chapter 10-1
お待たせしました!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
「だいぶ復興が進んできたな」
エストレアは修復中の帝都コンスタンブール中央大通りをゆっくりと歩きながら呟いた。
しかし、まだ瓦礫は残っている上に建物の半分は骨組みが見えていたり、焦げ跡が壁から消えきったわけでもない。
──だが、人の気配が戻ってきた。
それが三週間という短い期間での最大の変化だった。
「つい最近まで戦争していたとは思えませんわね」
隣でジェシカが目を丸くしながら言う。市場の方では新しい屋台が組まれ、子どもたちの笑い声が大通りに弾んでいた。
そんなファンテリム帝国復興に頭を悩ませることが一つあった。
ズズゥ………
そんな時だった。大通りの石畳がかすかに波打ち、建物の梁が低く軋む音を立てた。
人々のざわめきが一瞬止まり、鳥がばさりと飛び立つ。
「またか」
「大きくはありませんでしたが、戦争が終わってからというもの回数が多くありませんの?」
地震。
火山の跡地であるカルデラの中にある二つの帝国にとって地震は別段珍しくない。場所によっては温泉や間欠泉などといったものさえあるのだから。
現代日本の記憶を持つエストレアからすれば、そういう地理学的な観点から言えばなんら問題はないように見える。
「ただの地震ならいいんだけどな」
「?」
エストレアは胸につっかえるような不安を抱きながら一歩踏み出した時、それは起こった。
──ザザッ
『◼️つき』
──ガガッ
「!!??」
エストレアの脳裏にノイズが走る。例えようのないナニカが脳裏にフラッシュバックする。
──ザザ、ザッ、ザーーーーー……
ノイズが止まらない。思考がまとまらない。
灰色の光景。
喉を締め付けられるような感覚。喉に感じる圧迫感と脈動が滞るような、嫌悪を感じるナニカ。
『◼️達を帰◼️て◼️ぉっっっ!!!』
喉に沈み込む感触と、指先に伝わる脈動が徐々に途切れていくような、強烈な吐き気を催す感触が増殖していくのが伝わる。
ブレるような視界の中、ノイズの中に黒く塗りつぶされた顔のようなものが脳裏によぎる。
そんなノイズ混じりの中、泣きそうな声が聞こえた、気がした。
──ザ、ザ……ザァ……
視界が揺らぐ。
呼吸が、自分のものではなくなる。
例えるものが分からない感覚が、神経をなぞって這い上がってくる。
「ぐっ、あ……ぁ……?」
「お姉様っ!?」
脳裏に走るノイズが濃くなり、膝をつく。ジェシカが悲鳴のような声で介抱しようと近寄ってくる。
───プツン
そしてエストレアは。
その意識を手放した。
◆◇
パラ……
黄昏の空の下、永劫の時間だけが存在する花畑に、本を捲る音がする。
「いよいよ、だわ」
世界から切り離された場所、エヴァロンの管理者エレインが空を見上げて言葉をポツリと漏らす。
「運命の歯車は動き始めた。黄昏を謳う、介錯を望む我らが罪が」
「もうすぐ、世界が燃える。星の娘よ、我が希望よ、抗え、武器を手に取りなさい。そして────」
「我らが罪に───断罪を」
◆◇
「お姉様!お姉様!!!」
ジェシカが泣きそうな声で倒れたエストレアを揺する。周りには人だかりが出来ていて、誰か医者を!という声もある。
「エストレア!!」
そんな中、人混みをかき分けてクローディンが息を上げながら駆けつけてくる。人混みを割って現れたクローディンが、地面に膝をつく。
「何があったんだ!?」
「い、いきなり苦しみ出したんですのよ!?」
「よくわからねえが、とりあえず医者だ!!!」
クローディンはぐったりと意識を失ったエストレアの肩を抱き、頬に手を当てる。
「……冷た……!?」
指先に伝わってきた感覚に、クローディンは息を呑んだ。
体温が低い。低すぎる。
「お姉様……」
ジェシカは唇を噛みしめながら、エストレアの手を握る。その指先が、微かに震えていた。
「医者は!? 医者はまだか!」
周囲の兵士に向かってクローディンが怒鳴る。
だが。
「んぅ……」
「お姉様!?」
かすれた吐息がエストレアの唇から零れ、閉じられていた瞼が、ゆっくりと持ち上がる。
焦点の合わない瞳。
そこに映っているのは、空でも石畳でもない。
――何かを探すように彷徨っている視線だった。
「……わ……私……?」
「じっとしてろ。今は動くんじゃねぇ」
そうして、エストレアは間も無くやってきた宮医によって担架に乗せられて帝城へと連れていかれるのだった。
◆◇◆◇
「う……んぅ……?」
目を開ける。
意識ははっきりとし、自分の置かれている状況がわかって来る。
ここは天蓋付きのベットの上で、どうやら自分は眠っていたらしい。事情がまるで分からず、起きあがろうとした時だった。
「起きてたか」
少し乱暴なノックと共に入ってきたのは、クローディンだった。
「クローディン?」
「びっくりしたぞ、貴族街の大通りで、いきなりぶっ倒れたんだからな」
「は?」
倒れた?
エストレアは言葉の意味を脳内でなぞる。
「……私が?」
「ああ」
クローディンは腕を組んだまま、短く頷いた。
「ジェシカ曰く、いきなり顔色悪くなってよ。ふらついたと思ったら、そのまま倒れたんだよ」
「三時間くらいか?まあ、貧血かと思ってたが、医者の見立てだと過労じゃないか、みたいだったが。戦争してたんだ、溜まってたんじゃないか、ってな」
だが、エストレアは。
「………覚えていない」
「マジかよ……。まあいい。とりあえず今日一日中は休んでろ。俺はこれから連合軍指揮所に行ってくる。きっと、疲れてたんだろうよ」
そう言い残し、クローディンは踵を返して部屋を出ていった。
扉が閉まる音が、やけに大きく響く。
そして、静寂。
エストレアはゆっくりと息を吐き、天蓋の内側を見上げた。白い布地が、窓から差し込む風にわずかに揺れている。
「……疲れ、か」
呟いてみても、言葉に現実味はなかった。体は確かに重い。だが、単なる疲労とは違う。どこか、内側が空洞になったような感覚。胸の奥に、ぽっかりと穴が開いている。
吸血衝動かと思ったが、あの戦争でだいぶ補給した為、それはないだろう。
布団の上で指を開き、握り、また開く。感覚は正常だというのに、何かが欠けている、気がした。
「浮かない顔をしているね」
「!?」
突如、誰もいないはずの部屋に声が聞こえ、そちらに視線を向けると。
「やっほーーー。久しぶりだねぇ、エストレa「死ねえぇぇぇええええ!!!!」……ぶげらっ!?!?!!??」
飄々とした、憎たらしい顔をした魔法使い、マリウス・シオンが手を振っていた為────ベッドから跳躍して、マリウスの顔面に渾身の力で拳を捩じ込んでいた。
「けほっ、あ、見えた」
「よし、殺す」
ナニを見たのかは問いただす必要はない。ただ、結果だけ言うならば。
後からやってきた給仕は馬乗りパンチによる連打を初めて見たと供述していたという。
マリウスって誰?って方へ。
↓
二章のchapter1-4、1-5を参照。
コイツが犯人です(`・ω・´)
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