Chapter Fatal battel 2
お待たせしました!(゜∀゜)
エストレア達が、異界内部で激闘が始まるとほぼ同時刻。
「陛下、ベル・クラウディア帝国とファンテリム帝国より打診が……」
シェートリンド王国の王の執務室で、アグラエィン王は宰相であるアーノルドから羊皮紙の束を受け取る。
「これは……!」
「はい。かなり高度な判断が必要です」
アグラエィンが受け取った羊皮紙。それは何もシェートリンド王国だけに限った話ではないものだった。
その内容とは、ベル・クラウディア帝国とファンテリム帝国、二つの帝国の領内における大規模災害。その災害時の避難民の受け入れの要望であったのだから。
「噴火、か」
「はい。既に噴火したという報告も上がっております。……現地での調査団の報告が正しければ、今回の噴火の規模が尋常ではありません。最悪の場合、死者は数万単位……避難民は数十万を超える見込みです」
「いかがいたしますか」とアーノルドは尋ねる。アーノルド自身、この話題を自分に降りかかってきたら頭を抱える自信がある。
それほどまでに難しい問題なのだ。村一つの人間が国境を超えて逃げてくるだけでも、手続きは膨大だというのに『噴火』という事態で起きた【国外への避難指示】。
アラン皇子による緊急事態宣言の名の下、帝国国民が国外の脱出を余儀なくされる状況になってしまってる。
「全ての受け入れは出来ぬ。我が国もそこまで懐が広いわけではない」
「だが、やれることはある。まずは国境付近に臨時キャンプを設営せよ。受け入れは『人道的支援』として限定し、表立って『難民』認定は避けよ。あくまで避難民として扱い、短期滞在を原則とする。食糧と医療は提供するが、永住権や市民権は一切認めない方針で各大臣と擦り合わせを行え」
「はっ!」
友にして腹心であるアーノルドが退室した後、アグラエィンはふぅ、と息をつく。
「戦争の次は天災か。まさしく、動乱の国よ」
彼の呟きは、空気に溶けるかのように誰に訊かれることもなく消えていった。
◆◇◆◇
「ジェシカ!」
エストレアの叫びが、灼熱の回廊に響く。
ジェシカが呼び出した漆黒の巨神兵がスラスターを全開に噴射し、溶岩の海を切り裂いて突進する。青白い炎がマグマを吹き飛ばし、周囲に散布されていた魔力を減衰させる粒子のフィールドさえ一時的に押し返すほどの圧力波が発生した。
『【システムより通達】
『敵性存在:検知』
『ライブラリ照合……完了』
『類似型番:GH896pa5632-4B』
『相違:構成物質』
『脅威レベル:更新中……10 排除対象の変更』
『接敵まで:1400m → 1300m → 1200m』
『迎撃プロトコル起動』
『排除優先度:最優先にて迎撃』
ログを終了します。プロトコルに従い、行動してください』
対する巨人は、八つの目を無機質に輝かせ、再び機械音を響かせる。
だがそんな状況も、今のジェシカを挫くには全然足りない。寧ろ闘志をより熱く燃やす燃料でしかない。
「行きますわよ、生まれ変わった相棒!第一階梯戦闘機動開始ですわ!」
《マスターコマンド承認。追加指示を、マイマスター》
「言わなくても分かりなさいな!高軌道近接戦闘用意っ!!!」
《──了解》
バーニアとスラスターを全力でふかしながら、ジェシカは巨神兵を駆る。
《マスターに通達。該当敵機体周辺に対魔力不活性フィールドを確認。回避を推奨します》
だが巨神兵もその性質上、目の前の怪物が展開した《対魔力拡散反射フィールド》の対象に含まれている。
それゆえに操縦者兼マスターであるジェシカに警告するが、当の本人はまるで問題ないと言わんばかりにドヤ顔を浮かべていた。
「安心しなさいな、ゴーレムということはいくらでも積めるんですのよ」
既に巨神兵は敵のフィールド内に突入している。魔力の拡散、不活性化による影響でバチバチと火花が飛んでいるが、それは表面のみにとどまっている。
「どうなってんだ、ありゃ!?」
「そうか、ゴーレムだからーーー」
魔剣の力を削がれ、神の力も十全に使えなくなくなって退避していたエストレア達は干渉されているはずの巨神兵が、平然と動いている光景に目を見張った。
そんな仲間たちの声が、コクピット越しに届く。
「ふふっ、心配いりませんわ」
ジェシカは操縦桿を握りながら、優雅に微笑む。
「この機体は、最初から『魔力が十全に機能しなくなる』ことを想定して設計してありますのよ!効きません、効きませんわぁぁぁぁぁ!!!」
オーッホッホッホ!と言わんばかりに笑う。実際に効いていないように見えるため、今だけはジェシカが頼もしく感じられた。
《敵機体との距離300m。交戦距離に突入します》
「待ってましたわ!第2階梯錬金武装『巨剣ラハール・アハト』抜刀!」
ディアスの背中から巨大な収納スロットが展開し、光り輝く巨剣がゆっくりと引き抜かれる。
剣身は琥珀のように鈍く光り、刃先から淡い青の魔力粒子が漏れ出るその姿はまるで神話の具現そのもの。
《『巨剣ラハール・アハト』出力最大。効果時間0300です》
「一気に決めるのですから問題ねぇのですわよ?」
ディアスがスラスターを最大噴射。溶岩の海を蹴散らし、300mの距離を一瞬で詰め、巨人の黒曜石ボディに巨剣を振り下ろす!
ズガァアアァアアァンンンンン!!!!
水飛沫のように飛び散るマグマが蹴散らされるほどの衝撃波が響き渡る。
その衝撃はこの灼熱の異界全域に響くほどのものであり、直接操縦桿を握るジェシカの手に直に届くほどであった。
──だが。
「なっ!?」
─────────────────────────
「それでは駄目。模造品の模造品では────傷は与えられないわ」
─────────────────────────
◆◇◆◇
巨神兵を模したゴーレムが抜き放った刃は、這いあがろうとする巨大な怪物に確かに攻撃した。
しかし、その攻撃は今際のところで阻まれ届いてすらいなかった。
「おい!エレン!全く効いてねえぞ!」
「まさか………概念防御か?」
概念防御。それは特定要素以外を弾く強力な護り。精霊や妖精のような、非実体の存在が持った加護にも似た魔法の一種である。
魔法という概念があるこの世界において、それは破格の性能を持った防御に他ならない。
ジェシカの瞳が一瞬だけ見開く。コクピット内で操縦桿を握る手が震える。効果時間残り2分58秒……なのに、剣は届いていない。
「嘘、ですわよね………?」
《逆説的演算完了。概念防御による著しい威力減衰によるものと推測されます》
「概念防御……!?」
初めて聞いた理不尽なそれを間近に見たことも、聞いたことも無い。自称天才と憚らないジェシカですら、この想定外の事態に硬直してしまう。
『敵機性能の再評価…………完了』
『システムより通達:該当機体では、当機の任務の阻害となりません。速やかな排除を』
「ジェシカ!逃げろ!!!」
「!?」
不気味な機械音声を響かせながら、攻撃したままの状態で止まっている巨神兵に対して怪物は動き出す。
岩壁を登るために使われていた8つの腕。八つもあるその怪物の手のひら一つ一つが巨神兵を包み込むには十分過ぎるほどの威容を誇っていた。
飛び回る蠅を撃ち落とすように叩きつけられれば、ジェシカは巨神兵諸共溶岩の海に真っ逆さまとなるだろう。
迫り来る壁が如き漆黒がジェシカに襲いかかる。巨大故にその動きそのものは緩慢だが、巨体だからこそ逃げ場がないと錯覚するほどの恐怖が込み上げてくる。
「あ………」
力なく溢れる言葉。もう回避は不可能だと知ってしまったジェシカが無意識に出した声であった。
巨神兵の機体全体がその手のひらの影にすっぽり覆われ、その距離は刻々と迫っていく。
視界が暗黒のような黒に包まれ、その手にある構造体からはまるで砲門のように光が集まっていく。
ジェシカは目尻に涙を浮かびそうになったが、次の瞬間─────
「やめろおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!」
鬼気迫る怒号と共にエストレアが超高速で戦車を駆けながら、天穿ガラティーンを振るって突撃する姿が目に焼きついた。
そしてエストレアが放ったその一撃は、概念防御を纏っていたはずの装甲をまるでバターを切るかのようにあっさりと刃が通り抜けていく。
火花を散らし、その断面からケーブル線が見え隠れする。
「お姉様っ!」
「ジェシカ!」
エストレアとジェシカの視線が交差する。それだけで、何をするべきかを汲み取ったジェシカは───
スラスターを一気に噴出させて、押し潰そうとしてきた巨体からなんとか脱出。
それと入れ替わるように、エストレアが戦車から飛び降りると天穿ガラティーンの両端の剣身が赤銅色に輝き、横へと長く伸びていく。
「刻むは五行七殺。北斗の凶星、破軍にして貪狼。災禍凶兆、刃に乗せ己が物とする」
「手に取るは弐刃の閃き也!!!」
これより行われるは、エストレアが魂に刻みついた技量の結晶。転生してもなお、その手に握りし技は忘れず。紅流にある『閃』の字を戴く奥義。
手にした両刃剣は中央の取手が二つに分たれ、二振りの双剣に変化する。
「【ニ翼連理・破閃・杀破狼円心】!!!」
───バキィィィィィンンンンンンン!!!!!!
その一閃は艶黒く輝く巨体の腕をバッサリと切り落としたのだった。
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