Chapter Fatal Battle 1
お待たせしました。˚✧₊⁎❝᷀ົཽ≀ˍ̮❝᷀ົཽ⁎⁺˳✧༚
『《半永久追尾空対空熱核放射熱線》発射』
「捕まっていろ!!!」
四方八方から襲いくる無数の軌跡をエストレアは戦車を自在に操りながら掻い潜っていく。
───だが。
「お姉様!追いかけてきますわ!?」
いくら掻い潜ろうと、灼赫の熱線は複雑な軌道を描きながらエストレアを貫かんと追い縋ってくる。
灼赫の軌跡は空を格子状に覆い、逃走経路そのものを焼き潰していく。旋回しても、上昇しても、どこをみてもまるで先回りされるように塞がれていた。
逃げることは不可能。ならば、とエストレアは戦車を急旋回し、虚空に手を伸ばす。
「───っ!!!来いっ、天穿、ガラティーンンンンンンンッッッ!!!!!」
黄金の稲妻を伴い、エストレアの手には持ち手の両端に刃がついた両刃剣が握られていた。しかし、急旋回し、空中で停車したことで熱線は容赦なく降り注いでくる。
「ハアアアーーーーっっっ!!!」
気合いと共に一閃。ガラティーンの刃が空を切り裂き、黄金の衝撃波が放射状に広がる。熱核の光線がその衝撃にぶつかり、凄まじい爆音と共に互いに相殺し合う。
「ちぃっ!」
だが。それでも撃ち漏らしがあったのか、爆煙の中、突き抜けてくるいくつかの熱線が襲ってくる。
「お前達、衝撃に備えろ!」
エストレアは手に持つガラティーンをまるで矢を番えるように構えると、剣身が金色の光を放ちながら急速に変形を開始した。両端の刃が折り畳まれ、中央部が弓の握り手に変わり、弦のような光の線が瞬時に張られる。
そして目一杯引き絞れば眼前に幾重にも重なる光の方陣が展開される。
「ハアッッッ!!!」
そして放つ。光弾が軌跡を描いて、熱線へと向かっていく。
──全弾撃墜。
間髪入れずに、這いあがろうとしている巨大な存在へ魔力をチャージして矢を放つ。
ドオオオオオオオンンンンンン!!!!
爆発。空間内を地震と見間違うほどの振動を発生させ、あたり一面が白煙に包まれる。
「やったか……?」
ネロがこれで倒せたかもしれない、と呟くが、だが誰も本心はあれで倒せるのならば、ここまで大事にならないと確信していた。
『アナウンス:損傷を確認、損傷率0.2%。活動に支障はありません。速やかに妨害を排除、任務遂行を続行してください』
白煙がゆっくりと晴れていく中、巨人の黒曜石の巨体が、微動だにせずそこに佇んでいる。八つの目が、再び赤く灯り始める。
「くそっ!やっぱそうなるよなぁ!!!」
機械音が淡々と響き、まるで埃を払う程度のダメージだったかのように、巨人は再び動き出す。
今度は、さっきの五倍増しに増えた無数の熱線が籠目状にエストレア達を包囲して襲いかかってくる。
「ッッッ!!!」
全方位から襲いくる熱線。直撃すれば、タダでは済まれないだろうと予測できる。だが、戦車の操縦に加えて、天穿ガラティーンを使っている今のエストレアではこの攻撃を捌くのは不可能。
「ダアアァ!!!」
どうするか、そう考えているとネロが戦車の荷台から飛び出し、その手に握る大剣から雷光を放つ。
バリバリバリ!!!と耳をつんざく轟音と共に、包囲していた熱線を全て掻き消していく。
「ネロ!」
「無茶すんじゃねぇ!」
『新たな敵性を感知』
『脅威度を検索…………検索中。
▼
▼
▼
境界記録照合。脅威レベル7。排除推奨』
『《システム》より第二武装展開要請。要請認可を確認。
現戦闘を迎撃戦闘と認識、最適解の武装を選択中……
該当武装がヒット……展開開始
《対魔力拡散反射フィールド》展開》』
◆◇◆◇
「お姉様!今すぐ、ここから離れてくださいまし!!!」
機械的な音声が聞こえたかと思うと、巨人の周りからあたり一面に薄いガラスのようなものが噴出されて漂い始める。
その正体が何か、と頭を巡らせる前に、荷台にいたジェシカが焦るように声を張り上げる。
「おそらくあれは魔力そのものを拡散、分散させる物質ですわ!!!魔力を使う者にとって天敵ですわよ!!!」
「っそだろおい……!」
ネロが顔をしかめ、雷を纏った大剣を握り直す。だがその雷光さえ、漂い始めた微細な粒子に触れた瞬間、チリチリと音を立てて急速に弱まっていく。
エストレアが駆る黄金の戦車も、その粒子が触れたところからバチバチと嫌な音を立てている。
「全速力で離脱する!お前達、捕まっていろ!」
黄金の戦車は炎を噴き上げて猛スピードで今いた領域を離脱する。だが、逃げたところでなんの解決にもなりはしない。
粒子フィールドは巨人の周囲を球状に広がり続け、徐々にだが確実に回廊全体を覆い始めていた。マグマの熱気さえも、粒子に触れるとわずかに冷め、蒸気の量が減っていく。拡散された謎の粒子は、空間そのものを「魔力の死地」に変えつつある。
「くそ……このままじゃ、魔力がまともに使えねぇままジリ貧だぞ!」
「どうにか発生そのものを抑えればいいんだが……」
当初はどうにかなるだろうとたかをくくっていたこの戦い。だが、いざ蓋を開けてみれば『星の娘』だの、『魔王の娘』だの、と言われた自分の驕りだったと現実を突きつけられた結果になった。
だが、嘆いていても始まらない。賽は投げられ、動き出した時の歯車は止められない。
「お姉様」
怪訝な顔をしていたエストレアを、ジェシカは意を決したような表情で話しかけてくる。
「一か八かですが、私の切り札、【撃滅せし黒曜の模造巨兵】。巨神兵を使いますわ」
「大丈夫ですわ、あの時と違って魔力切れなど起こしません。それに巨人との戦いには巨人だと昔から決まっておりますわ」
そう言ってジェシカは戦車の荷台から飛び降りてしまう。「待て!」と手を伸ばすが、すでにジェシカは溶岩と熱気が支配する空間へ飛び出していた。
「【告げる!】」
ジェシカは落下しながらも、懐から試験管のような容器を取り出し、その中を満たす液体を空中に散布する。
そして、全霊を込めて言葉を紡ぐ。思い描くは、漆黒の巨兵。龍を滅する神代の機体、その模造機。
空中に撒かれた液体、ジェシカの血液は幾何学的な文様を描きつつ、ジェシカを中心に光が集まっていく。
虚空に描かれた幾何学文様が一瞬で膨張し、赤黒い光の奔流がジェシカの周囲を包み込む。
ジェシカは思い出す。王都アントンでの事件。泥事件の黒幕、魔女キュリアが操る禁忌の獣ヒュドラに対して初めて起動させたあの時。
怒りのままに起動させ、魂を、血肉を、何もかも薪として焚べて戦った時を思い出していた。
あの時から、契約の真名をより深く刻み、血液の媒介を最適化し、改良を進め続けてきた。
「起動せよ、巨神兵ッ!!我が魔力、我が契約の真名においてその真姿を顕現せよ、【撃滅せし黒曜の模造巨兵 Mark Ⅲ】!!!!」
機体が顕現する。
漆黒の装甲は黒曜石のように深く輝き、表面を走る赤い脈動線がまるで生き物の血管のように脈打つ。
全高60メートルを超える巨体は、起動と同時に周囲の熱気を吸い込み、スラスターから噴き出す青白い炎が溶岩の海を一瞬で蒸発させる。
轟音がこの空間全体を震わせ、粒子フィールドさえも一時的に押し返すほどの圧力波が発生した。
コクピット内でジェシカは深く息を吐き、操縦桿を握り締める。
バイザー越しに見えた厄災の巨人の姿は、依然として圧倒的だった。だが、彼女の心は揺るがない。
そして。
稀代の天才、ジェシカは再び漆黒の機体を駆る。機体の操縦桿を握り締め、バイザー越しに敵を睨み付ける。
「さぁ、行きますわよ!」
操縦桿を押し込み、漆黒の巨兵はスラスターを吹かせて突撃していくのだった。
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