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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
188/201

chapter10-9

お待たせしましたε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘




 鳴動するラグナ山の山頂、その一角で光り輝くポリゴンが周囲に高濃度の魔力を振り撒きながら、人の形を複数形成していく。


 それは先ほどマリウス・シオンによって地上へと叩き出されるかのように送り出されたエストレア達であった。


「ここは………地上か?」


「呆けてる場合じゃねえぞ!エレン、見ろ!」


 危機一髪の状況下から脱出できたことからの安堵を覚えていると、山頂から見える地表の様子を見ていたネロが青ざめた表情で促してくる。


 エストレアが見たもの。そこはまさしく地獄そのものであった。



 

ゴゴゴゴゴ………!!!!


ズズズズズズ………!!!!


ドオオオォォォォォ…………!!!


 ぐるりと二つの帝国を囲む巨大なカルデラ。その内部の大地は引き裂かれ、建物が飲み込まれていく。


 或いは赤く煮えた熱水が噴き上がり、或いは必死に耕した田畑がまるで粘土のようにドロドロに液状化していた。


「姫様……!大地の底から……」


「姫様……!何か登ってきてる!」


 眼下の惨状を見ていたエストレアの背後から、ダークエルフの双子のイルナとイザルナが強張りながらも地面の下を指差す。


「……!とにかく、クローディンのもとに行くぞ。何があったのか伝えないと」


 エストレアは魔力を込めて、アグルの力を発現させる。全身を包む黄金の鎧。そして、黄金に燃える炎の戦車を顕現させると皆を乗せて大空へ躍り出たのだった。



◆◇◆◇





盟歴570年、象蟹宮カールドの月。この年、ヴァルーの世界は近年稀に見ぬ事態に見舞われていた。




 ベル・クラウディア帝国とファンテリム帝国、両国の首脳陣は嵐の渦中と言わんばかりの相次ぐ災害の真っ只中であった。



──『郊外農村にて大規模地震!被害測定不可!!!』


──『主要街道に断層発生!!!』


──『水脈の枯渇、及び地下空洞の拡大を確認!』


──『帝都南区、地盤沈下進行中!避難が追いついていません!』


 報告は悲鳴のように連なり、会議室の空気を切り裂いていく。ベル・クラウディア帝国の首都である皇都クラウディウスの宮殿は、まさに嵐そのものであった。


「老師殿、これら全てはカルデラ内部のーーー火山活動の一環だと!?」


 怒声とも懇願ともつかぬ声が、会議室に響いた。


 問いかけられた老魔導士は、即座には答えない。地図に落とされた無数の印を見つめ、深い皺の刻まれた眉をさらに歪める。


「……通常であれば、そう断じたいところですな」


「通常……?では、待て。これは、ただの地震ではないのではないか?」


 ベル・クラウディア帝国宰相が、押し殺した声で呟いた。


「ファンテリム側の被害状況は?」


「同様です。いや……むしろ、向こうの方が深刻かと」


 一人の青年が差し出した地図には、赤い印が無数に刻まれていた。


 もはや国境線など、意味を成さず。大地は等しく、両国を飲み込もうとしている。


「落ち着きなさい」


 そんな中で力強く凛とした声が会議室を満たす。


「アリス殿下………」


「宰相殿、兄上様達はファンテリム帝国におりますゆえ、現状の最高権力者は私です。我が名において、帝都並びに国民の皆様方に避難勧告を」


「もはや、一刻の猶予はありません。各国の大使館に難民の受け入れを通達してください。間に合わないかもしれませんが、手をこまねいているよりはマシです」


「殿下!人口が何人いると思っているのですか!?」


 宰相の叫びが会議室を震わせた瞬間だった。


 ゴゴゴゴゴ…………!!!!!


 建物全体が横に揺れた。机の上の地図が滑り落ち、インク壺が割れる。誰もが床に這いつくばった。


「時間がありません!全責任は私が負います!宰相、大臣!避難勧告を出しなさい!!!錬血騎士団をも使って構いません!」


 継承権のない皇女?それがなんだというのか。国家存続の危機に、肩書きなぞ無意味だ。


「――動きなさい!!」


 アリスの叱咤が、揺れる会議室を貫いた。


 誰もが理解した。この場において、もはや取れる手段など限られてる。民主主義だろうとなんだろうと、今の状況下では、速度が命だからだ。


「伝令を走らせろ!帝都全域に非常警報を!南区は即時退避、西区は準備に入れ!郊外、開拓村、農村全ての住民に避難勧告を出せ!!!無理矢理にでも退避させよ!」


「魔導通信を最大出力で開放!混線など気にするな、繋がる限り叫べ!」


 慌ただしく動くこの場で、アリスは拳をギュッと握りしめる。


(クローディンお兄様……!エストレア……!どうか……!)


───私に力を貸してください。




◆◇



 同時刻、ファンテリム帝国もベル・クラウディア帝国と同じく相次ぐ災害に頭を悩ませていた。


 【テトラルキア戦争】の戦後ということもあり、ベル・クラウディア帝国の第一皇子であるアラン含めた有力者が滞在していたこともあり、事実上この国が最前線と言っても良かった。


「くそっ!次から次へと災害が起きやがる!」


 ドンッ、と苛立ち紛れにテーブルに拳を叩きつけるのはクローディンだ。


 会議中に現れた大魔法使いマリウス・シオンがエストレアに大敵を仄めかした時から災害が立て続けに発生し出した。


 これにより、『魔王の娘』という存在が如何に特異的なものであるかということをクローディンはイヤというほどにわからされた。クローディンは歯を食いしばり、荒く息を吐いていると───


「クローディン殿下!謎の飛行物体がこちらに高速で接近中!!!」


「はぁ?」


 そんな状況下で、一人の兵士が大慌てで報告のために駆け込んでくる。確認のために窓に駆け寄り、空を見上げてみれば───確かに『黄金に燃える炎の戦車』がこちら側に向かっているのが見えた。


「警戒しなくていい。とりあえず、降りられる場所を確保する事と降りられるように誘導しとけ。後は俺たちがやっておく」


「はっ!」


 何があったのか、何を目撃したのか。事細かく説明してもらう、とクローディンは天を翔ける戦車を見ながら部屋を後にする。


 当然、この国に滞留している兄姉も合流するだろう。大魔法使いが、皆の前で名指しで指名したのだから。


「ったく、退屈しねえぜ」


 その表情は、安堵とも苦悩とも取れるなんとも言えないものであったが、事態の進展に深く関わるのだと心の中で引き締めるのだった。



───


──






「エストレア!!!」


 エストレアはファンテリム帝国の帝都近郊にある砦の一区画に降り立った。


 降り立った時には、駆けつけてきたのだろうクローディンやアランといった名だたる人たちが集まってきていた。


 「無事か?」とクローディンが尋ねる。


「あぁ、全員なんとか、な」


 エストレアの返答は簡潔だった。安否確認とこの場にいるもの達への共有以上の言葉を交わす余裕など、最初からない。


「状況は?」


「最悪、だな」


 ネロのその一言で、場の空気が凍りついた。


「もう“噴火寸前”なんて段階じゃねぇ。このままだと、カルデラ全域が――ー跡形もなく吹き飛ぶ」


「……マジかよ」


 ゴ……ゴゴ……


 微かな低音が、足裏から伝わってくる。


「……クローディン。これは、ただの火山活動じゃない」


「まあ、そうなるだろうな」


 即答だった。クローディンは苦々しく笑う。それはこの場にいる者たちの総意と言っていい。エストレアは、火山内部で見た光景を思い出していた。


 あの時、地の奥底でみたもの。そして、謎の勢力と衝突した事。マグマでも、岩盤でもない――何かが、目覚めつつあった感触。


 エストレアはありのまま全てを伝えた。普通ならば荒唐無稽と一蹴されていただろう。しかし、この場にいる者たちは誰一人として笑わなかった。


 それほどまでに、世界が――現実が、彼女の言葉を裏打ちしていたからだ。


「ご苦労だった」


 そんな時、言葉を発したのはアランだった。その顔は何を考えているのかはまるで掴めない。だが、確固たる意思だけはひしひしと伝わってくる。


 その一言は、労いであると同時に――決断の合図だった。


 アランはゆっくりと視線を巡らせ、この場に集った全員を見据える。


「状況は理解した。間に合わないかもしれないがありとあらゆる手段を使って構わん!未曾有の事態に対し、避難勧告を出せ!」


 為政者、カリスマを持つ男の号令。その言葉を持って、兵士たち、文官たちが慌ただしく動こうとしたその時だった。


──だが、水を差すようにエストレアの肩口からヒラヒラと一羽の白い蝶が羽ばたき、やがて人の形を取る。


「集まったようだね」


それは、あり得ないほど静かな声音を発しながら、淡い光を放ち形を変えていく。見覚えのある――いや、忘れられるはずのない大魔法使い。


 だが、その顔にはいつものような軽薄な表情はない。


「申し訳ないけど、時間がない。あいにく、僕の体はボロボロで死にかけでね。僕が必死こいてかけた魔法は悉く壊されてしまった。なので、簡潔に伝えようと思う」


ゴゴゴゴゴ…………!!!!


「ぐっっっ!」


 大きく大地が揺れる。心なしか、地面も熱を持っているようにも感じられる。


「僕はこれから、僕の持ち得る最大の魔法──【極醒魔法】を発動する。エストレア、そして君が選んだ仲間とともに君達はこの戦いに臨まねばならない。


逃げることはできない。世界の行く末をかけた戦い───即ち決戦へと君は向かわねばならない」


「勿論、クローディンやアラン君もやるべきことはたくさんある。各々が果たすべき使命に殉じる時だ」


 そう言ってマリウスは魔力の残滓であるポリゴンになって姿を消した。


「勝手に言うだけ言って消えやがったな」


 クローディンが吐き捨てるように言葉を漏らす。だが、裏を返せばそれだけ切羽詰まっていると言っていいだろう。


(私に………出来るだろうか?)


 エストレアは一縷の不安を胸に抱きつつも、暗雲に包まれた空を見上げる。ピシャァ!!!と轟く雷鳴はまるで、厄災を告げる鐘の音のようだった。




















































「さて、やろうか」


「発露せよ、黎錫サンシオン」


「世界を繋ぎ止めし、宇宙そらの柱。時と空間、狭間に刻みし、理を此処に。天に真名はなく、地に真名はなく、此処にあるは星の骸が見る胡蝶の夢の兆し」


「現世と常世に道を拓くがいい!!!」


「極醒魔法!【夢幻回廊メアトゥス・エテルヌス・ソムニオルム】!!!」





 少しでも面白い、続きが気になると思った方は感想、評価、ブクマ、いいねをよろしくお願いします。

これからも、この物語を見守ってくださると嬉しいです!


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