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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
192/200

Chapter Fatal Battle 3

お待たせしました(=^x^=)




バキィィィィィンンンンンンン!!!


 甲高い音を立てて、怪物の巨体を構成する装甲が破断される。


 ブチブチ、と音を立てて切断面から覗く無数のケーブル線と人工繊維からなる筋肉。明らかにこの世界に似つかわしくない構造をした存在にエストレアは驚愕をあらわにした。



(まさか………こいつは人工的に造られた……!?)


 エストレアの背筋に冷たいものが走る。


 もし、自身が想像したことが正しければ、これは魔獣ではない――であればきっとそれは“作られた装置”。


 バチバチと火花を散らし、無数のコードの束を露出させても、目の前の敵には動揺や焦りといった生物的感情が見られない。


 この世界におけるゴーレム……ジェシカが駆る巨神兵も似たような物だが、異質さではこちらが上だろう。


「なんですの……あれは……」


巨神兵のコクピットから見ていたジェシカも、相対していた敵の歪さに気づいたらしい。自分と同じように何か感じるものがあったに違いない。


「ボサってするな!来るぞ!」


「「!!!」」


 ネロの言葉にハッと我に帰ると、急いで距離を取り皆と合流する。改めて見れば、その巨体は圧巻と言わざるを得ない。





『ジ、ジジ……第4腕部ユニット損傷。自己修復パッチを適用、実行……実行不可。最重要排除対象による攻撃は適用されません』



『システムより通達:最優先任務の達成に支障を確認。脅威レベルに関わらず、全ての知性生命体を異空間ごと抹殺してください』

 


『システムへ返答………これより戦闘態勢に移行。迎撃プログラムから殲滅プログラムへ移行します』

 


『殲滅プログラム、第一、第二拘束限定解除、拘束プログラムにより凍結している兵装へエネルギー供給』



『システムへ丙型装甲展開要請………受理を確認』



 得体の知れない機械音声が響き渡る。装甲の隙間から蒸気が噴出され、ガシャガシャと何かが展開される豪快な音が響く。


やがて蒸気が晴れ、目の前の存在が再び顕になる。


「なっ………!」



『殲滅プログラムにより、攻撃態勢』



『地脈焼却式対界殲滅躯体:イズバザデン・アポクリフォート、ウェポンコール』



 そこには蜘蛛のように這いあがろうとする巨人の姿はなく。


「なんだよ……あれは……」


 ネロが言葉を失う。エストレア含めた、皆もまたその光景に発する言葉を出せずにいた。


 灼熱の溶岩が流れる、大魔法使いが死力を尽くしてカルデラの地中に展開した『夢幻回廊』。その奥地で対峙した怪物は遂にその真名を晒した。


 その名は【地脈焼却式対界殲滅躯体:イズバザデン・アポクリフォート】。


 地上に這い出るため、よじ登るために使っていた八つの腕は一本と二本の腕を除いた五つの砲身となって聳え立つ。


 まさにそれは地を穿つ要塞にして戦艦というべきもの。この世界にありえざる異物。

 これ以上寄せつけまいという意思を感じさせる、無数の機関砲と思しき兵器群。


 未知なるエネルギーで満たされたコアから供給された砲身が開き、レールの間に紫電が迸る。


 その光景にエストレア達は怪物の逆鱗に触れたのだ、と確信を持つにはあまりにも衝撃的であった。





『チャージ開始』





『知的生命体停滞機能:限定解除 ───【承認】』



『追尾式魔力根絶機能:限定解除 ───【承認】』



『対異空間蒸発機構:限定解除 ───【承認】』



『対惑星外殻粉砕機能:限定解除 ───【承認】』



『現行レベルにおける制限の限定解除を全て承認。各限定解除を全ての武装に転送。異空間を敵対勢力もろとも砲撃に移行、各砲門に【対地殻破砕徹甲弾ガイア・フラメント・ピアース】装填。発射シーケンスに移行します』






◆◇◆◇






 全員の顔から色が抜け落ちていく。告げられていく宣言。


 馬鹿げている。そう心の中で愚痴るしかない。


 なぜなら、次々と列挙される絶望的な羅列が適用されるたびに眼前の敵から放たれる魔力が桁違いに膨れ上がっていくのだから。


 一桁や二桁というレベルではなく、両の指を使ってようやくというレベルの上昇感。


 当然そんなものをぶっ放されれば、『いくらエストレアであっても、ひとたまりもない』。


 そしてエストレア達が避けることが出来ても、敵はこの空間に対して特攻攻撃を持っていることを宣告した。


 灼熱の空気がエストレアの頬を焼く。カルデラの奥深く、マグマ溜まりのある場所に置かれた異空間。地上を目指し、進撃を開始した、今まで見たことがない終末の敵。


 ズンッッッッ!!!


『エネルギー充填第一、第二砲身100%。第三、第四砲身残り79%』


 やがて敵はその巨体を低く構え始める。発射時の反動を抑えるためだろうか、煮えたぎるマグマそのものの大地を踏み固めるかのように身を屈め、エストレアを中心にして砲身がゆっくりとその角度を揃えていく。


 ただただ機械的に動くその砲身に赤熱化したプラズマが迸る。


「あ…………」


 エストレアの口から、感情が、色が消える。


 世界がモノクロに映し出され、まるで時が止まったかのような錯覚さえ覚える。


 もう間に合わない。魔眼の力で【支配】も【転移】も【腐敗】も間に合わない。出力も規模も桁違いすぎて、今更どう足掻いても、“出来ることは何もない”。



『チャージ完了』



 無慈悲に告げられる、告死の音声。何処か遠く、彼方で響く晩鐘が耳を貫く。


 次の瞬間、エストレアの視界は完全に白く染まった。


 いや、白ではなく――無。


 音も、熱も、色も、すべてが剥ぎ取られたような空白。



 ただ、遠くで響く機械の唸りと、自身の心臓が最後の鼓動を刻む音だけが、耳の奥に残る。


「エレンっ、逃げるぞ!」


「お姉様!?」


「「姫様っ!!!」」



 叫んでいる。けれど──ネロの声も、ジェシカの声も、イルナとイザルナの声も、顔も、表情も何もかもが白黒に塗りつぶされて判別できない。


 動かなければ、と意思はあるのに身体がすくんで動けない。


 やがて砲身の先端で渦巻く紫電と赤熱プラズマが、一瞬だけ収束する。


 そして――






































 せかいはまっしろになりました。





 



◆◇



 






ぼくはすがたをかえました。



かざんのうろのなかで僕のたましいはまざりあってとけていきます。


それはぼくがつみからにげたあかしなのです。



どうか、どうかゆるしてください。


にげたことをゆるしてください、ただそのひとことだけでこのくるしみからーーーいいえ、いいえ。



──私たちは許される資格はありません。



  

ぼくたちはえいえんに、えいえんに、ゆるされることなくつみをせおいながらせかいをさまよいます。


さようなら、どうかいつまでもわたしたちをわすれずに。



──どうか怒りで、正義で罰を忘れることなきように



 私たちは私たちの中で希望の光を積みましょう。どうか、その時が来た時は。


 その光が貴女の闇を照らせると信じています。














【故に。星よ、その眠りから覚めること能わず】




 ゴーーーン……と重厚な鐘の音が聞こえた気がした。



『目覚めなさい。太陽では救いにはならない。貴女が手にした二つ目の光、それこそが────ザ、ザザーーー……ーー!』








◆◇











 次の瞬間、エストレアの目に光が灯る。


 モノクロだった世界に色が戻り、身体も自由に動く。


(なんだったんだ、今のは……)


 先程までの絶望感と喪失感からの解放。それに安堵するも、あの時の感覚は走馬灯に近いものだったのかもしれないと思っていた。


「エレンッッッッ!!!」


「捕まれっ!!!ジェシカ、後方に下がれ!」


 ネロの焦った声色を聞き、エストレアは黄金の戦車を走らせる。


「「姫様、僕たち(私たち)はどうすれば?」」


「お前達はまだいい。むしろ、そのままでいてほしい」


 胸元をギュッと抑える。灼赫の熱たるアグルではおそらく有効打にはならない。


 ならば、どうするか。敵は既に砲撃態勢に入っていて、もはや下手に動く余裕はない。


(力を貸してくれ…………【智慧】司るマニニ・マヒナ……!)


 太陽にして、熱を司るアグルの神に謝りつつ。カイロサンドリア平原近くの地下遺跡最深部にて邂逅した二柱めの原初の神性、その力を引き出す。


 


「【告げる】!」


 エストレアの身体が神秘の光に包まれていく。


 夢幻回廊に登るはずのない月がまるで門のようにエストレアの背後に現れる。



 それと同時に五つの砲身から無に帰す光が放たれたのだった。




 其は狂気と冷徹なる月の調べ。月の祈りと湖光の瞬きを持って、いざ顕れん調停者。





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これからも、この物語を見守ってくださると嬉しいです!


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― 新着の感想 ―
ファイナルバトルを拝読いたしました! とても読みやすく、勢いのある文体で戦闘の緊迫感が伝わって来ました!! また時間のある時に前半から読んでみたいと思える作品でした(*^^*)
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