8-32 黄龍討伐Ⅰ
「あれが、黄龍なのか」
天を貫こうときのこ雲が上へ上へと伸びていけば、対照的に下方は晴れていく。砂の竜巻で覆われていた黄龍の異様な姿が少しずつだが見えて来た。
黄龍はその巨体さ以上に、イメージしていた龍の姿とは大きく逸脱していた。
かつてアマツマラで暴威を振るった赤龍の姿は、ゲームや小説、漫画などの世界に出てくるポピュラーな姿に酷似していた。しかし、前方に見える黄龍は、どちらかというと亀のようなシルエットをしていた。
突き出た頭はともかく、巨躯の大半が胴体。それも丸みを帯びた姿は亀の甲羅のような曲線を描き、膨らんだ腹の隙間に、短くも太い足がひょっこりと顔を出している。赤龍を前にしたとき、刺々しいまでの暴力的な威風を感じたが、黄龍を目の当たりにして醜く変容した姿に嫌悪感を抱くのと同時に、当方も無い大きさに現実感が喪失してしまう。
きのこ雲越しに、黄龍の高さはうっすらと見えるが、恐らく千メートルはあるだろう。横幅はその倍。正面からでは奥行きは分からないが、横幅と同じだけあったとしたら、間違いなく山の如き様相を成していた。
「コウエン。本当に、あれが黄龍なのか」
『相違ない。信じたくない気持ちに理解は示してやるが、あまり現実を否定するでないぞ。……先に言っておくが、あれとて昔は、元は妾と同じ姿だったからな』
「それが、なんであんな不気味な姿になっているんだよ」
『さてな。妾にもとんと分からぬ。それよりも、見てみよ。黄龍の背を』
きのこ雲が昇っていき、黄龍の姿が露わになって来ると、遂に『機械乙女』の一撃がはっきりと視認できるようになった。丸みを帯びた黄龍の背。その左肩からわき腹に掛けて肉が抉れている。焼け爛れた表面は、マグマのように熱を帯び、肉の焼けた匂いが此処まで届きそうである。
都市を灰燼と化した一撃を耐えられた黄龍に驚けばいいのか、古代種の龍が五頭集まっても止められなかった存在に深手を与えたポラリスに慄けばいいのか。判断に迷う結果だ。
すると、サファがおかしいと呟いた。
「動かんな、あやつ」
「え? そういえば、動いてませんね。それに、ずっと続いていた振動も聞こえないし」
黄龍が目覚めてから、ずっと地面を楽器として響いていた黄龍の足音すら聞こえない事に今更ながらに気が付いた。
顎を撫でながら考え込むサファはよもやと前置きしてから、
「よもや、あいつ。気を失いおったのか」
「はぁ……はあああ!?」
「それは本当ですかな、サファ殿」
驚きの声を上げたレイと違い、合流を果たしたマクスウェルは即座に、切り返すように確認を取る。サファは黄龍から視線を逸らそうとせずに、そのまま答えた。
「ああ。様子がおかしい。先程まで続いていた振動が治まり、威圧感も薄まっている。おそらく『機械乙女』の一撃を浴びて、気絶したのだろうな」
小型とはいえ、きのこ雲を作るほどの爆発である。意識を失っていても、おかしくは無い。だとしたらと、レイは期待を込めて別の事を尋ねた。
「だったら、死んだって事はないんですか」
「生憎と、そこまでは楽観視できん。あの焼け爛れた痕が、僅かずつだが修復されている所を見る限り、生きてはいるのだろうな」
黄龍がポラリスの一撃で死ぬという都合の良い展開とはならなかった。だが、最上の結果ではないとしても、次点ではある。
「黄龍が意識を失っている現状こそ、突入に最適と言えますな」
「同意見だ」
サファの言葉に合流を果たした面々は表情を強張らせた。先の作戦会議で、黄龍の倒し方は二つに一つ。外側から心臓を狙うか、内側に潜りこみ直接心臓を狙うかだ。
一足一刀の間合いならば、何もかもを斬れると豪語するサファではあるが、あの肉塊の如き黄龍の心臓を外から狙うのは難しい。ならば、取れる手段は一つしかない。直接入り込んで、心臓まで到達する。
「だが、見ての通り黄龍は動く都市と呼んでも差し支えないほどの巨大な生き物だ。人の足で移動するだけでも時間をくうぞ。心臓の場所が何処にあるか分からん以上、移動中に気絶から目を覚ます可能性もある」
「分かっております。ですから、突入には飛竜を使おうかと」
「飛竜か。その様でか」
ここにきて、ようやくサファの鋭い視線が黄龍から外れ、マクスウェルらの傍に伏せる、倒れた飛竜の方へと向いた。
マクスウェルが口にしていた厄介な事態。それは六頭いる飛竜の内、二頭が翼を折れ、足を折ったのだ。マクスウェル達の居た場所の方が、爆心地が近かったこともあり、飛竜が体を支えきれずに転倒。地面を転がってしまたという。
飛竜が衝撃波を受けた分、リザを含めた仲間達に大した怪我は無かった。
「問題あるまい。三頭に儂ら《神聖騎士団》の面々とサファ殿が乗れば、それで十分だ」
「ちょっと待って。僕らを忘れていないか」
「忘れてはおらんよ。お主ら《ミクリヤ》のメンバーは此処で待機をしてくれ」
「そんな! ここまで来て、安全地帯で待っていろなんて、そんな事できません」
リザの毅然とした発言にマクスウェルはそうではないと首を横に振った。
「お主ら、特にレイ殿にはやってもらいたいことがあるのだ。あの黄龍が気絶から覚めた時、あれがオーマットの方角に、いや、オーマットだけでは無い。どこかに行こうとするのなら、お主の技能を用いて誘導して欲しいのだ」
「誘導って、砂漠近くにある山岳地帯に?」
「違う。そこに誘導するのは、砂漠で魔法が使えないという前提の場合だ。いまは、砂漠でも魔法が使えるになった。だから、もっと人気のない場所へ誘導して欲しいのだ」
「ねえ、それってもしかして」
何かを察したかのように呟くシアラに、マクスウェルはその通りだと言わんばかりに口を開いた。
「アルビノ砂漠中央に位置する悪魔の巣。そこに黄龍を引き寄せて欲しいのじゃ。あそこなら、黄龍がいくら暴れても被害は最小限に済む。そのために、お主が乗っていた飛竜は引き続き、お主が使え」
元々、レイがこの無謀な戦いに駆り出されたのは、黄龍の進路を変える誘導役。つまり、元の役目が再び回ってきたという事になる。だが、やはり黄龍の体内に潜る彼らと比べて、安全な場所で待機していることにレイは引き目を感じた。
不満げな色を隠そうとしないレイにマクスウェルは苦笑を浮かべた。
「それに、お主らを残すのにもう一つ理由がある」
理由と聞き、それに思い当たらなかったレイに対して、マクスウェルは軽く手で押した。すると、レイの体は呆気なく、何の抵抗も出来ずに尻餅をついたのだ。
幾らレベル差があるとはいえ、後衛と前衛。簡単に倒されるような結果になるはずが無かった。だが、現にレイはマクスウェルを見上げていた。
「お主、忘れてはおらんか。神前決闘において、その指輪を使ったじゃろう」
指摘され、レイは思い出した。ゲオルギウスとの戦いの時に、赤の指輪に込められた魔法を使用していた。《トライ&エラー》の事を打ち明けた時に、レイはそれ以外にも所持している技能や戦技、装備品についても説明していた。当然、マクスウェルは指輪の効果を知っていた。
「確か、所有者の生命力を魔力に変換するのだろう。今までは精神が張り詰めていたから体が無理に動けたのだろうが、一難去って気が抜けてしまったのだろう。先程から頭がフラフラとしておったぞ。それに指輪を使ったのはお主だけじゃない」
その言葉にレイはエトネの方を向くと、彼女も膝を折り曲げ、疲れた様子だった。エトネだけでなく、リザやシアラも戦闘や慣れれぬ飛竜での移動が疲労となって体に圧し掛かっている様子だ。
「お主らは此処までだ。後は儂らがやる」
柔らかい口調ではあるが、言葉の裏に固い意思が覗かせていた。レイは何も言えずに、ただ頷くしかできなかった。
かくして、《神聖騎士団》の面々とサファを乗せた三頭の飛竜が飛翔する。きのこ雲は天空に広がり、空は鉛色の雲に覆われ、肉塊としか表現できない黄龍の禍々しき姿を露わにしていた。
「あめ、やまないね」
幌の隙間から外を覗いたエトネが砂漠に降る雨を眺めつつ呟いた。マクスウェルらが黄龍の体内に侵入して一時間は経過した。彼らが突入してからほどなくして、きのこ雲は砂漠を覆い尽くすほどの雨雲となった。止むことのない雨の色は黒かった。
一瞬、最悪の可能性が頭を過るが、すかさずコウエンが雨に含まれているのは煤であり、有害な毒を含んではおらんと説明してくれた。
近場に雨を避ける様な軒下が無いため、リザが持っていた馬車を取り出して、レイ達はそこに退避した。
流石に飛竜が乗りこめるほどの大きさでは無いので、修繕用の幌を上から被せた。
やはり皆、疲労は色濃かったようで、馬車に潜りこむなり腰を下ろして、一歩も動けないでいた。そんな中でレイは眠気覚ましのコーヒーを啜った。
「レイ様。お休みになられなくても宜しいのですか」
ひと眠りしたリザが申し訳なさそうに尋ねると、
「うん。下手に眠って死に戻りの地点を作ると、中に入った人たちが死んだりしてもどうにもならないだろ」
勢いのある雨がベールのように黄龍の姿を隠している。体内に突入した時点で、彼らとの連絡は取れなくなった。距離の問題なのか、それとも黄龍の体内が特殊なのか分からない。けれど、レイが眠る事でセーブポイントが生まれ《神聖騎士団》の誰かが死んでも巻き戻せなくなるのを恐れて、レイは眠らずに待っていた。
「そう……ですか。あまり、無理はなさらない様にしてください」
「大丈夫だよ。指輪も、今はリザが持っていてくれてるしね」
「……いえ、そう言う事ではありません」
レイの持つ誰も彼も助けたいという精神は、一つの美点ではある。しかし、それに固執するあまり、後先考えず、より危険な方へと足を踏み入れる危うさがあるとリザは言いたかった。しかし、それを指摘した所でレイは自分を省みないだろうと、予知めいた予感を抱く。
「そういえば、不思議に思うんだけどさ」
「な、何でしょうか」
唐突に話しかけられたリザは反応に遅れてしまう。それをレイは訝しみながらも、思った事を口にした。
「サファさんの師匠であるイーフェってエルフは、あの黄龍と戦って死んだんだよね。でも、あの黄龍と戦いは成立するのかな」
「どういう意味よ、主様」
「いやだって、あの大きさだよ。人間だって、エルフだって、踏みつぶされればそれで終わり。とてもじゃないけど、戦うどころか、足止めする事だって出来ないだろ」
「まあ、そうね。あの巨体を一人でどうにか出来たって方が、ある意味化け物よね。ねえ、エトネ。その辺りハヅミは何て仰ってるの?」
止まない雨を見上げていたエトネが指輪に触れながら、どこか浮かない顔をしている。
「……ハヅミはね、さっきからおへんじしてくれないの」
「え? それってどういう意味なんだ」
「よく、わかんないの。ここにきてから、なんどかよびかけてるんだけど、こえがきこえないんだ」
「それは指輪の魔力を使い果たしたからなの」
シアラが可能性の一つを口にしたが、エトネは力なく首を横に振った。
「ちがうとおもう。まえにゆびわのちからをつかっても、ハヅミとおしゃべりできたんだよ」
前というのは、恐らく巨人兵と戦闘した時の事だろう。あの時もエトネは指輪を使用していた。
肩を落として落ち込む少女に、リザが慰めるように抱き寄せた。萌黄色の瞳に憂いを浮かべ、指は何度も青の指輪を撫でた。そんな光景を前にしてシアラが何かに気が付いたように顔色を変えた。
リザに慰さめられるエトネに気づかれないように移動したシアラがレイの横に座ると、真剣な面持ちで、耳元で囁いた。
「ねえ、主様。もしかしたらなんだけど、ハヅミ、あの時の咆哮で……吸収されたって可能性は無いかしら」
「え? 吸収って、もしかして黄龍にか」
こくりと、シアラは頷いた。
黄龍が復活した直後に発生した大量の気絶者。
コウエンはあれを、黄龍が生命力を吸い上げたからだと語っていた。ハヅミはエトネの心に宿る不確かで、不安定な存在だ。もしかすると、そのような可能性はあるのかもしれない。
同じ、肉体を持たない精神だけの存在であるコウエンに話を聞こうとして、紅蓮の刃を引き抜くと、刀身に映る幼い相貌もあり得るとばかりに頷いた。
だとしたら、ハヅミが消えたという事なのだろうか。
それが真実ならば、今にも泣きそうな程落ち込んでいるエトネにどうやって説明するべきなのか。
降ってわいた新しい問題に頭を悩ませるレイ達だったが、次の瞬間にはそれどころではなくなる。
なぜなら―――大地が震えたのだ。
大地が波打つように、馬車が持ち上がった。当然、中に居たレイ達も大地に居ながら浮遊感に驚く。
「うわっと!」
「きゃあ!」
「な、何事ですか」
三者三様の悲鳴が馬車から零れ、車輪が軋みを上げて地面へとぶつかった。
荷物が散らばる中、いち早く外に出たのはエトネだった。颯爽と駆けだした少女を追って、レイ達も外に出る。
土砂降りの雨で視界が潰れる中、遠くに見える黄龍の輪郭が動いているのが分かった。ポラリスの一撃を浴びた箇所は、まだ熱を持ち、修復されていないのも遠目で分かる。
「黄龍の奴、気絶から目を覚ました訳か。エトネ、こっちに近づいているかい」
「うん。ゆっくりとだけど、こっちにきてる」
雨の中でもエトネには黄龍の姿がレイ達よりも鮮明に見えるようで、黄龍の進行方向が変わらずに、北東の方角。つまりオーマットのままだと告げた。
気絶から目を覚ましても、目標は変わらない。
マクスウェルの懸念が的中する。
「リザ、馬車を小さくする前に、準備していた物資を降ろして。シアラ、魔法の詠唱を。黄龍がどんな攻撃手段を持っているのか分からないけど、レティが不在の状況だと、遠距離戦は君の魔法が頼りだ。エトネ、黄龍をよく観察してくれ。何かしてきそうな兆候があったら、すぐに教えてくれよ」
矢継ぎ早に出される指示にリザ達は従い、瞬く間に臨戦態勢を整える。レイが飛竜の背に跨ると、その前にエトネが。背にはシアラとリザが陣取る。少年少女といえど完全武装した四人を乗せた飛竜は、雨に打たれた翼を多く羽ばたかせて、空へと飛び立った。
「まずは、どうするのですか、レイ様!」
雨と風切り音が耳朶を占領する中をリザの声が突き破った。
レイも応じるように大声で、
「黄龍に接近して、技能を発動する。効果があったら、黄龍の上を突きって、背後に回るつもりだ。そうすれば、後はあいつを連れて悪魔の巣上空だ」
レイの立てた案はシンプルだが、それが最善手でもあった。リザもシアラも何も言わずに、レイに任せようとした。
過重オーバーでありながらも懸命に羽ばたく飛竜のお蔭で、黄龍に肉薄するレイ達。巨大な山の如き化身を足元に置きながらも、その威圧感に身を震わす。
黄龍の頭を越え、緩やかな曲線を描く背中へと移動していると、急に体が不調を訴えた。
視界がぐらつき、血の気が失せる。熱射病や、あるいは貧血のような症状に近い。だが、あまりにも唐突な現象に、レイは困惑する。
「あれ、からだから、ちからが」
「うっ。なにこの、気持ち悪さ」
同時に不調を訴えたのはエトネとシアラだった。雨に濡れた頬が白く染まり、明らかに様子がおかしかった。そして、もう一人、というよりももう一体、不調を訴えた者がいた。
飛竜だ。
一瞬ではあるが、飛竜の体から力が抜け、そのまま落下しそうになる。次の瞬間には慌てて翼を広げてくれたおかげで落下は免れたが、黄龍との距離は近くなった。
「どういう事だ、これは。リザ、君は大丈夫なのか!?」
「……いえ。なにやら疲労がこみあげてはいます。これは、あの時の咆哮に近いかと」
「それじゃ、これって。黄龍の仕業か!」
黄龍が持つ国喰いと恐れられた力。人の魂や生命力を吸い上げるという力が発動したのだ。一定の周期を置いて、断続的に発動する魂喰らい。黄龍が本格的に国喰いと呼ばれたころの恐ろしさを取り戻し始めた。
現在、レイ達は千メートル級の巨大な黄龍を、上空から跨ごうと飛翔していたため、高度にして八百メートルほどの地点に居た。黄龍との差は百メートルを切っている。山をリフトで昇るような錯覚を得た。
すると、前の方で動きがあった。エトネが身を乗り出して、前方へと首を伸ばすのだ。濡れた飛竜の首に手を当てているため、見ている此方が危なっかしくなる。
「危ないぞ、エトネ!」
レイがエトネの首根っこを押さえつけなければ、少女はそのまま落ちてしまいそうな程不安定な状態だ。それでもエトネは、黄龍の盛り上がる背中を見続けていた。
「ねえ、おにいちゃん。あそこになにかひかってるよ」
「光ってるだって。そりゃ一体何だよ」
エトネの言葉に興味を引かれたレイは、同じように少女が覗く光景を見る。雨で視界が曇る中、前方に広がるのは濁った黄色の鱗が、膨張する肉と相まって醜悪な様相をなした黄龍の背中だ。おうとつが波打つように並び、近くで見るとイボガエルの肌のような不気味さがある。
すると、その表面から白い光が灯った。
弱々しく、どこか寒々しい白色の光は、一つや二つでは無い。
何十、いやもしかすると何百という白い光が、直後、一斉に軌跡を描く。
上空に位置する、此方に向かって、何かが飛んでくる。
そこまでを認識したレイは、背筋を凍らせながらも命令を下した。
「シアラ! 攻撃だ! 防げ!」
「―――っ! 《豪風よ、轟叫べ》《我らの外敵を、悉く打ち倒せ》《ウィンドストーム》!」
雨粒を吹き飛ばす豪風が渦を巻く。飛竜と白い光の間に生まれた魔法は盾の様にレイ達を守る。だが、その風の盾をすり抜けて白い光が飛竜に突き刺さった。
悲鳴を上げ、態勢を崩す飛竜。翼に突き刺さった光は―――矢だ。
白い、幻燈のような不明瞭な輝きをした矢は、前触れもなく煙のように消えた。
その消え方にレイは何かを思い出しそうになる。
しかし、
「不味いわ、主様。数が多すぎて、このままじゃ、もう!」
シアラの必死な叫びに導かれるように、飛竜は黄龍の背から放たれた矢が次々と刺さっていく。濡れた紙に穴が空いて行くようにして、亀裂が走り、遂には翼が引き千切れてしまった。
滑空するための翼を失った飛竜の体が、垂直に落ちていく。
黄龍の背中に、吸い寄せられるように、真っ直ぐに、真っ直ぐに。
読んでくださって、ありがとうございます。




