストレアに与えし爪にして牙であり、刃である。


 大鎌の銘は【破万切はばきりアロンダイト】。雪の結晶とも、湖面の青とも言える冷たい刃が月光に反射して光る。


 躊躇なく、エストレアはその大鎌【破万切アロンダイト】を振るう。


 その斬撃は三日月を描き、全てを無へと帰す五つの砲撃へ衝突する。








パキィィィィン………!!!







 一瞬とも一分とも分からない静寂を挟み、ガラスが割れるような音を立てて空間が割れる。大地を吹き飛ばす砲弾はその割れた空間の向こうに消えて、その姿は見えなくなった。



───だが。


 それで止まるほど、眼前の敵は優しくない。


『ピピ……砲撃の無効化を確認。高密度の魔力放出を認識。最重要抹殺対象より検出あり』


『システムへ要請。第三、第四拘束プログラム解凍許可を求む』


『異なる座標への干渉波パルス攻撃要請。異空間座標軸歪曲……実行許可……【承認】』


 イズバザデン・アポクリフォートの五つの砲身が、再び赤熱プラズマを溜め始める。


だが今度は単なる砲撃じゃない。空間に漏れ出た紫電が空間そのものが歪め、エストレアと繋がっているマニニ・マヒナとの接続を断ち切らんとする一撃である。


『引き続き【対地殻破砕徹甲弾】装填。射撃効果アップデート。【対概念破砕チップ】、【異空間座標干渉波チップ】を適用します』


 バリバリバリ、と嫌な音を立てながら、その禍々しい光を放たんとする。


『発しゃ──「「させない」」』



 だが、その光は放たれない。


ドゴォォオオオオン!!!!


 漆黒の外骨格、鎧黒天クリシューリ・スーリャダスラを纏ったイルナとイザルナが飛び出して、その超怪力で殴り飛ばしたのだから。




◆◇◆◇





『敵戦力、修正……。ダークエルフの未成熟個体二体。強化外骨格に相当する形態を確認、脅威度を更新、レベルを5に変更。戦闘規模を修正、最優先事項に変更はありません』



「タフすぎんだろ………」


「あれほどの巨体ですわ。ちょっとやそっとの攻撃は意に介さないでしょう」


 そう漏らすのはネロだ。エストレアもその言葉に同調し、巨神兵を駆るジェシカも同意と言葉を発する。


 音声から察するに、ダークエルフの二人の打撃を受けても怯みはしても大したダメージではない。


 怯んだのも奇襲によるものだ。なまじ機械的であるが故に、一度は通じても二度目はほぼないに等しいと思われる。


「だが、やるしかねえ」


 ネロが握る魔剣から魔力が紫電となって迸る。魔剣の出力を抑えていた《対魔力(チャフ・)拡散反射(マギストス)フィールド》は今現在機能してない。


 故に今までは下がらざるを得なかったネロもその闘志を燃やし、その意思に反応して魔剣も放電する規模も上がっていく。


「オラァッッッッ!!!」


 一閃。纏った雷エネルギーが放出され、イズバザデン・アポクリフォートの表面に直撃する。


バリィィィィィ!!!!!バチ、バチ……!!!


「チッ、弾きやがる。厄介だな」


 しかし概念防御による守りは健在らしく、ネロの放った魔剣の一撃は表面をわずかに焦げさせたのみで明確なダメージに至っていない。


「はっ!」


 次いでエストレアが魔力を推進力として放出し、その大鎌を振るう。



──シャリンッッッ!!


──バキィィィィィン!!!!



 思い切り振りかぶり、振り下ろした事で五つの砲身の内の一つを破断する。


 剥き出しになるケーブル線と寸断された大口径弾頭。そこへ畳み掛けるように跳躍したイルナとイザルナの漆黒の外骨格が、まるで生き物のようにうねる。


「「砕けろ」」


 エストレアによる攻撃に重ねるように叩き込まれたダークエルフの怪力による一撃は、概念防御の守りが薄れた箇所を的確に抉り取った。


「お姉様!合わせますわ!」


「憑依形顕、『フィンブルの冬』よ!!いけ、ジェシカ!!!」


巨神兵を駆るジェシカには、巨神兵が握る巨剣ラハールに加護を付与。


「うぉおりゃあああぁあっっっ!!!!」


 貴族の娘としてどうなのかと思うような雄叫びをあげて、巨神兵はバーニアとスラスターを全開にして突撃していく。


「一閃、ですのっ!!!」


 薄氷のような青白く光る魔力の膜が巨剣ラハール全体を覆っており、強化された剣による一撃は氷が砕けるような甲高い音を立てて、その装甲に亀裂を走らせる。


 見ればイズバザデン・アポクリフォートの装甲についた傷には、まるで凍傷のように白くボロボロになっていた。


『敵戦力の評価を再修正……。システムへ再評価を送信、これ以上の戦闘リソースは主任務達成に支障を伝達します』


 絶えず発せられる音声を無視するように、エストレア達は攻撃を絶やさない。

 ネロの魔剣にも『フィンブルの冬』を付与し、雷撃と冷気が伴う一撃がその装甲を砕き、吹き飛んだ破片が宙を舞う。

 


『システムより伝達。全リソースを戦闘機動の使用を許可します。直ちに敵性存在を一掃してください』



『システムへ返答。承認、直ちに第三、第四兵装機能を解凍します。プログラム70%を戦闘機動に割り当て、殲滅戦闘に移行』




『解凍完了。第三、第四兵装に送電開始。現行において効果的な兵装を選択中……該当武装がヒット。展開します』




「……!気をつけろ、来るぞ!」


 エストレアは皆に注意を呼びかける。何がきても対処できるように。


──だが、それと同時に。


 エストレアの持つ魔眼。【全と一の瞳】はある一つの可能性を見てしまった(・・・・・・)


 今のエストレアがその瞳に宿す力。月女神マニニ・マヒナより解凍ダウンロードされた機能は───


 その場所における『確定された』過去、未来のヴィジョンを再生する【念視】。


「ネロ!」


 エストレアは叫ぶ。そこから逃げろと。もしくは魔剣の稲妻を放ち、防ぐようにと。


───だがそういう時、大概はままならず届かない。

  



『【亜光速概念分解メーザー】、照射』




 ピュン!と拍子抜けするような乾いた音。だがその瞬間、その音が通過した場所が白く焼け、通った場所の空間そのものが概念ごと引き裂かれる。


 亜光速のメーザー光線は、ただの光ではない。存在を「分解」する理を帯び、触れたものを無に還す。


「え?」


 放たれた光はたまたま、もしくは意図的だったのかもしれない。だが、事実としてその光はネロの身体を容易く貫き、その体に風穴が開く。



「ネロオオオオオオオッッッッ!!!!!」


 ネロは口元から一筋の血を垂らし、力なく崩れる。そのままネロの身体は力なくマグマが滾る海の底へと落ちていった。


 後には呆然とするジェシカとダークエルフの双子、手を伸ばそうにも届かないエストレアの叫びが響き渡った、







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これからも、この物語を見守ってくださると嬉しいです!


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