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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第7章 熱砂の国
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7-15 悪魔の巣 『前編』 改訂版

※ 戦闘シーン、一部変更。

 悪魔の巣という単語の持つおどろおどろしさに、レイは思わず唾を飲み込んだ。砂漠の地図というのは大雑把な情報しか記されておらず、オアシス間の距離ぐらいしか正確性は無い。そんな地図の一部が血の染みの如き赤黒さに染まっており、不気味さを加速させる。


「悪魔の巣というのは、アルビノ砂漠のほぼ中央に位置する、盆地のような場所の事を指します。楕円形の形をしたこの盆地の中は迷路のように入り組み、正確な地図は存在しません」


 ラシードが取り出した幾つかの地図を繋げていくと、悪魔の巣の全景が分かる。少年の言う通り、楕円の形をした、赤黒い染みがアルビノ砂漠に存在した。不思議なのは、赤黒い染みは中心部に向かうほど濃くなっている事だ。レイが指摘するとラシードが答えた。


「色の違いは、悪魔の巣の危険度を表しています。中心部に行けば行くほど、危険だということです。それというのも、悪魔の巣の中心には深層まで続く迷宮の入り口があるからです」


 迷宮は大きく分けて三つの層に分かれている。上層、中層、下層と上から順に呼ばれており、迷宮によっては下層、ないしは中層が存在しない場合もある。そんな中、世界中に点在する迷宮の中で、四つ目の層、深層と呼ばれる区域を持つ迷宮が僅かながらに存在する。


 アルビノ砂漠の迷宮も、その一つだという事になるのだが、どうして自分はこうも深層と縁があるのかとレイは辟易してしまう。


 公式に追加されたばかりのネーデの迷宮。アマツマラで巻き込まれたスタンピード、その発生源となったメスケネスト平野の迷宮もギルドが確認している深層がある迷宮だ。そして、不本意ながらも足を踏み入れる事になったシアトラ村の迷宮。あの迷宮にも深層はあった。


 シアトラ村の迷宮は、フィーニスが暴れた事で崩壊した結果、深層が消えてしまったのでカウントされていないが、現在五つしか見つかっていない深層迷宮の内、これでレイは三つと関わる事になった。


「アルビノ砂漠の迷宮は全ての迷宮の中でも屈指の難度を誇っています。というのも、この迷宮内でも、魔法が使えないからです」


 それは全ての冒険者に取って致命的な問題である。


 魔法というのは、何も煌めく爆炎で敵を薙ぎ払うばかりではない。太陽なんて無い地下を照らす光となり、消毒する手間がない清らかな水をだせ、死の淵に揺蕩う仲間を引き戻すことだってできる。それらは、確かに他の道具で代用できるかもしれないが、迷宮に持ち込める荷物の量には限りがある。


 極端な話、魔法使いの精神力が切れさえしなければ、魔法は多岐に渡って有用なのだ。それを封じられるというのは、冒険者に取って非常に苦しい話だ。


 先の偵察兵との戦闘も、実のところ危うい賭けだった。敵がリザの潜伏に気がついたり、手練れで反撃を仕掛けてきた場合、彼女が傷を負っても回復魔法が使えない。ポーションの数は足りているが、ポーションの回復量にも限界はあるし、何よりポーションは使えば使うほど耐性が出来てしまう。連続で使用すれば効果が薄くなっていく。


「ですので、ギルドはアルビノ砂漠の迷宮を放置しており、この辺り一帯はモンスターの占領地となっております。上級、超級モンスターが確認されており、中には超弩級モンスターも確認されたとか」


「超弩級モンスターなんて、伝説の存在じゃない。そんなのが迷宮から這いずりだしているっての」


 シアラが呻いてしまうのも仕方ない。超弩級モンスターは超級をも超える、伝説級のモンスターたちへのランクだ。ギルドが作り出した等級は、人間が討伐可能の範疇においてのランク分けであり、そこから逸脱する超弩級はまさに規格外の化け物となる。討伐には最低でもA級冒険者一名以上を含んだ、五つ以上のパーティーの連携が必要とされている。


「今回、僕が提示したいのは悪魔の巣。その中でも警戒度が最も低い、境の部分です」


 少年が指で示すのは赤く染まった部分の境だ。


「追撃部隊が横に広く展開しているとはいえ、その範囲には限界があるはずです。なにより、彼らも悪魔の巣の危険性は承知している。迂闊に兵を近づけさせて、モンスターを呼び寄せるような真似はしないはず」


「つまり、悪魔の巣の付近なら偵察兵を配置していないはず、という事ですか」


 リザの言葉にラシードは首肯する。確かに、ラシードの推測にも一理ある。三百という数でもこの広い砂漠を全て補う事は不可能だ。つまり、こちらが選ぶであろう進路を予測して、そこを中心に兵を展開するしかない。そこでこちらが普通なら使わない危険な道を使う事で、相手の裏をかくという作戦だ。


 問題は、このルートが敵ですら敬遠するという危険な場所だということだ。


「君の言いたいことは分かったけど、この境の部分は安全なのかい。いや、そもそも悪魔の巣よりも外にモンスターは出て来ないと言い切れるのかい」


「……それは……何とも言えません。赤く塗られた場所の意味は、モンスターの目撃例が多い場所になります。つまり、赤くなっている場所の近くも、モンスターが出没していても不思議ではありません」


 例えば、赤く染まった部分の基準が年間で百件だとして、色の塗られていない部分での目撃例が五十だとしよう。確かに、赤く染まった部分は危険だ。年間で百件を超える目撃例があるのだ。誰が聞いても危険である。だからといって、年間で五十件の目撃例が危険ではないという事には決してならない。


 何しろ相手は上級、超級の類だ。一体でも村一つを滅ぼすことは簡単に行える怪物たちを相手に、北へと向かわなくてはいけないのだ。


 ラシード自身、その危険性は承知しているようで、最後の判断を主に託した。


「王子。ご決断を。悪魔の巣を掠めるように進むのか、追撃を覚悟して敵陣を突破するのか。お決めください」


 ダリーシャスが目頭を指で揉む。おそらく、相当悩んでいるのだろうとレイは推測した。どちらを選んでも、危険度は高い。もしかしたら、犠牲者が出るかもしれない。だけど、ここで悩んでいる時間は無いのだ。偵察兵がいつまでも帰って来ないのを不審に思った捜索隊が編制されるかもしれない。何より、帝国の動向が不明だ。いまにも湾岸に帝国の艦隊が押し寄せてもおかしくはない。


 無言で照らしつける太陽の下、じりじりと焦燥感で身を焦がす中。ついにダリーシャスは決断した。


「どちらを選んでも、厳しい道程なら、俺はより困難を選ぼう。悪魔の巣の近くを通り、北へ抜けるぞ」


 ダリーシャスの言葉に、ラシードたちは御意のままにと返し、すぐさま計画が練り始められる。悪魔の巣の方角に進むというのは、針路を北西にずらし迂回するような形となるのだ。当初の計画では砂漠を一週間から十日で突破するはずだったが、これで幾らか伸びたことになる。それに悪魔の巣付近には水や食料を補給できるオアシスはない。


 幸い、積み込めるだけの予備をレイ達の馬車に乗せているので、しばらくは無補給でもどうにかなる。あとは、超級モンスターと遭遇しないようにと運頼みになる。


 捕えた偵察兵の塞いでいた耳と目を解放した。男たちは怯えた様子でラシードを見つめた。


「これから、貴方たちを解放します。ですが、駱駝と食料、それに武器や道具の類は此方で預からせてもらいます」


 代わりに出されたのは、一本の水筒だ。中は水が入っているが、それだけ。


「お二人でこの水筒を使ってください。それと、貴方達にはあちらの方に向かって歩いてもらいます」


 ラシードが指したのは南の方角だ。


「僕たちが見えなくなるまで、ずっと南に向かって歩いてください。僕たちが見えなくなったら、あとは好きにして構いませんよ」


 信じられないとばかりに男たちは顔を見合わせた。これも何かの罠ではないかと訝しがる。すると、ラシードが差し出した水筒の蓋を開け、水を少しずつ零していく。


「さあ、早く出発しないと、水が空になってしまいますよ」


 男たちは慌てて水筒をもぎ取ると、南に向かって一目散に走り出した。少年は二人に向かって告げた。


「僕らは悪魔の巣に向けて出発します。次に会ったら、命は無いと思ってくださいね」


 声は届いたのか、男たちは振り返ることなく南に進んでいった。


「良かったのかい? 馬鹿正直に生かして返した上に、僕らの進路を伝えるなんて」


「問題ありません。普通の人間の感性なら、悪魔の巣に向かうなんて話、信じませんよ。むしろ、少し頭の回る指揮官なら、これが罠だと勘違いしてくれます」


 偵察兵の体には傷らしい傷は無い。つまり、ほとんど戦闘することもなく、拷問されることなく、おめおめと捕まり身ぐるみを剥がされた上で解放されたのだ。そんな人間のいう事を素直に信じられない。むしろ、偵察兵たちがあらぬ疑いを向けられるだろう。


 そんな怪しい偵察兵の話を鵜呑みにする指揮官は居ない。頭から疑いを抱いて話を聞けば、部隊を悪魔の巣に向けて動かした隙を狙った作戦だと深読みするかもしれない。そうなれば、こちらに事は有利に運ぶ。偵察兵の配置を変えず、守りを固めてくれれば、追撃部隊の事を気にせずに進めるのだけれどと淡い期待をラシードは抱いた。


 年端の行かない少年の策略にレイは降参とばかりに手を上げるしかなかった。





 振り上げたコウエンの刃が、サンドセンチピードの足を防ぐ。長い胴体そのものが蛇腹のようにのたうち、細かい刃のような無数の足による攻撃は休む所を知らない。一瞬でも気を抜けば、刃はたちどころに自分を細切れにするだろう。


 しかし、それぐらいの攻撃はこれまでにも何度も浴びて来た。気を抜かなくても、完璧に防いでも防御できない攻撃は、この世に幾らでもある。それに比べれば、この程度の斬撃の嵐は、今のレイにとってそよ風に近い。


 刃を受け止める龍刀も伊達ではない。龍の体から生み出された龍刀は幾百の斬撃を浴びても、刃こぼれ一つ生まない。それどころか、サンドセンチビートの足がボロボロに削れてしまった。たまらず、敵は距離を取ろうとする。名前の通りムカデによく似た姿をしたモンスターの外皮は、昆虫系の類にもれず非常に固い。だけど、コウエンの刃はその固い外皮すら容易く切り裂く。距離を取るべく下がるモンスターに対して一気に距離を詰め、コウエンを振り下ろした。狙いはどこでもいい。重要なのは、固い外皮に覆われた内部が脆いという事だ。


 沈みこんだ刃の先から、レイは炎を送り込んだ。それだけで、サンドセンチピードの体は内部から侵食する炎に喰い尽くされる。これでは魔石の回収は難しいなと反省しつつ、あっという間に火だるまになった敵からレイは離れた。


「ふう。これで一体っと」


「主様、ボケっとしないで! まだ、終わってないわよ!!」


 息を吐く暇もなかった。シアラの言葉に振り返れば、リザとエトネがそれぞれ、上級モンスターであるサンドセンチピードを相手に足止めを行っていた。ロングソードでモンスターのクワガタのような牙を相手に戦うリザに、クロスボウを放ちサンドセンチピードの目を射抜くエトネ。二人とも一進一退の攻防を繰り返しているが、分が悪いのはエトネだ。まだ彼女のレベルでは上級モンスター相手に近接戦闘は厳しい。そして、彼女の切り札ともいうべき精霊召喚が、この地では使えないのだ。


「リザさんには僕が!」


 モンスターたちから距離を取っていたラシードが子供の背丈に合わせた槍を手にして果敢に戦いを挑む。しかし、相手は上級モンスターだ。撃ちあうどころか、リザの足を引っ張らないようにするので精一杯だ。ラシードの部下たちは、ラシードよりかはましだが、それでも弱いのは否めない。ダリーシャスはこの地で非戦闘員になってしまうレティとシアラ、それにキュイ達動物を守るべく後方で待機している。


 相対するサンドセンチピードの群れは五体。レイが一体倒した事で、残りは四体。すると、リザがサンドセンチピードの牙を手甲で受け止めたのだ。火花が少女の顔に降り注ぐ。


「はぁああああ!」


 気合一閃。リザはワザと噛ませたことで、サンドセンチピードをひっくり返すことに成功した。ムカデのようなモンスターの腹部は柔らかい。そこに向けて真新しいロングソードを貫くと、精神力を纏わせた。精神力は戦技へと昇華され、一つの現象を引き起こす。


「食らいなさい! 《風牙》!」


 ロングソードに巻き付いた風の刃が一気に解放される。至近距離からの一撃は、弱点を突かれたサンドセンチピードにとっては致命的で、胴体の半ばを吹き飛ばされた。


 その光景を横目で見ていたエトネは、手元に残っているボルトの残弾を数え、それらを使い切る勢いで次々と発射していく。雨あられのように止む事の無いクロスボウの猛攻だけど、全てはサンドセンチピードの甲殻に阻まれ、内臓へと届かない。


 しかし、エトネにはそれで十分だった。彼女が狙ったのは、サンドセンチピードの節、つまり体のつなぎ目である。均等に刺さったボルトのお蔭でヒビが入り、ちょっとした衝撃で関単に崩れるほど脆くなっている。つまり、そり立つ壁を蹴って高所から踵落しをしたエトネの一撃で、サンドセンチピードの体は真っ二つに千切れた。


 リザのみならずエトネも大金星を挙げる中、レイは残った二体を前に如何するべきか考えた。出来る事なら撤退して欲しいと望むのだが、同胞を撃たれた事に憤りを感じるのか、サンドセンチピードは威嚇の声を上げている。どうやら戦闘は継続らしい。


 だとしたら、逡巡している暇はなかった。激昂しているサンドセンチピードがラシードやその部下たちを襲おうとする前に、意識を此方へと引き寄せなくてはいけない。


「こっちに来い! 《留めよ、我が身に憎悪の視線を》!」


 発動したのは《心ノ誘導》Ⅱ。その効果は絶大で、ラシードたちに襲いかかろうとした敵は揃ってレイの方に突撃した。大地を這いずり回る姿に生理的不快感を催すが、理性で恐怖を縛る。レイはタイミングを見計らって大地にコウエンを突き刺した。


 いまにも牙や刃のような脚がレイを襲おうとした瞬間、サンドセンチピードの足元から炎が吹きあがった。コウエンの先端から噴き出した炎が地面を通って下から敵を狙う。吹き上げた炎の勢いでサンドセンチピードたちは火だるまになりながら、仰向けになった。えてして、昆虫系のモンスターは炎に弱い。巻き付く炎を消せずにもがくサンドセンチピードに対して、追い打ちをかける。


 左拳を固く握ると、炎鉄の手甲が打撃武器へと切り替わり、流し込まれた精神力が戦技へと昇華された。そして、レイは炎に包まれているサンドセンチピードに向けて拳を振り下ろした。


「止めだ、《砕拳》!」


 手応えはあった。自分の出した炎に巻かれるわけにはいかないと飛びのいたレイの前で、サンドセンチピードの体は停止して分解されていく。《崩剣》を使わなかったのは、相手に反撃の機会を与えないためだ。《崩剣》では傷口から崩壊していくため、どうしても反撃の機会があるのだ。その点、《砕拳》なら技が通れば、全体から砕けて行く。


 レイの目論見通り、サンドセンチピードの体は砂となって消えた。すると、背後で強烈な暴風と何かが蹴り飛ばされる炸裂音じみた物が聞こえた。振り返れば、火に巻かれた最後のサンドセンチピードが炎天の空へと舞い上がっていくのを視界にとらえる。


 どうやら、リザの《風ノ義足》Ⅱによる吹き飛ばしをもろに食らったのだろう。炎に焼かれて脆くなった体では、耐えきれかったようだ。ようやく戦闘が終わり、レイは一息つく。


 汗を拭うリザに向けて声をかける。


「お疲れ様。さっきは驚いたよ。ワザと相手の牙を受けるなんて」


 視線の先はリザの身に着けた真新しい防具だ。彼女の得意とする機動性を損ねないように、胴体や脚や手などの部位にしかつけていないのは、前の防具と同じだが、性能は比べるのもおこがましいほど違う。


「新しい防具はどうかな? 使いにくかったりしない」


「問題ありません。この連戦で、何度か攻撃が掠めたというのに、どれも物ともしません」


 上級モンスターの一撃を耐え抜いた手甲を、リザは誇らしげに撫でた。


「身に余る品を頂き、恐縮の限りです。……私なんかが、もったいないくらいです」


 リザとしては、もう少しグレードを落としても良かったのだが、レイがそれを承知しなかった。


「あんまり防具にケチると、いざという時頼りにならないだろ。……身を守ってこその、防具なんだから」


「……はい、分かりました」


 納得してくれたリザから、レイはサンドセンチピードの死体へと視線を向けた。飛翔穿や炎刃を浴びて原型をとどめていない死体だが、魔石はどうにか回収できたらしく、レティとエトネが道具袋に回収した魔石を放り込でいる。


 ラシードたちも大した怪我をせず、無事のようだ。レイは失った精神力を回復させるべく、ポーションの蓋を開けて煽った。液体が喉を通り、胃に収まると、途端に精神力が充填されたのを肌で感じる。


「これで本日五回目の戦闘か。……まったく、悪魔の巣とは名前の通り、厄介な場所だね」


 悪魔の巣方面へと進路を切り替えてから丸一日。レイ達は地図で言う所の、悪魔の巣との境目に到達していた。西の奥には砂丘では無い砂岩の迷宮が広がっており、高い丘から見下ろすと、ラシードの言葉通りに楕円形の盆地となっている。地上に這い出たモンスターたちの鳴き声が岩肌に響き、不気味なオーケストラを奏でていた。


 そんな悪魔の巣との境目を進むこと一時間のうち、もう五回もモンスターの襲撃にあった。いまの所、全て上級モンスターなのが救いといえば、救いだ。


 一行の中で上級モンスターと互角に戦えるのはレイとリザ。次いで、足止めぐらいなら出来るのがエトネで、ラシードとその部下ははっきり言って足手まといである。魔法の使えないレティやシアラと共に荷物番をしてもらいたいのだが、あまり言う事を聞いてはくれない。


「このままだと、日が暮れるまでずっと戦闘だよ。……いや、もしかしたら、日が暮れても戦闘が続くかもしれないな」


 境目でもこの頻度で戦闘が行われるのだ。更に西、悪魔の巣に近づけばどうなるかは考えるまでもなかった。しかし、今更道を変える事も出来ない。レイ達は慎重に進むしかなかった。


 ―――だけど、運命はどこまでも非情だ。


 ずしん、と。リザの飛翔穿が大地を揺るがすような音が響く。それも一度や二度では無い。何度も何度も繰り返し起きる地響きに全員が身構える。


「ねえ、ちょっと。この地響き、近づいていない!?」


 シアラの言葉が正しいのを証明するように、レイ達の行く手を遮るように、巨人が姿を現した。


 全長は十メートルはあるだろうか。三叉の槍を手にした、人のような形をしたモンスターの顔には、目が一つしかなかった。


 その特徴的な姿で、レイはモンスターの正体に気が付けた。


「あの一つ目はキュクロプス! 超級モンスターかよ!」


 本日六度目の遭遇戦が幕を開ける。

読んで下さって、ありがとうございます。


次回の更新は六日月曜日頃を予定しております。

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