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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
189/201

chapter10-10 chapter end

お待たせしましたヽ(*´∀`)







「極醒魔法!【夢幻回廊】!!!」






 天と地を若草色の魔法陣がまるで塔のように展開される。その直後、空間が捩れるように渦を巻いて巨大なワームホールが出現した。



 脈動を続けるラグナ山の山頂に現在いまの視野を持つ大魔法使いマリウス・シオンは、自らの手に握る杖を媒体にこの世界に生きるならほんの一握りしか担い手がいないとされる大魔法を発動させた。


【極醒魔法】


 それは生まれながらに魔道の極致に辿り着いているか、世界の深淵に手を伸ばした者、或いは◾️◾️◾️の縁者のみが手にする【根源そのものに手を入れる魔法】。


「いやぁ、きっついね。久々にこの魔法を使うけど、魔力だいぶ持っていかれ……ゴフッ!!!」


 血反吐を吐く。同時に目と耳からも吹き出すように血が溢れ出る。


 このラグナ山の奥底に眠っていた怪物を長く抑え込んでいた事と、あと数ヶ月は稼げたはずの時間が予想外な出来事で無為と化し、怪物の覚醒を早めてしまった反動でマリウスの身体はボロボロであった。


「とはいえ………、目的は果たせたかな?」


 マリウスの目的。それは星の娘たるエストレアを強くする事、そして今にも夢幻ゆめまぼろしの回廊をこじ開けて現世に現れんとする怪物を、来たる時まで封じる事。


 常に共にあると誓いつつも、エストレア達と別れ帝国の皇子に預けたのも、この状況に備えての事だった。


 血に塗れた視界で、マリウスは静かに笑った。彼の眼は「今」しか捉えない。なのに――なぜか、エストレアだけが鮮やかに浮かび上がる。


 他の人間は色褪せた背景でしかないのに、紅の髪だけが、星の輝きだけが、焼き付いて離れない。


「ふふ………、我が主(・・・)も人が悪い。被造物でしかない僕の魂に刻まれるほどに、余程未練だったのだろうね」


 不意に漏れる言葉に、マリウスは咳払いして誤魔化す。後で面倒くさくなるが、本心ではないのだからどうとでもなるだろう。


 マリウスは血に濡れた唇を歪め、傷付いた体を振り絞って杖を高く掲げた。





───さあ、いくがいい。星の娘よ、世界の器よ。汝の選んだ道に祝福あれ




◆◇◆◇



 



「エストレア、存分に暴れてこい。口惜しいが、こっから先は俺の口撃は役に立たないからな」


 腕を組んで背後の壁にもたれかかるクローディンは自身の無力さを皮肉りながらその強い眼差しをエストレアに、そして彼女達の仲間に向けた。


「まかせろ、サクッと終わらせてやる」


「へっ、頼もしいこった」


 ギュッとグローブを身につけ、群青色のマントを翻したエストレアは今にも爆発しそうなラグナ山の山頂に出現した湾曲空間を見上げた。




「姫様」


「いつでもいけます」


 双子のダークエルフは、その澄んだ目でエストレアを見つめつつ自身らが主人と認めたエストレアの言葉を待つ。


「お姉様。私の巨神兵もいつでも呼び出せますわよ。どんな存在でも、ペシャンコにしてやりますわ」


 妹分であるジェシカも己の持つ力を誇らしげに掲げつつ、なおも心の何処かで迷うエストレアを背を押した。


 そして最後に。


「へっ、エレン。アンタと一緒にやるのはあん時以来だよな」


 帯電した魔剣を担いだ、男勝りなネロ。王都での戦いから接点がなかった彼女だが、だがここから先の戦いで再び縁を結ぶ。


 エストレアは目を瞑り、静かにその瞼を開く。


 瞳は紅く。血の飢えではなく、星の現し身の紅。高密な魔力が紫電となって大気を帯電させる。


 右手には己の血で作り上げた一振りの名もなき魔剣。

 

 彼女の赤い髪が激しく翻り、魔力の奔流がエストレアを包み込むと、黄金の鎧が星のような光を放ちながら、エストレアの体を纏う。


「ブルル……!」


 エストレアの力を察し、彼女の愛馬であるラムレイ───幻影魔馬ファントムホースが権能である金の戦車の引き馬となって、異次元より姿を現した。


「行こう」


 エストレアの言葉が、静かに、しかし確実に響く。誰もその言葉には応えない。ただ、その意味だけは伝わり、理解し、刻み込まれた。


 エストレアが駆る黄金の戦車は暗雲轟く空を飛び出す。その行く先は火を噴く灼熱の炉の最奥。


 大地の悉くを、地と岩の熱を持って溶かす終末の獣の一柱が潜み、這い上がる原初の坩堝。


「頼んだぜ。エストレア……」


 空高く飛んでいったエストレアを見届けたクローディンは、これから起こる戦いを憂うように呟いたのだった。


 その言葉が届くことはないとしても、何の力を持たない只人には祈ることしかできないのだから。




◆◇




「見えた!あれが……マリウスが開いた門……!」


 マリウスの姿はない。だが彼が発動させた大魔法は、まるでエストレアを導くようにその存在感を保っていた。


「飛び込むぞ!捕まっていろ!!!」


 空間に開いた異次元の門。エストレアは躊躇うことなく、黄金の戦車をラムレイに命じて突っ込ませる。


 黄金の戦車が異界の門を越えた瞬間、世界の輪郭が崩れ落ちた。

 

 上下は溶け、距離は意味を失い、前へ進んでいるはずの戦車は、同時に横へ、後ろへと引き延ばされていく感覚を覚える。


「……ッ!」


 視界が歪み、ラムレイの嘶きが何重にも反響して耳を打つ。


 空は空であることをやめ、大地は大地であることを忘れ、ただ――色と概念だけが流動する迷路となった、ような気がした。


「お姉様っ!」


 だが、次の瞬間視界は一気に切り替わり、滝のように溶岩が流れ落ち、固まり、黒く硬化した溶岩がマグマの流動に流されていく。


 蒸気は吸い込めば肺を焼くほどに熱く、時折溶岩が噴き出して地形を変えていく。


 それはまるで螺旋のような、灼熱の回廊としての光景がエストレア達の目に映った。


「あれは………!」


「おいおい……」


「冗談キツいですわ……!」


 そこで彼らが見たもの。


 冷えた固まった溶岩の壁に指を引っ掛け、よじ登ろうとする巨大な影。


 それは、ただの影ではなかった。


 黒曜石のように鈍く輝く巨体が、マグマの海からゆっくりと姿を現す。八本の腕が岩壁を抉り、引き裂きながら這い上がる。夜空を切り取ったような八つの目が、爛々と赤く光り、こちらを──いや、エストレアを確かに見据えていた。


 尖った耳、オオヘラジカを思わせる巨大な角。八つもある腕を使ってよじ登る様はまるで蜘蛛のよう。溶岩を滴らせながらも、確実に上へ、上へと進む。


 その巨体が一息で放つ熱波だけで、空気が煮え立ち、肺が焼ける。蒸気が渦を巻き、視界が赤く染まる。


『特異な空間を感知。ーーー照合中………』


 巨人の八つの目が、一瞬だけ無機質に瞬く。


 まるで機械のレンズが焦点を合わせるように。


『照合完了。魔法による特殊な空間の構築。脱出方法………当空間内に存在する特異点を排除。


アナライズします………


 照合対象確認:【星の娘(エストレア)


 脅威レベル:5…修正を開始、脅威レベルを10に変更

 殲滅優先度:5…修正を開始、優先度を10に変更


 :脅威度、および殲滅優先度のレベルの変動を確認、目標の障害を排除してください。

 

 ミッション再確認――《世界の破壊。地上の生態系と文明を閉ざす》


『…………行動、開始』 


 機械的な声が途切れた瞬間、巨人の八つの目が同時に焦点を絞った。


「来るぞ!!」


 ゴゴゴゴゴ……!


 回廊の空気が震え、マグマの海が逆流するように波打つ。八本の腕が一斉に動き――黒曜石の指先から、赤黒い溶岩の糸のような───収束された光の筋が放たれる。


 それはさながら触手のように蠢き、熱を帯びたまま螺旋を描いてエストレアたちに向かって伸長する。

 

『目標補足:回避想定、15パターンを演算、全パターン対応武装展開』


『《半永久追尾ペトリック・空対空(レーザー:)熱核放射熱線・ウルカヌス・カエレェテス》発射』


 無数のレーザーがエストレアが駆る黄金の戦車に殺到した。




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これからも、この物語を見守ってくださると嬉しいです!


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