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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
185/201

chapter10-6

お待たせしました(*^o^*)




ダァン!!!


「ぬぅあああぁぁあ!!!!」


「せ、先生、落ち着いてください!」


「これが!落ち着いて!いられるかぁ!!!」


 エストレア達がラグナ山に向かったのとほぼ同時刻。ベル・クラウディア帝国での調査とファンテリム帝国での大規模災害の報告を聞き、その統合したデータを解析していた地質調査チームの老学者は荒れに荒れていた。


「なんど面会を申請しても却下!なんとしても奏上しなければならんと言うのに!!!」


「はぁ。でも、アラン皇子殿下は多忙であらせられます。それに先生はアポイントとってないじゃないですか。通るものも通りませんよ?」


「ばっかもん!それくらい知っておるわ!だが!物事にはそういうことを蹴っ飛ばしてでも通さねばならん事態はある!まさに、今!わしが危惧していることが殿下らの耳に入れねばならんのだ!!!!」


「でも、すべての現象は局所的ですよね?活火山に国があるのだからそう言う現象が重なっただけで、大袈裟なのでは?」



 助手を務める青年が諭すように言うと、「フー、フー」と息を荒くして、助手の青年に見えるように解析したデータを貼り出す。


「いいか、よく聞け。確かにお前さんの言葉も一理ある。偶然重なっただけかもしれん。戦争が終わった後にこれじゃ、そう言う見方もあるじゃろう。だが、これは違う!よく見ろ、昨年との違いをな!」


「先ずラグナ山は近いうちに噴火する!これは確実じゃ。だが、わしが危惧しているのは噴火そのものではない、噴火の形式にある!」


「はぁ……?」


「従来のように、ラグナ山単体での噴火ならよくある光景じゃ。避難勧告出しておけばよい。だが、ここ数日間出したデータから照らし合わせるとーーーーオオオ……!!!」


「悪夢じゃ!こんな、こんなことが………!!!地獄の釜が開く……!幽谷の瘴気が天を満たす……!」


 キエエエエエエエ!!!と奇声を上げ、師と仰いだ者が狂乱する様を見た助手の青年は困ったような顔をして立ち尽くしていた。彼には、老学者の導き出した答えの意味がまだ掴めておらず、その絶望感を共感できなかったためだ。


 そんな時だった。背後のドアからコンコンとノックが響いたのは。


「はい、どちら様───え?あ、貴女様は……!」


 ドアをノックした音に反応して、青年は部屋のドアを開ける。そこには、自分たちには縁のない人物が立っていた。そばには護衛だろう、熊のような体躯を持った大男が控えている。


「あ、アリス皇女殿下………!!??」


「突然で申し訳ありません。連続して発生した災害について話を聞きたくて参りました」


 先の戦争で更迭された継承外皇族の一人、アリスがそこにいた。


「私にもお手伝いさせてくださいませ」









◆◇◆◇








盟歴570年、象蟹宮カールドの月



ザッ、ザッ、ザッ………


「ふぅ、ふぅ、き、きつい、ですわ……」


 今現在、エストレアはラグナ山に向かって進んでいた。


 ベル・クラウディア帝国とファンテリム帝国二大国家を擁するカルデラの中央に悠然と佇む中央火口丘。


『ラグナ山に行くといい。君は、自らに望まれた事を知るだろう』


 あの日、大勢の人間の前で姿を現した大魔法使いマリウス・シオンはエストレアに対して理解し難い意味深な言葉を残して、再び姿を消した。


 その後、色々と質問攻めにあったものの最終的にエストレアはラグナ山へと向かうことが決まった。


「ラグナ山に近づくにつれて、地形の変化が激しいな」


 歴史で学んだ昭和新山のように、あちこちから蒸気を発する隆起した大地が目に入る。


 周りを見渡せば、立ち枯れした木々が否応なしに目に入る。騒がしい動物達の営みさえ聞こえない。


ゴゴゴゴゴ………………!!!


「また、地震か」


「山頂に近づくにつれて増えてますわね」


 今この場所にいるのはエストレア達一行ともう一人。


「そういえば魔剣は何か言っているのか、ネロ?」


 エストレアは自分たちに同行したもう一人、帝都で活躍した知人の方に振り返る。


「いや。沈黙したままだ。けど、俺がここにいる理由がきっとお前達の行く先にある」


 魔剣の主、ネロ・ジウスティア。本名はネレウスというのだが本人はそう呼ばれるのを嫌っている節がある。その正体は帝国建国神話における継承の象徴【魔剣 ズツァニッグ】の所有者である。


「というより、貴方。帝都の後、どこをほっつき歩いていたのですの?」


 ゼェ、ゼェと息切れをしながらも、ジェシカが睨むように彼女───ネロに視線を向けた。


「何処って……決まってんだろ。古臭い大臣どもにもみくちゃにされて、逃げてたんだよ。ったく、俺には皇帝位なんぞ要らねえってのに」


「魔剣を所持している時点で、無理だと思いますわね」


「言うじゃねえか、餓鬼」


「ぬぅわんですってぇ!?」


 猫の喧嘩のような雰囲気に辟易ながらも、その足は止まることはない。山頂に近づくにつれて、卵か玉ねぎの腐ったような異臭が鼻をつく。


「お前達、無駄口を叩くな。それよりも、着いたぞ」


 ワイワイと緊張感のかけらもない中、一行は山頂へと辿り着いた。いや、緊張感はあるのだろう。現にエストレアですら身震いを起こしそうになるほどの重圧が絶えず襲ってきているのだから。


「煮えたぎってる……」


「いつ噴火してもおかしくない……」


 火口を覗き込むのは、ダークエルフの双子。イルナとイザルナの姉弟。


 だが確かに噴火するかもしれない、という状態ではあるのだろうが、この光景を見てもまるでごく普通の活火山を目の当たりにしているだけである。


(いざ、来てみれば………。何処に異常が………?)


 エストレアが不思議がっていると────



ゴゴゴゴゴ…………!!!


「っ!イルナ、イザルナ離れろ!!!」


「デカいぞ………!」



ガラガラガラ…………!



 大きく揺れ、やや離れた地点の山の斜面が轟音を立てて崩れ、波のように流れていくのが見えた。


そして崩れた山の斜面が突如として膨張したかと思えば───



 パッという黒い柱が勢いよく立ち昇った。その次の瞬間にはドォオオオンと地鳴りにも似た轟音が空気を震わせて轟く。


「ちぃっ!噴火しやがった!」


「離れるぞ!」


 一行は来た道に踵を返そうとするものの、それを阻むように山体のあちこちから噴煙が立ち昇る。それはまるで祭壇に並べられた燭台に火をつけるように円を描いているようだった。



 次々と立ち昇る噴煙と共に降り注ぐ火山弾や軽石。魔法、あるいは剣を振るって、凌いでいるがジリ貧になっていく。


 しかし、立ち止まればその場所も噴火に巻き込まれる為、足を止めるわけにはいかなかった。


「どうする!逃げ場がねえぞ!!!」


(どうする………!どうすればいい………!)


 思考を巡らせるものの、突発的な災害に巻き込まれた今は少しでも安全な場所に避難しなければならなかった。


 エストレア含めた全員が焦燥気味になっていた時、視界の隅に何かが映り込む。


 それは黒煙と燃える岩の弾の中でフワフワと漂う白い蝶のような、ナニカ。それから発せられる魔力の形にエストレアは既知を覚えた。


(これは………マリウスの……?)


 空中で踊るように舞い、視界の端でふっと掻き消えたかと思えば、次の瞬間にはまるでエストレア達を導くように、その方向に再び姿を現す事を繰り返していた。


「おい!エレン───「お前達、こっちに来い!!!」はぁっ!?」


 なんとなく、なんとなくだった。あれについていく。ついていかなければならない。焦るような気持ちとは違った、ざわつくような気持ちがエストレアの心中を支配していた。


 白い蝶は、噴煙の向こう――山の内側へと吸い込まれるように消えていった。


 エストレア達が追いかけた先。そこには、洞窟とも言える空洞があった。噴火している最中に崩れて開いた空洞なのかもしれないが、今の状況では僥倖ともいえた。



「とりあえず、中に入るぞ!」


 彼女らははやる気持ちで洞窟の中へと足を踏み入れた。いつ自分たちを押し潰すかもしれない岩弾から身を守りたいというのもあるだろう。


 











 ───だが、心せよ。これより先は地獄の門───



─『汝等この門を入るものよ、一切の望みを捨てよ』─



 ─『罪は人を神から遠ざけ、人を人でなくする』─




    ──『罪とは、人の獣性である』──







 少しでも面白い、続きが気になると思った方は感想、評価、ブクマ、いいねをよろしくお願いします。

これからも、この物語を見守ってくださると嬉しいです!


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