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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
181/203

chapter10-2

お待たせしました!(*⁰▿⁰*)いよいよ2章もラストスパート!ラスボスまでほぼ秒読みです!o(`ω´ )o




ベル・クラウディア帝国領内、ラグナ山麓。


「うーむ。昨日より隆起しておるな」


 いかにも学者だと言わんばかりの風体をした老人が、助手と思われる青年を連れてラグナ山の麓で調査を行っていた。


「先生、僕には違いがまるで分からないです」


「ばっかもん!そんなもん、見れば分かるじゃろう!何年ワシの助手をしとるんじゃ!木を見て森を見ずなんじゃ、おぬしは!全体を見んか、全体を」


 ガミガミと助手に当たり散らす老人。しかし、それを気に留める素振りもなく青年はメモを取り続けていた。


「まぁ、良い。それよりも、今日も張り切って調査じゃ。しっかりと調べて帰るぞ」


「了解です」


 彼らはベル・クラウディア帝国の地質調査チームで、この国の大地はベル・クラウディア帝国とファンテリム帝国を擁するカルデラを定期的に緻密な調査を行っている組織である。


 というのも、ラグナ山自体が活発的な活火山であるため、定期的に調査をしないとどんな被害が発生するのか全く予想ができないからである。


「ふぅ、ふぅ、暑いですね、先生」


「全くじゃ。まだ朝だというのに、地熱で汗をかいてしまうから服が肌に張りつきおる」


 老人は額の汗を乱暴に拭い、腰に下げた金属製の筒を引き抜いた。


 中から取り出したのは、幾何学模様の刻まれた細い金属杭。


「では、いつも通りにな」


「はい、先生」


 助手の青年は老人から金属杭を受け取ると、まっすぐ地面へ突き刺した。


――ズズ……。


 杭を打ち込んだ瞬間、大地の奥で何かが擦れ合うような、不快な音が響いた。


「……先生?」


 青年が小さく声を漏らす。


「静かにせい」


 老人は片手を上げて制し、腰の鞄から古びた計測板を取り出した。表面には無数の目盛りと、魔法陣にも似た線刻が刻まれている。


 地面に膝をつけ、金属杭に指先を添えた。


 ――カチ……カチ……。ガ、ガガ……ビィィィィンンン!!!


 計測板の針が、ありえない速度で跳ね始める。手元のこれまでのデータと見比べ、今のデータの異質さを感じ取った老人の顔色は真っ青を通り越してもはや白い。


「ありえん……!此処も隆起値、平均の三倍じゃと?」


「そんな……誤作動じゃないんですか?」


「バカ言うでないわ!このわしが計測を誤る訳無かろう!!!」


 なおも更新し続けるデータに戦慄を覚えつつも、老人はここに来るまでの調査結果を頭の中で照らし合わせていた。


「熱水噴出の回数の増加、液状化に呑まれた村、地鳴りの頻発……」


「そういえば先生。ここに来るまで、立ち枯れした常緑樹が多くなったような……」


「近隣住民からも家畜が突然死したとも報告があるな」


 老人は助手の青年と共に今回回ってきた時の感想を共有しつつ、低く呟きながら震える指で計測板の目盛りをなぞった。


「マグマの上昇なら、もっと段階があるはずじゃ……こんな跳ね方はせん……」


 ブツブツと呟きながら、手元の計測板を何度も睨む老人。その表情は明らかに険しくなり、まるで目の前の事象そのものを否定したいと願っているかのようだった。


「先生、これってつまり……」


「まだ、確信が持てたわけではない。だが、楽観視は出来んの、ファンテリム帝国側の地質調査が出来れば良いのだが……。最悪の場合は………!!!」



「国が、滅びるぞ……!」




◆◇◆◇





同時刻───



 ファンテリム帝国のとある場所では、老夫婦がいつものように農作業に従事していた。


「ふう……」


「アンタ、そろそろ切り上げなさいな」


「ん?おお、そうだなぁ」


 国家間の戦争とはまるで関わりのない彼らの何気ない日常。


 だが——その“穏やかさ”を破るように、地面の奥でゴウ……ッ、ゴボ……ッと水が煮えるような音がした。


「……今のは何かしら?」


「さあ?でも、最近変な匂いがするようになった。卵が腐ったような、なんというのかな……」


 すると突然、何処かでドォンという大きな音を立てる。老夫婦は顔を見合わせ、薄気味悪い予感を感じ取っていた。


「……気味が悪いねぇ」


「気のせいだろう」


 老夫婦はそう言って作業を続けたが、離れた場所で放し飼いにしていたはずの家畜たちは、鼻を鳴らしながら震えていた。鳥たちは一斉に何処かへ飛び立ち、僅かな食糧で生きていた獣たちも姿を消した。


 老夫婦はその理由を——まだ知らない。







◆◇◆◇







「すごく痛い……」


「自業自得だ、馬鹿」


 ベッド脇の椅子に腰掛けたエストレアが腕を組んだまま吐き捨てる。


 床の上で大の字になっていたマリウス・シオンは、鼻を押さえながら身悶えていた。


「エストレアが辛辣だよぅ……」


「知るか。お前がやったことに対してこれで済んだと思え」


 涙目になりながら、すくっと立ち上がったマリウス。エストレアに馬乗りにされ、連打を受けたとは思えないほど平然としていた。


「それで、何しにきた?」


「冷たいなぁ。まぁ、それも君のいいところさ」


「もう一度言うぞ。何しにきた?」


 ヘラヘラとしているマリウスに対して、圧を強めて問いただす。


マリウスは一瞬だけ目を瞬かせ、それから肩をすくめた。


「様子見、って言ったら……怒る?」


「怒る」


「だよねぇ」


 軽い調子のまま椅子の背に寄りかかるが、視線だけはエストレアから逸らさなかった。


「でも本当に、それだけじゃないよ」


「……続けろ」


 エストレアは腕を組み直す。指先が、わずかにきしんだ。


「ニースが死んだことで帝国の混乱は沈静化するだろう。だが、それだけじゃ足りない」


「断言しよう」とマリウスが言うと、彼はさっきのようなおちゃらけた表情から一気に真面目な表情を浮かべる。


「君はもうすぐ大きな戦いに臨まなければならない。それは避けることのできない、試練のようなものだ。出来る限り、遅らせるけど────猶予はあまりない」


 突然、空気が変わった。


 冗談めかしていたはずのマリウスの声から、軽さが完全に消えている。


「……お前は何を言っている?いや、何を知っている?」


 エストレアの問いに、マリウスはすぐには答えなかった。代わりに、天井を見上げる。


「“知っている”というより……もう、動き出してるって言った方が正しいかな」


 そう言うと、マリウスの輪郭が揺らぎ始めた。身体の境目がぼやけ、輪郭線が崩れ、身体の各部位が細かい多面体へと分解されていく。


「もうすぐ分かるよ」


 声だけが、部屋に残る。肉体はポリゴンへと変換されながら、光の粒子のように空間へと溶けていった。


「待て!」


 思わず踏み出したエストレアの足が止まる。掴むべきものは、もうどこにもない。


「ごめんね。僕は行かなきゃいけない」


 既に姿はなく、声だけが響く。


「まだ……君たちは準備が足りてない」


 静寂が落ちた部屋に、最後の警告だけが残された。


「だから、それまでの時間稼ぎをするのさ」


「そうじゃないと────」


 ほんの一瞬の間。 


 息を呑むほど、短くて長い、沈黙のあと、マリウスの気配は完全に消失。残されたエストレアは最後に残された警告を反芻していた。


「あいつは、何を伝えたかったんだ?」


 マリウスが残した言葉。それは、にわかに信じがたいものであった。












「今のままでは───世界が滅ぶ」






◆◇◆◇






脈動を続ける火の炉。ドロドロと大地が赤く、赫く溶けた、その最奥にて、それは沈黙を保ったまま存在していた。



▲ 起動処理、開―始 ▲


中枢構…造を確認中……

ロ◼️ファ◼️ルを確認中……


ERROR


ERROR


ERROR


──終◼️プロ◼️ラ◼️、起動シー◼️ンス失敗──


──◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️体《◾️◾️◾️◾️◾️◾️》起動出来ません──


──基幹規格 v0.8.14 よりアップデート……──


■更新パッチ適用中■


── ■■■■■■■■ ──完了


---アップデート中---


── ■■■■■■ ── 残り◾️%、完了



《イン◼️トール可◼️状◼️で待機し◼️す》
















      ──まもなく火は放たれる──



     ──報われなき罪業の熱を帯びて──



    ──火の炉より出で、空を赫く染めん──



     ──汝、一切の赦しを望むべからず──



     ──星の裁定を、しかと臨むべし──


 その時、一瞬だけブゥンと怪しげに光が灯ったのだった。




 少しでも面白い、続きが気になると思った方は感想、評価、ブクマ、いいねをよろしくお願いします。

これからも、この物語を見守ってくださると嬉しいです!


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