chapter10-7
お待たせしました( ^∀^)今回はかなり情報を詰め詰めしております( ・∇・)
「はぁ、はぁ、なんとかなったか?」
ラグナ山へ調査に向かっていたエストレア達。そこで噴火の現場に鉢合わせしてしまった。
マリウスの使い魔と思われる存在の標により、こうして洞窟のような山の内部に避難することが出来たのだが………。
「埋まってしまったな……」
避難することが出来たものの、その後立て続けに起きた轟音と噴石によって入口は土砂に埋まってしまい、引き返すことが出来なくなってしまったのだ。
「進むしかないか」
とはいえエストレア自身は特に焦っていない。実際、反政府勢力の一角だったズガールを追い詰めた際に地下深くまで落下した経験がある。
空気の循環だけが懸念点だが、頬に流れる風の感触からこのどこかに通じているということは判明していた。
先は進もうと足を踏み出した、その次の瞬間───
ガウッッッ!!!!
「お姉様、危ない!」
「……ふん」
暗闇の中、岩陰から飛び出してきた魔獣が背後から飛びかかってきたのだ。
だが、エストレアは瞬時に黒い剣を手元に生み出すと振り向き様に一閃。
ギャンッッッ!!!???
「わぁお……」
だが、迷うことなく寸分違わず振るわれた斬撃は、まるで豆腐を切るかのように一切の抵抗なく切り伏せる。
「進もう」
エストレア達は深淵へと足を踏み入れる。そこで何があるのか、何を目にするのか。それはまだ明かすべきではない。
星の娘であるエストレア。神話の巨神の模造品たるゴーレムを操る錬金術師、怪力誇る双子のダークエルフ。そして、魔剣所持者。
彼女らは闇の底へと消えて行く。それと同時にあれほど荒れていた噴火と地鳴りは息を潜めるように沈静化していたのだった。
《ピーーーー。生体反応を確認》
《照合開始ーーー》
《◾️◾️◼︎◾️◾️の生命体を認証》
…………ログ履歴、保存
……….
……
《保存完了》
星骸機構:原種原型を認識、コマンド認証……
システム《◾️◼︎◾️◾️◼︎◾️◾️◾️》よりデータインストール開始………
「原罪の一、我らが注ぐ贖い。しかして楔は固く、回廊は定まらず。星よ、星の娘よ、汝の胸の熱を信じ進め」
◆◇◆◇
───数時間前、ベル・クラウディア帝国某所
「噴火、ですか?」
「ふー、ふー。殿下の前で取り乱したこと、謝罪いたします」
エストレア達が噴火に巻き込まれる数時間前、狂乱していた老学者のところにやってきたアリス。
自分が戦地から離され、そして戦争が終わった。そこから立て続けに起きた災害。勿論、居城であるイスリウム・チェスターでその報告は耳に入れていた。
嫌な胸騒ぎに突き動かされたアリスは、ベル・クラウディア帝国で地質を含めた環境調査を生業とする研究所に足を踏み入れていた。
「そうです。噴火です。無論、我が国とファンテリム帝国ではラグナ山の噴火は特段珍しくもない。それは事実です」
「ですが、各所で地盤沈下、異臭ガス流出、動物の失踪、植物の枯死。井戸水も沸騰しているという有様等、聞き及んでいるとは思います。無論、過去にそうした事例がなかったわけではありません」
「噴火の兆候も過去の事例に倣い、ほぼ確実に噴火するという結論が出ております。ですがーーーー私共が懸念しているのは噴火の規模、そしてその形式です」
老学者は指示棒を使って、ボードに貼られた資料を差しながら、アリスに力説する。
「噴火するとおっしゃいましたね。では、規模はどれほどになるのでしょうか?慣例ですと、灰が降りそうな地域に避難勧告を出すぐらいでしょうか?」
「………。殿下、落ち着いて聞いてください。これから私どもが言うことは伊達や酔狂ではありません。いいですね?」
コクッとアリスは頷く。目の前の彼の発言一句一句聞き逃すまいと耳を傾ける。
「噴火するのは、ラグナ山山頂部第二火口。ですが、それは狼煙です。最終的に噴火するのは─────」
一瞬言葉が詰まる。だが、次の言葉が出るのに、まるで何時間も経過したかのような感覚が老学者の精神に響いた。
「【ロームルリア・クィルス大山嶺カルデラ】。つまり、我が国とファンテリム帝国を囲む大カルデラによる破局噴火です」
「破局、噴火……」
聞き覚えのない単語を反芻するが、どれほどの規模なのかまるで想像がつかないのだろう。
そこからは長くなるからと、噴火した際の灰による気候変化や農耕へのダメージを語り、今回の破局噴火のケースに当てはまると、と切り出す。
「国家は消し飛びます。跡形もなく。地図、いえ地上から消えてしまいます。故に、アラン殿下らのお耳に奏上するべきとおりましたが………」
「分かりました。これまでの話を聞かせて貰いました。私も皇族の一員です。どこまで力が及べるかは分かりませんが、微力を尽くしましょう」
ありがたい、と老学者はアリスに最敬礼を持って感謝の意を込めた。
この時の行動が、彼らの───否、この国の人々の運命を決定づける一つとなった。
『知るということは、何よりも武器なのだから』
◆◇◆◇
「暑くなってきましたわ………」
「空気が少ないからだな。下手に動くなよ、酸欠で死にかけるぞ」
入り口が塞がり、洞窟の中を進まざるを得なくなったエストレア達は出口を求めて道ゆく道を進んでいた。
それは意図せず、まるで導くかのように下層へと足を運ばせていた。
「エレン……、あれを見ろ」
「溶岩の滝か……」
真っ赤に焼けた大地の血液を見ながら、溶岩が冷え固まった回廊をエストレア達は注意深く進んでいく。
溶岩を間近に見るのは初めての経験であり、大自然の息吹を感じ取れる。
自然の力を目の当たりにしていると、視界の隅にまたもや白い蝶が飛んでいる。
それはここにくる前に見たマリウスの使い魔。此方が認識したことに気づいたのだろう、白い蝶はひらひらと舞うように飛行し、更に奥へと消えていく。
「ネロ、今の見えたか?」
「んぁ?何の話だ?」
「お姉様、何か気になることでもありましたの?」
エストレアは先ほど見えたものを皆に確認を取ろうとしたが、誰もわからないと答える。
「わからない。けど、ここは、良くない。よくないものがいる、気がする」
だが、ダークエルフの双子で、そのうちの一人であるイルナが今、自分たちがいる場所の所感を伝えてくる。
「チビの言う通りだ。魔剣が震えてる。きっとこの先に何かあるぞ」
イルナの言葉を賛同するようにネロも己が感じたものを伝えてきた。
「行こう。多分ーーー」
その先にこれまでの違和感が、その根源がある気がする。エストレアは言葉にすることなく、心中にその言葉を留めた。
───────
────
──
やがてエストレア達は開けた場所に足を踏み入れた。
「かなり広いな」
ネロの言う通り、辿り着いた先はこれまでと打って変わって、まるで闘技場のような大空間だった。
「って言っても、周りは溶岩か。見晴らしはいいが、一歩間違えればあの世行きだな」
エストレア達は、この場所がどう言うものかと辺りを見渡し始める。
「おーい、エレン。そっちはなんかあったか?」
だが。
当のエストレアは全く別のものに意識が向いていた。
(また……マリウスの蝶?)
白い蝶はエストレアの視線の先、あるものの前で『これだ』と強調するように飛んでいた。
───それは、槍だった。
身の丈以上の、巨人が手に持つような巨大な槍。
エストレアの知識、前世の歴史で覚えた高千穂峰の天逆鉾を連想する武器としての役割を持たないだろう、まるでそこにいる何かを繋ぎ止める要石のように燃え盛る大地が囲む空間に鎮座していた。
「なんだぁ、こりゃ……」
ようやく、他の皆もエストレアが見ていたものの存在を視界に収め、ネロがその総意を口にした。
(なんだろう……何処かで見たような……)
エストレアはこの巨大な槍に何処か既知を覚えていた。触れてはいけない。けど、触れなければ進展しない。エストレアの直感が、無意識に手を伸ばす程に何かの衝動に駆られていた。
その指が、それに触れた瞬間。
◆
───ザ、ザザー………
『逃げるつもり!?あんな事をしておいて!』
『うるさい!もう、終わりだ……!◾️◾️れないんだ!もう、こんなところには居たくない!』
──ザ、ザザ、ザ─────
──ザ、ザザ…………───
◆
「ぐぅぅぅ……!」
「お、おい!大丈夫か!?」
「お姉様!?」
エストレアの脳裏に、その目に、身に覚えのないモノクロの映像が画面の砂嵐のように再生される。
同時に、何処からか鐘の音が聞こえる。聞こえた気がした。鐘の音が聞こえたと同時に脳裏に映された、不快な景色は消え、巨大な大空洞が映される。
エストレアが体調が回復次第、ネロが改めて調査をしようとした時、それは姿を現した。
『ほう……?よくもまぁ、ここまで辿り着けたものだな』
「誰だ!?」
何処からか、声が響く。ネロが警戒し、ジェシカやダークエルフの双子もピリピリした警戒態勢を取った。
「っ!上、上ですわ!!!」
ジェシカが声を張り上げ、不審な声の主を見つけ出す。
赤い外套で全身を包み、その全貌は分からない。エストレアが触れたモニュメントたる槍の石突の上に立つ、謎の人物。
その傍には禍々しさを感じる大剣をもった青年も控えるように立っている。
「お前達、なにが、あった……?」
そんな中で、立ち上がったエストレアが状況を知るべくネロに問いかけた。
「敵、だと思う奴が来やがった」
「敵?」
しかし、エストレアの次の言葉に誰もが理解を──拒んだ。
「何を言っているんだ?誰も、居ないだろう?」
《汝は我よりも我に近かった。しかし、我は汝を知らなかった》
──アウグスティヌス 『告白』
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