7-43 逆転の一手
温室に嗚咽が続いた。マストゥーレの涙まじりの懺悔は、途切れ途切れではあったがレイ達にアフサルの真実を伝えていた。
どれだけ考えても分からなかった、アフサルの動機。
長男として育てられ、父親の傍に置かれ、王になると有望視されていた男がどうして父殺しをしなくてはいけないほど追い詰められたのか。
「あの子は。帝国に渡る前に、私の元を訪れ、身を隠すように伝えました。どういう事かと尋ねると、あの子は自分が見聞きしたことを、そしてやろうとしていることを私に話しました」
肩を震わせ、目から涙を幾筋も落としてマストゥーレは思い出す。自分の前に立った息子の絶望しきった表情を。信じていた父親という信仰が地に落ち、踏みにじられ、打ち砕かれた事で、アフサルは底なしの谷底へと堕ちたのだ。自らの行いこそが、正しいと信じ、周囲を破滅へと導く、狂信者と同じだ。
「私は止めようと喉を涸らしました。でもあの子は言ったのです。父を殺す。父に未来を殺される前に、死んでもらうのだと。アフサルは何の躊躇いもなく、そう答えました。あの時の表情は、ワシャフの酷薄な顔とそっくりでした」
話を聞いていたレイもダリーシャスも呆然としていた。
おそらくマストゥーレの話に嘘はないのだろう。本当にアフサルはワシャフの子であり、そしてファラハはアフサルが自分の子ではないと知り、その上で育てていた。父性からではなく神前投票における票の確保に過ぎなかった。自分が王になれば、息子ではないと公開し、王位継承権をはく奪し、抵抗した時には殺す事すら考えていた。
偽りの愛情が崩壊した時、アフサルの中でどれだけの憎悪が誕生したのか。それは彼に父殺しを、デゼルト国を崩壊へと導くだけの大きな衝動を与えた。
「……それだけ追い詰められていたというのか、兄上は」
「あの子が。アフサルが貴方の兄でないと知りながら、貴方は兄と呼ぶのですか」
問いかけに、ダリーシャスは当たり前だと返した。
「同じ父の血が流れておらずとも、共に過ごした時間は我らに兄弟という繋がりを与えた。その繋がりがある以上、俺はアフサルを兄と呼ぼう」
きっぱりと言い放ったダリーシャスにマストゥーレは涙の勢いを増した。もっとも、それは悔恨の涙では無い。一人、血に染まった茨の道へ進む、国を滅ぼそうとする息子を兄と呼ぶ者が居てくれたことへの感謝の涙だった。
そして、それだけに彼に託すしかないのだ。
「お願いです、ダリーシャス様。どうか、どうか。あの子を止めてください。あの子の憎悪が国を燃やし尽くす前に。……あの子を兄と呼ぶ、貴方にしか頼めない事です。卑怯だと承知です。貴方が、王子として、兄弟としてアフサルを止めるしかないと分かりながら頼む、この身を罵ってくれても構いません」
「……それがどのような意味なのか、ご理解していますか。いまの兄上を止めるには、おそらくどれだけの言葉を費やしても足りません。それこそ……命を絶たねばなりません」
マストゥーレはハンカチを取り出すと、涙を拭った。丸めた背筋をしゃんと伸ばし、腫れた瞼を押し上げてダリーシャスを真っ直ぐに見つめた。
「構いません。それがあの子の抱えた絶望を降ろす、唯一の手段ですから。その為なら、この身を如何様にもお使いください。どんな協力も惜しみません」
「……承知しました」
自らの過去と息子の絶望という重たい話を一気にしたせいか、マストゥーレはダリーシャスの返事を聞くなり倒れこむようにテーブルへと手を着いた。
元々、体の弱かった所に度重なる劇薬の服用のせいでマストゥーレの体はボロ布を裂くように脆い。クトゥスが呼んだ医師や使用人たちに運ばれていった。その時も、うわ言のようにアフサルを止めて欲しいと繰り返していた。
温室の主がいなくなったことで、レイ達もその場を後にした。宛がわれた一室には《ミクリヤ》とラシード、《神聖騎士団》の面々が待っていた。
「その顔からすると、随分と本質に迫る話をしてきたようじゃな」
見た目とは裏腹な年老いた老人のような喋り方をするマクスウェルにダリーシャスが頷くと、彼はマストゥーレがした話をそのまま全員に伝えた。
誰もが驚きと嫌悪から言葉を無くす。一人の女性が抱えるには重すぎる過去。そして、母として息子を想う気持ちに涙ぐむ者もいた。
特にオードヴァーン家に仕えるナキ家のラシードには衝撃的すぎる内容だ。アフサルがオードヴァーン家の血が流れていないというのは青天の霹靂。予想すらしていなかったのか、口を半開きにして硬直していた。
「……以上がマストゥーレ様から伺った兄上の真実だ」
喋り疲れたのか、水差しを手ずから傾けコップに注ぐダリーシャス。話を聞くのが二度目であるレイを除いた者達は誰ともなく視線を合わせていく。皆、言葉を失っていた。
水を飲む音だけが響く室内。沈黙を破ったのはマクスウェルだった。
「其方の兄の憎悪。凄まじくもあるが正当と言える。天に唾するような行為だが、人として共感できなくはない」
男たちの欲望に巻き込まれた母から生まれたアフサル。彼へと注がれていた称賛や親愛、期待が全て幻想だと思い知らされ、自らの在り様そのものを根底から覆された。その衝撃は計り知れず、それゆえ復讐を決意したのだろう。それを否定し、詰ることは誰にもできない。
しかし、彼は自らの復讐心を晴らす為にその手を汚している。血と悪逆に染められた両手で、王冠を掴もうとしていた。
「ダリーシャス王子。其方は兄の復讐を止めるのか。それとも放置するのか」
「無論、止める」
コップを机に戻したダリーシャスは居並ぶ一同を前に堂々と宣言した。
「兄上の憎悪は正しくも間違っている。このまま行けば、国を、民を、何もかもを燃やし尽くす。何もかもが燃え尽きた大地から新しい国を兄上は生み出すかもしれない。それは欲望と裏切りと悪辣が澱のように重なったいまのデゼルト国より、ずっとマシな国かもしれない。だけど、その道程に転がる屍を、俺は許容できない」
ダリーシャスは自分が綺麗ごとを言っていると自覚していた。
アフサルが作り出す国は、将来に渡って多くの人間を幸せにするかもしれないと予感していた。どれだけ憎悪に突き動かされようとも、アフサルの手腕は優れている。この状況を作り出した事が、皮肉にも証明していた。自分では、こうも望みどおりに状況を作りだせない。おそらく、アフサル以外、誰にも為しえない、ある種の偉業だ。
それでも、同じ王族として許せないことがあった。
「王とは、時に非情な決断を下す必要がある。少数の民を見捨て、多数の民を生かす政策をしなくてはいけない。だけど、私欲にかられ、民の死を許容する者だけは王になってはいけない。自分の憎悪を晴らすためだけに民を戦争に巻き込もうとしたアフサルを、俺は兄として認められても、王とは認められない」
自分がアフサルを超える人間だと、口が裂けても言えない。彼の立場になったとしても、自分が同じように出来たとは思えない。父やナリンザの目を盗み帝国と独自の交渉を纏め、十四氏族の反主流派へ根回しをするなんて離れ業、とうてい無理だ。
それでも、弟として、兄を止めたかった。
「兄上を、アフサル・オードヴァーンを俺は止める。そして、今回の騒動がオードヴァーン家の人間が起こした事である以上、俺はその責任を負い、国を立て直す為にも王になる。そのために、皆に協力して欲しい。どうか、俺に力と知恵を貸してくれ」
頭を下げ、頼み込むダリーシャスの肩にレイは手を置いた。
「僕がこの国に来たのはあんたを王様にするためだ。それは変わっていないよ。あんたが王様になるまで、どこまでも付いて行くよ」
レイの意思表明にリザ達が続いた。
「レイ様の望むままに。……そして、何より私もそれを望んでいます」
「そうだよね。ここまで来て、いまさらバイバイなんて、そんな悲しい事は言わないよ」
「乗り掛かった舟よ。行ける所まで行きましょう」
「むずかしいことはよくわかんないけど、みんながいるから、だいじょぶだよ」
《ミクリヤ》のメンバーが言うと、今度はローランが《神聖騎士団》を、そして法王庁を代表して口を開いた。
「前にも言った通り、法王庁は今回の事態を重く見ている。デゼルト国の混乱を一刻も早く平定するため、通常以上の介入を行う覚悟だ。ワシャフ・プラティスでもアフサル・オードヴァーンでもなく、貴方への力添えをするのは、法王庁にとって最良の結末となり得るからです」
一拍開けるとローランはいつもの締まりのない笑みを浮かべ、
「個人的にも貴方に協力したい。貴方なら良き王になると思いますから」
「なんじゃい、そのふわっとした言い方は。『聖騎士』を名乗るなら、もっと厳かな言い方をせんか」
マクスウェルの野次にそこかしこで、くすくすと笑い声が上がった。それが治まると、全員の視線が最後の一人、ラシードへと向かった。
「僕はナキ家の人間です。オードヴァーンの家名を背負う方の側に居る事を最上の誉れとしております。どうか、お側に置かせてください」
「……すまん、皆。恩に着るぞ」
頭を深く下げたままダリーシャスは涙を一滴落とした。部屋の絨毯に吸い込まれたそれを、誰もが見て見ぬふりをする。
頭を上げた時、ダリーシャスの顔には泣いた跡はなく、覚悟を決めた男の強い意思が宿っていた。
「それで、ダリーシャス様。アフサル王子を止めるっていうのは分かったけど、何か考えはあるのかしら」
シアラの問いかけにダリーシャスはゆっくりと首を横に振った。
「そんな物は無い。まったく思いつかない!」
「力強く、阿保な事を言わないでよ。……ああ、先行きが不安だわ。乗り掛かった舟が実は泥船で沈没寸前だった、ていう訳なの」
「そんな事は無いぞ。俺には、頼りになる者がこれだけ居るのだ。妙案の一つや二つ、直ぐに出るさ」
ダリーシャスの根拠のない、それでも力強い言葉に全員が仕方ないと笑った。
「それじゃあ、まずは状況の整理をしようじゃないか。すまないが、国の地図はあるかな」
マクスウェルが進行役を買って出ると、ラシードに尋ねた。少年はガヴァ―ナを出る際に背負っていた鞄からデゼルト国の全体地図を机に広げた。
レイ達は地図の周りへと集まり顔を突き合わせる。
「現状、デゼルト国は二つの勢力がぶつかろうとしている。首都を制圧しているワシャフ勢力と、ガヴァ―ナで旗揚げしたアフサル陣営だ」
言いながら、マクスウェルはガルド硬貨を地図の上に置いた。それぞれがワシャフとアフサルを表しているのだろう。
「この二つが近いうちにぶつかるのは避けられまい。およそ四万の軍と二万の軍だが、この数は信用できない。ガヴァ―ナを脱出してから一週間。激突するまでにもまだ時間がある。両軍、数を増やすかもしれない。とはいえ、勝敗は火を見るより明らかじゃな」
マクスウェルの指がワシャフの硬貨を弾いた。机から滑り落ちた硬貨が絨毯の上に落ちる。
「どう足掻いても、ワシャフの軍勢は負ける。こればかりはどうやっても覆らんだろうな。その理由、レイ君。其方はどう思うかな」
急な問いかけにレイは面喰うも、頭に思いついた事を口にした。
「竜騎兵……の存在ですか?」
「正解。大空を舞う竜騎兵は帝国における、一つの切り札。例え五騎しか居らずとも、各々が一騎当千、いや一騎当万とでも呼ぶべきか。それほどまでに厄介なのだ。ワシャフの敗北はもはや必定だ」
まるで預言者めいた確信的な物言いだったが、誰も否定は出来なかった。それだけ、エルドラドの常識において竜騎兵の存在が絶対なのかとレイは理解した。
「となると、アフサル王子がワシャフを討ったとなると、こちらにとって厄介な事になる。それは何故だと思う、ダリーシャス王子」
「こんな時に謎かけか。趣味が悪いぞ、マクスウェル」
ローランが注意すると、マクスウェルはしまったとばかりに後頭部を掻いた。
「すまん、すまん。教鞭をとっていた時の事を思い出してついな。まあ、それはともかくとしても、これぐらいは分かってくれんと後々で苦労するぞ」
「分かっている。……ワシャフ伯父を討てば、兄上の名声は高まる。十四氏族を監禁し、首都を制圧していた反逆者を討った英雄としてな」
「その通り。英雄というのは性質が悪い。どれだけの悪行を積んでおっても、どれだけ非道な事をしたとしても、どれだけ民に血を流させても、英雄がした事だと民衆は甘くなるし、権力者たちはおこぼれに与ろうと群がる。そうなれば、いくらお主がアフサルの倫理に反する行いを非難した所で、誰も聞く耳を持たない。お主がアフサルを討ったとしても誰も認めてはくれん」
「なら、どうすればいいのかしら、マクスウェル様。アフサルを英雄にしないために、ダリーシャス様は何をすればいいの」
シアラの問いかけにマクスウェルは事もなげに答えた。
「簡単じゃ。ダリーシャス王子にも英雄になってもらうのだ」
「正気なの? 今のダリーシャス様に付き従っているのは、ここに居る十数名だけよ。その戦力でワシャフの大軍を相手取るというの?」
自分が数万の軍勢を相手に戦う所を想像してレイはゾッとする。考えただけで、背筋が凍りつく状況だ。いくらローランが居ると言っても、どんなことにも限度はあるのだ。
ところが、マクスウェルは違う違うと苦笑を浮かべつつシアラの言葉を否定した。
「誤解させてスマンかったが、儂が言いたいのは別の事だ。ダリーシャス王子。其方がやるべき事は、両軍がぶつかり合う間に、首都を奪還する事だ」
「首都の奪還だと」
驚きが波紋のように広がる。マクスウェルはデゼルト国の首都であるオーマットを指で押さえつけながら説明する。
「其方が首都を解放すれば、民衆はアフサル王子の手で解放されたのではなく、オードヴァーン家兄弟の手によって解放されたと認識する。さすれば、ワシャフの反乱を鎮めた功績は二分……とまでは行かなくても、それなりになるはずだ。それにもう一つ、首都を解放する意味はあるぞ」
持って回した言い方に反応したのはシアラだった。
「拘束されている十四氏族の族長たちを解放するのと同時に、味方に付くように説得できる」
「その通りだ! 戦力で圧倒的に劣る儂らが、アフサルと真っ向から戦うのは不可能じゃ。だからこそ、強力な権力者を味方に付け、その上でこれがアフサル王子の陰謀だと弾劾し、王子の身分を剥奪させる。それ以外、手段はないと儂は愚考するぞ」
確かに、マクスウェルの策は可能性があった。首都を解放することで民衆からの名声と、十四氏族の族長たちから信頼。そして同じ目線に立つことで、堂々とアフサルを糾弾する資格が手に入る。
だけど、幾つか避けては通れない問題がある。レイが手を上げ、その一つを口にした。
「ちょっと待ってくれ。アフサルとワシャフがぶつかっている間に首都を奪還するって言ったけど、ワシャフが首都を離れて戦争するとは思えない。だって、竜騎兵がいるんだ。普通なら首都に篭って戦うだろ」
軍事に関する知識がないレイでも、戦争において同レベルの軍事力同士なら数が物をいうぐらいは知っている。都合よく野戦に打って出るとは限らない。むしろ籠城戦をする可能性が高いのではないか。
ところが、その可能性をリザが否定した。
「だからこそです。籠城戦となれば、竜騎兵の独壇場。空からの攻撃を防ぐのは難しいです。むしろ、まだ平地で戦った方が的を分散できるかもしれません」
「うむ。むしろ、籠城戦をすればするほど、街に被害が出てしまい、民衆から突き上げを食らうだろう。首都を戦争に巻き込むのかと糾弾されれば、中から瓦解する。それを避けるためにも、ワシャフ陣営は分の悪い野戦を仕掛けるしかあるまい。流石に最低限の兵は置いているだろうが、それぐらいなら掻い潜って潜入もできよう」
「だとすると、問題なのは首都を解放した後。兄上を糾弾する事だな」
重い口調でいうダリーシャスは厄介だとばかりに呟いた。
「兄上のした裏工作の、証拠が足りない。今の所、マストゥーレ様の証言のみだ。それだけでは十四氏族を説得し、兄上を糾弾するには足りんぞ」
体を壊した女性の言葉をどれだけ受け入れるのか。それこそ、ダリーシャスが兄を貶める為だけの策略だと言われれば、信じてもらえなくなる。
「むう。ワシャフを討った功績自体は偽りでは無い。反乱を鎮圧した王子を追放するには十四氏族の同意が必要だろうが……流石に全員を納得させるのは難しいだろうな。……かといって今から新しい証拠を探すにしても、時間が足りないぞ」
こればかりはどうしようもないとばかりに悩むマクスウェル、シアラたち。そんな中、話をつまらなそうに聞いていたエトネがレイの服を引っ張った。
「どうかしたかい。もしかして、飽きたかな」
「うん。おはなし、むずかしい」
ストレートな言葉に苦笑してしまうレイ。レティを呼び、二人で遊んでおいでと言う。
「分かった、ご主人さま。それじゃ、行こうかエトネ」
「うん。……みんなはなんで、あんなにむずかしいかおをしてるの?」
「え? そうだね……いまね、ダリーシャス様が戦うために、強い人を味方にしようとしているの。でもね、そのための材料が足りないんだよね」
レティがエトネに分かりやすく噛み砕いて説明すると、エトネが何とも言えない表情で、
「やっぱり。ダリーシャスさま。ともだちがすくないんだ」
「いや、そういう事……でもあるのかな?」
案外的を射ているのではないかと納得しかけたレティ。するとエトネが何気ない口調で言う。
「いっぺんにともだちをつくるんじゃなくて、まずひとりつくるのがこつなんだよ」
それはエトネなりの経験から来る言葉だった。ハヅミという友達を作った時の事を思い出しながら自分なりにダリーシャスを励ました。
「そりゃ、確かにその通りだ。一遍に友達をつくるんじゃなくて、まず一人に絞った方が簡単……だよ……な」
部屋を出て行く二人を見送り、エトネの単純だが間違っていない言葉に一人頷いていたレイだが、言葉が途切れて行く。
急速に、頭の中で幾つもの情報が繋がり出した。それはバラバラだったジグソーパズルが繋がり、一つの絵を生み出すかのようだった。
「……そうか。十四氏族の族長全員を味方にしようとするから難しいんだ」
リザとシアラが不思議そうにレイを見つめる中、レイは思いついた事を全員に説明した。それは驚きを持って迎え入れられたが、現状、打てる手としては最善手のように映る。
「なるほど。それは盲点だったな。利害関係が入り乱れる十四氏族。彼らを説得するのは不可能に近い。いくらアフサルの非を訴えた所で、彼らに利があるならば、黙殺する恐れもある。だが、かの御仁にはその理屈は通るまい。いや、通してしまえば、御仁が居る意味がなくなる。国を乱した元凶を野放しにはするまい」
マクスウェルが己の顎を撫でながら、興奮したように言う。
「儂らが救出するべきは二つ。首都の解放と、そしてなにより、現王でもあるカリバン・デゼルトの救出。そしてかの御仁を説得し、アフサル王子への審問の場を開かせるのだ」
読んでくださって、ありがとうございます。




