10-15 真犯人登場
「ということで、ワタシがシアラ・マールムを誘拐した犯人でした!」
蒸気船から吐き出された人々のどよめきの中、浮ついた声がレイ達を迎えた。白衣の袖を持ち上げて自身を指差すナタリカ。ベンチに腰掛けている彼女の膝には、寝息を立てているシアラが居た。
「どう? どう? 驚いた。よもや蒸気船で親しげに話しかけてきた謎の美人研究員が犯人だったなんて、そんなこと少しも思わなかったかしら。くふふのふー」
不思議な笑い方をする女性に対して、リザ達は揃って身構えていた。あまりにも唐突な登場に、それでいてどこか馴れ馴れしさを醸し出すナタリカの真意を掴みかねていた。
そんな中、レイは静かに、しかし龍刀の柄から手を離そうとせず、覚悟を決めた様にナタリカと対峙した。まるで、これから死闘が始まるかのような緊張感に、誰もが戸惑ってしまう。
レティとヨシツネと合流してから一夜明けて、船が学術都市側の岸辺に着くまで、レイは多くを語らなかった。シアラを誘拐した犯人に心当たりがあるとだけ説明した後は、何か考え込むばかりで話が出来ずにいた。そうしているうちに船は岸に着き、レイ達が降りると待っていたのがナタリカだった。
「怖いな、そんな顔をしちゃって。ワタシはこれでも臆病者なんだよ。そんな怖い顔で睨まれちゃったら、心臓が止まっちゃいそうだよ」
「黙って下さい。……シアラをこちらに引き渡してくれませんか、ナタリカさん。いえ、こう呼びましょうか? 六将軍第三席カタリナ・マールムさん」
「―――っ!? レイ様、その名前は!?」
レイの口から飛び出した名前にヨシツネを除く仲間が動揺を露わにした。この様な場で飛び出すに相応しくない名前ではあるが、カタリナと呼ばれたナタリカは嬉しそうに唇を吊り上げると、
「大正解! 百点をあげようじゃないか」
と、惜しみない拍手を送るのだった。
あまりにもあっけなく認めた事で、返ってレイは拍子抜けしてしまう。
「……自分で言っておきながら何ですが、本当に貴女がカタリナなんですか? 正直、髪の色も、目の色も他の魔人と違います。それに、貴女からは魔人特有の気配がしません」
「うん? 疑っているのかい。髪色は、薬品で変えているんだ。目の色は、この眼鏡。ガラスに特殊な細工が施してあってね。これを通してみると眼球の色が違く見えるんだ。ほら、このように、ね」
言いながら眼鏡を外すと、禍々しき金色が露わになった。途端、レイ達を暴力的な闘気が襲う。人の生存本能に直接訴えかける恐怖は紛れも無く魔人が発する特有の物だ。
あまりのプレッシャーに全員が武器を抜き構える。
「くふふ。ごめん、ごめん。君達を怯えさせるつもりなんて無いんだ。ほら、武器を仕舞って。何事かと周りが注目しているよ」
眼鏡をかけ直すと、ナタリカからのプレッシャーは嘘のように霧散した。レイ達は周りの何事かという視線を気にして武器を戻した。
「それにしても、噂通りの修羅場を潜って来たんだね。ワタシの威圧を前にして、まさか逃げるでも無く、死ぬでも無く、武器を構えるなんて、とんだ自殺志願者だ。これはディオニュシウスが倒されても仕方ない」
「……目的は何だ。まさか、同胞の敵討ちなんて望んでいるんじゃないだろうな」
「くふふ! それこそまさか。君って、冗談が上手いね。ワタシの過去を知っているなら、そんな事あり得ないなんて知っているだろ」
推測を口にしつつも、レイも同じことを考えていた。六将軍第三席カタリナ。その肩書には「元」が付く。三百年前の『暗黒期』。人魔戦役の最中に、彼女は『魔王』フィーニスを裏切った。彼の力を奪い、六将軍を離脱したのだ。
弱体化したフィーニスは『勇者』ジグムントを相手に敗北。更なる深手を負ったせいで、本来なら世界規模で行われるはずだった環境変化、『魔界』の誕生は当初の規模を縮小する結果となった。
それゆえ、彼女は六将軍から憎悪の対象とされている。ディオニュシウスが殺されたからといって、敵討ちをする理由なんて無いだろう。
「それじゃ、シアラに会いに来たのか。経緯はどうあれ、貴女は娘がゲオルギウスの氷から脱出するのを手伝ったはずだ。娘を思って、顔を見に来たのか」
「うーん。それは理由の一つであって、全ては無いわね。ワタシの目的は、君なのよ」
どことなくシアラと似た形の指をレイへと突きつけた。それは真っ直ぐ、レイの左目下を走る傷口へと向いていた。
「ね、それよりもワタシがカタリナだと気づいた理由を聞いてもいいかしら?」
唐突な質問にレイは訝しみながら答えた。
「一つは、ナタリカという名前。あれってカタリナという実名を組み替えた偽名なんだろ。貴女から貰ったこれをシアラが見た時、妙な反応をしたのが印象的だったから直ぐに思いついた。でも確証を得たのは、シアラが誘拐された時だ」
「そうです。あの場には皆が揃っていました。船に窓は無く、出入り口はヨシツネ様が押さえていました。あそこから、どうやってシアラを連れ去ったというのですか」
リザの疑問に、レイはフィーニスから受けた傷口を撫でた。
「おそらく、フィーニスの影を貴女も使えるはずだ。影による転移。それでシアラを誘拐したんだ」
明確な言葉は無かったが、カタリナは満面の笑みを浮かべて首を振った。
毒で意識が朦朧としていた時、レイは感じたのだ。傷口が内側から蠢くのを。あれは、自身の中で様子を伺っているフィーニスの魂が反応したのだろう。かつて、奪われた力の一部に気づいて。
実は同じ反応が、前回の時間軸でも起きていたのだ。あの時はどういう事なのか謎だったが、シアラが誘拐される直前に疼いた事から理由が判明した。
「情報通りなのね。お父様の魂を植えつけられているなんて、かわいそうな子。どうにか押しとどめているけど、それも時間の問題。果実が内側から腐っていくように、魂も中心から変質していくのよ。それが表に現れた時には、もう手遅れ」
カタリナの言葉には重みがあった。自身の経験から来る重み。同じようにフィーニスの魂を宿された存在だからこそ、彼女が嘘を吐いていないと理解できた。
そんなレイの心を察知したかのように、彼女は手を伸ばした。
レイの方へと手を差し伸べる。
「怖いでしょう。何時、自分が自分でなくなるのか。眠れば次に目が覚められるか分からないから、夜が恐ろしいでしょう。分かるわ。本当よ。きっと、その苦しみはワタシなら分かち合える。だから、手を貸してあげるわ」
「……どういう意味だ?」
「レイ様! 耳を貸してはいけません。相手は魔人、六将軍ですよ。彼らが人をどんな風に扱うのか、どう思っているのか知っているじゃないですか!」
「失礼な子ね。ワタシは魔人であっても、元六将軍よ。あの野蛮人共とは違うの。……貴方の悩みを解決してあげ―――っ!」
言葉が最後まで続かなかったのは、彼女を予想外な一撃が襲ったからだ。
それまで寝息を立てていたシアラが、突如として起きたのだ。
起きるという動作にしては勢いを付けて、自らの頭を鈍器のように振って、無警戒だったカタリナの顎を打ち抜いた。
溜まらず、後ろへとカタリナの顔が流れていく。シアラは母親の体から落ちると、地面に汚れるのを気にせずに転がりつつ立ち上がった。
「いい年のおば様が、若い男をツバメにしようなんて、趣味が悪いんじゃなくって!」
「シアラ! 無事……なのか?」
「ええ、心配を掛けたかしら。額がじんじんと痛い以外はどこも問題ないわよ。さあ、みんな武器を構えて! この人を……止め……あら?」
勢いは空気の抜けた風船のように萎む。それはレイ達も同様だった。
先程まで人を超越した上位者然とした振る舞いをしていたカタリナ。それが天を仰ぐ体制のまま身動きを取らずにいた。
罠にしてはあまりにもお粗末。しかし、どうする事も出来ないまま、一分と時間が過ぎた。
その間、周りは奇異の視線をレイ達に向けたがそれを構う余裕なんて無かった。
ようやく、これは変だと感じた。ヨシツネが警戒しつつカタリナの傍により、彼女の脈と呼吸、そして瞳孔を確認した。
忍者は気まずそうな顔をレイに向けた。
「その……気絶しております」
俄かには信じられない報告。しかし、そうとしか考えられない結末だった。
何とも言えない空気に満たされる中、エトネがポツリとつぶやいた。
「……ろくしょうぐん、げきは?」
「いまのワタシはね、この自作の魔道具、眼鏡型弱化装置で力の大部分を封印しているんだ。心臓を貫かれれば死ぬし、あんな何でもない攻撃も避けられないぐらいなの。だから、こんな風に縛らないでくれるとありがたいのだけれど」
がたごと、と揺れに合わせて縛られたカタリナは揺れる。馬車の中には信じられないという視線が彼女に向かって注がれていた。
シアラの頭突きを受けて、まさかの気絶をしたカタリナを、流石において行く訳には行かず、蒸気船から降ろしたキュイに馬車を繋げその中に放り込んで出発をした。
ほどなくして意識を取り戻した彼女は、誰にも聞かれていない内に自分の隠しておかなくてはいけない秘密を暴露したのだ。
「その顔は信じてませんと言っているね。でも、君なら理解できるはずだ。お父様の力を行使すると、同類にはそれが感じ取れてしまう。特に、影の転移ができるクリストフォロスは厄介でね。あれの目を盗んで転移できるなんて、十年に一度あるかないかだ。だから、ワタシは力を封印して、人の世界に紛れ込んでいるんだ」
「なら、このふざけた身分証もその一つって事かしら。……カタリナ」
冷淡な響きを持って尋ねるシアラ。それが無理やり作った仮面だというのは直ぐに分かった。この母娘は複雑な因果で結ばれている。それを考えれば、彼女の対応も理解できる。
シアラが手にしたのはカタリナを拘束する際に身体検査をした時に出てきた身分証だ。ギルドが発行するプレートに似たそれは、ナタリカの名と、船上でレイ達に説明した肩書が印字されていた。
「学術都市生体研究部門主席研究員ナタリカ。偽名にしても、もっとマシな名前はなかったのかしら」
「……母親を呼び捨てにするのかい、シーちゃん」
からかう声に、シアラは顔を赤くした。シーちゃんが誰を指すのか、全員が察してしまう。
「くふふ。懐かしいな、シーちゃん。覚えているかな。君が、そこのハーフエルフよりも小さかった頃、名前を呼ぶといつも笑顔になったんだよ。ワタシはそれを見る度に疲れが吹き飛んでいたよ」
「おか―――カタリナ。悪いけど、思い出話なんてしないでちょうだい。ワタシは、貴女を母親なんて思っていないんだから」
拒絶の刃が振るわれる。カタリナは驚くことに、シアラの言葉に傷ついたように項垂れた。
「そうか。……やっぱり怒っているのかい。ワタシのした事で、あの島が戦火に晒されたことを」
「当たり前でしょ!! あの島は、お父様が、皆が望んで作った聖域なのよ。平和という光を次の世代に託すための、そんな場所を。貴女がフィーニスから力を奪ったから、ゲオルギウスは怒り狂い、島を、皆を!」
それ以上は言葉にならなかった。金色黒色の瞳から雫が溢れ、声は詰まる。リザがそっとハンカチを差し出すと、シアラは涙を拭う。
「ワタシは、貴女を許さない。今の貴女が普通の人間と同じ力しかないのなら、丁度いいわ。この手で、貴女を殺してあげるわ。御霊でお父様に、皆に詫びなさい」
杖を刃のように引き抜くと、彼女の体から精神力があふれ出した。それだけシアラが本気なのが伝わった。彼女を止めようとリザ達が動く中、レイは静かに告げた。
「《止まるんだ》、シアラ」
「―――っ!? どうして、どうしてよ、主様!?」
金縛りにあったように動きを止めたシアラ。奴隷契約を結んだレイの命令に彼女は従うしかない。それが己の意思と反していようとも。
「殺すのは駄目だ。少なくとも、彼女が学術都市の研究者として在籍している以上は、ね」
「そうだよ。いくらこの人が本当にカタリナだとしても、それを周りは信用しない。《ミクリヤ》の人間が学術都市の研究者ナタリカを殺したとしか認識しないよ。そうなったら、一番厄介になるのはお兄ちゃんなの、それぐらい分かるでしょ」
レティにしては冷たい言い方になったが、それが逆に良かったのだろう。シアラの瞳から殺意と憤怒が薄まり、しかし振るった杖の先は行き場を無くしたように固定されたままだ。
それをリザがそっと下ろした。
彼女は何も語らない。ただ、青い瞳に宿すのは労わりの色だった。
「……そうね。ごめんなさい。少し、頭に血が上ったわ。……悪いけど、この女の聞き取りは、他の人に任せてもいいかしら」
「ああ、休んでいるといい。レティが診断したとはいえ、何かされていないとも限らない。横になって、目を瞑っているだけでも体力は回復するだろう」
「お言葉に甘えるとするわ」
言って、横になると彼女の口から穏やかな吐息が零れ始めた。やはり、母親との対面は精神的に負荷がかかっていたのだろう。リザが毛布を掛けるのを見届けてから、レイはカタリナと向き合った。
「カタリナ、それともナタリカと呼ぶべきですか」
「好きな方で構わないよ。どちらも、ワタシを呼ぶ名前なのは変わらない」
「……本当に学術都市の研究者なんですか。どうやって潜りこんだんですか」
「信じられないかい? あそこは、研究に人生を捧げたロクデナシばかりでね。興味を惹くであろう論文を何本か送ると、向うから来ないかって誘われるんだ。人となりなんて、誰も興味を持たない。あるのは、知識と発想。ただそれだけさ。だからシーちゃんが言う通り、ナタリカなんてふざけた偽名でも、誰も気づかないのよ」
「目的は何ですか。クリストフォロスとかに見つからないだけなら、どこか人里離れた場所でも構わないはずだ。学術都市といえば、ギルドの総本山。地理的にも法王庁の本部である聖都からも近い。魔人が隠れるには危険すぎる」
「だからさ。よもや、魔人がこんな所に隠れるはず無い。そんな人間の盲点を突いているのよ。事実として、ワタシはこうして普通の人間の振りをして溶け込んでいる」
飄々とした口ぶりだったが、確固たる自信があった。
力を封印されたとはいえ、何か切り札でもあるのか。拘束されているというのに、圧倒的強者の驕りのような物が言葉の端々に感じられた。
「……あの船に乗っていたのは偶然、ですか?」
「いいえ。事前に情報を貰ってね。あの船で君達と接触できると知って、乗り込んだのよ。ちなみに、貴方が浴びた毒。あれを作ったのはワタシなのよ」
「何ですって!? それじゃ、帝国に肩入れしているのですか!」
リザが眦を吊り上げ尋ねると、カタリナは詰まらなそうに鼻で笑った。
「帝国? どうしてワタシが……ああ、そう言う事なの。あの黒いの、帝国の人間だったんだ」
「知らなかったんですか? 彼女らが帝室から命令を受けていた部隊だとは」
「ええ、これっぽちも。ただ、知人から貴方達が船に乗る情報と引き換えに、毒を用意できないかと頼まれて、解毒薬と一緒に渡したのよ」
「知人……帝国に繋がりがあって、僕らの事を知っていて、ガシャクラの孫娘に指示が出せる人間。……そう言う事なのか」
頭の中で点と点が結び付き、一人の人間が浮かび上がる。
リザも同じ人間にぶつかったのか、レイの方へと視線を向けた。
女帝、ジョゼフィーヌ・ヴィーランド。元帝室の姫君であり、ガシャクラを配下に従え、レイ達の動向を追っているであろう存在だ。
カタリナが語る知人とは十中八九彼女の事だろう。すると、話を聞いていたレティがカタリナさんと呼びかけた。
「どうかしたのかしら、可愛らしいお嬢さん」
「あたしたちの仲間が、今回用いられた毒が、水の都で使われた《アニマ・フォール》と同じ、魔法で生成された毒だと見抜いたの。もしかして、あの時の毒も貴女が作ったの」
ハヅミが見抜いた真実をぶつけるとカタリナは笑みを深くした。
その反応で間違いなかった。レイ達の視線に険しさが増した。
「くふふ。素晴らしい、実に素晴らしいよ君達。シーちゃんと一緒に旅しているだけの存在かと侮っていたのを詫びなくてはね。ご指摘の通り、『魔導師』が残した《アニマ》に手を加えて《アニマ・フォール》のひな型を考案したのはワタシだ。といっても、手柄は半分だけだよ。研究中にちょっと面倒に巻き込まれて、後はエレオノールに任せたのよ」
エレオノールの名前にレイは水の都で繰り広げた死闘を思い出した。
盲目の道化師を気取っていた彼女の事は、結局分からずじまいだった。彼女が隠れ蓑にしていたサーカス団は全滅。元々悪行を積み重ねていた一座だったこともあってか、全滅した事で捜査は碌に行われずに打ち切り。
彼女が何者だったのか。
どんな人物の指示で動いていたのかは分からずじまいだった。
たった一つの手がかりを残して、道化師はリングから降りた。
「おとうさま」
「……何だって?」
レイの呟きに反応して眼鏡の奥の瞳が細くなる。レイもまた、彼女の一挙手一投足を見逃さないように身構えた。
「おとうさま、とエレオノールは言っていた。彼女が信頼……いや、信仰している存在の名称らしい。貴女がエレオノールと繋がっていると言う事は、おとうさまはフィーニスの事を指しているんじゃないのか」
どうなのか、と尋ねると、カタリナは悠然と微笑んだ。答えるつもりはないという明確な意思がそこに込められていた。だからといって退く訳には行かない。
「貴女が毒を渡したのは、ガシャクラと呼ばれる人物の孫娘だ。その人物は、ウージアの女帝、ジョゼフィーヌの手下。答えてください、貴女とジョゼフィーヌ、そしてエレオノール。貴女たちを結び付ける者は、何者なんですか?」
「教えてほしいかしら。だったら、耳を近づけてちょうだい」
「いけません、レイ様! これは罠です」
「同意です。何を企んでいるか分かりませぬ」
リザとヨシツネが警告を発するが、レイは縛られたカタリナの方へと耳を向けた。彼女はどこか余裕を感じさせる仕草で囁いた。
「ナ、イ、ショ。女はね、秘密を重ねる事で美しくなるのよ。分かったかしら、坊や」
「……馬鹿にしないでくれないか」
レイがきつく睨むも、カタリナはそれさえも面白いとばかりに唇を吊り上げた。
彼女と話していると、得体のしれない底なし沼を進むかのような疲労感ばかりが体を襲う。状況的に優位なはずのこちらが、圧倒されているのは魔人だからなのか。
そのまま一方的に睨んでいると、手綱を取っていたエトネが声を上げた。
「おにいちゃん! じょうへきがみえたよ」
その言葉に、カタリナは告げた。
「ようこそ学術都市へ。世界の知が集まる都へ。君を歓迎するよ。御厨、玲」
読んでくださって、ありがとうございます。




