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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第6章 水の都
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閑話:受付嬢の艱難Ⅰ

 アイナは自然と早くなる呼吸を抑えようと、呼吸に意識を合わせた。肺で吸うのではなく、お腹を膨らませて呼吸を取り入れる腹式呼吸。かつてパーティーを組んでいた仲間が教えてくれた緊張をほぐすやり方だ。


 問題はこの場所で行うと、湿気を多く含んだ、濁った空気を吸う事になる点だろう。


 冷たい岩肌は風で削られたかのようなおうとつを作り、淡いヒカリゴケが日光の届かない地下世界を照らす。


 人間は適応する生き物と言われているが、新鮮な空気と温かい太陽が無ければ精神に失調をきたすかもしれない。ギルドでは冒険者の心のケアとして日向の散策を本気で推奨している。


 そう考えると、冒険者とは人の在り方としては随分と歪な職業だとアイナはひとりごちる。多くの冒険者が太陽から背を向け、地下へ地下へと潜っていく。命を賭けた探索で何が手に入るのは運否天賦。神が賽子さいころを振るかの如き運任せだ。手ぶらで帰って来るか、あるいはとんでもない幸運に出くわすのかもしれない。それこそ一攫千金のチャンスは誰にも平等に存在する。もっとも、その確率は限りなくゼロに近いが。


(だとしたら、あの冒険者はとんでもない幸運を手に掴みながら、それを取りこぼしたことになるのよね)


 アイナは半日前に血まみれの状態で駆けこんできた冒険者の事を思い出してた。


 本来なら、法王庁の本部がある聖都に向かっていた彼女が、地の底―――迷宮の中を歩いているのには理由があった。






 アイナが故郷ネーデを出立して二月が過ぎていた。十人を超す集団が徒歩のみで中央大陸を半周するという事を考えれば、決して悪いペースでは無い。すでに通過した都市の数は五を超え、旅程は半ばを過ぎていた。


 夏の中月の終わり、純血の魔人種アイナとその護衛を任された『紅蓮の旅団』ファルナとその班員、そして法王庁所属二級異端審問官ルリジオンの一行はカバナという都市に辿り着いていた。


 かつて、冒険王が興した国は彼の死後に起きた分裂によって地上から消え、それ以降も中央大陸は分裂と統合を繰り返してきて、現在は都市国家が乱立する地方となった。そんな中央大陸において、主要な産業となったのは迷宮だった。


『人魔戦役』の頃、『勇者』ジグムントと『魔王』フィーニスの激突により大陸の中央部が吹き飛んだ中央大陸。その衝撃は三百年経った今も色濃く残っている。消し飛んだ大地に海水が逆流し、内陸湾と呼ばれた中央部は魔力が乱れ海の底には凶暴なモンスターを垂れ流す迷宮が出来てしまった。いまも内陸湾は高位の冒険者が無ければ中心部分を超える事の出来ない危険地と言われている。


 影響は残された大地にもあった。二体の怪物の激突によって乱れた魔力の流れは迷宮を各所に生み出した。それも画一的な、同系統の迷宮では無く千差万別、難度も上にも下にも広い。都市の近くに迷宮が一つは必ずあり、中には三つも四つも迷宮に囲まれた都市もできてしまった。そういった経緯もあってか中央大陸は冒険者が多く集まる土地となった。


 また、モンスターの心臓部である魔石はいまの社会においても欠かせない燃料となっており、それを牛耳るギルドから齎される税金で都市は運営されていると言っても過言では無い。


 そのため、中央大陸ではギルドの長がそのまま街長として行政の長を務めている場合がある。


 ネーデもそうだったし、ここカバナも同様だった。街の地下に存在する迷宮が街を二つの意味で支えており、経済は潤っている。行きかう人々の中に冒険者が多く目立ち、軒を連ねる店の系統も冒険者向きが多くを占めている。


 そんなどこかネーデと似たような空気の中だと、アイナは故郷の事を思い出す。


 同僚たちは元気でやっているのか、上司だったハクシは今日も不機嫌そうにしているのか、かつての仲間だったフリオは大きな体を丸めて鋼と向き合っているのだろうかと、ついつい考えてしまう。


 ネーデを出てまだ二ヶ月しか経っていないのに、郷愁の念にかられてしまう。人よりも長命な魔人種にとって一月、二月は瞬きのように過ぎるのではないのかとよく聞かれたが、アイナにとっては違った。むしろ、周りが自分よりも早くに老い、死にゆく者達だったからか今日という日がもっと続けばいいと惜しむ気持ちがあった。夕日よ沈むな、月よ昇るなと念じていたぐらいだ。


 街に入ったのはちょうど夕日が沈む頃だった。前の街を出発してから十日以上も野宿が続いたこともあり、汚れ、少し臭う一行は素直に宿を取る事にした。


 六将軍から狙われているかもしれないと言う危険性はあったが、ここで体調を崩されて足止めを食らう方が厄介だとルリジオンが意見したのだ。


「順調とは言い難いですが、悪くない行進速度だと私は考えています」


 宿を取り、空腹で暴れる胃袋を押さえつけるために入った食堂は、迷宮の垢を落とそうとする冒険者で賑わっていた。どうにか十人以上が同時に座れる席を用意してもらい、注文を終えた直後にルリジオンが開口一番に切り出した。


「あと一月半もすればイプテン山脈の麓にある迷宮に辿り着くでしょう。例年の気象からすると、その頃はまだ雪が降りません。徒歩の移動でも問題なく辿り着くはずです」


 ルリジオンが警戒していたのは秋の下月頃になると降る雪の事だ。中央大陸の北側は南より一足先に雪が降る。


 冒険者にとって雪は厄介だ。


 移動速度が大幅に落ち、野宿の際に得られる食料が姿を消していき、何もしなくても寒さが熱を奪っていく。奪われた分を生成しようと体は栄養を寄越せと叫ぶ。


 一応、雪の季節ならではのメリットも無いわけではないのだが、この場合は割愛する。


 重要なのは平地を進む長旅で、徒歩での移動が中心となっているアイナ一向にとっては雪が降る前に聖都に辿り着きたいと言う事。そのためにはちゃんとした休息が取れる時には取るべきだとルリジオンとファルナの間で意見が一致した。


 アイナはちらりと隣に座るファルナと斜め前に座るルリジオンを見比べた。飲み水しか置かれていない机の上には大陸の地図が並べられ、ルリジオンとファルナ、そしてお目付け役兼相談役を任された狼人族ヴォルフのカーティスが額を突き合わせて今後のルート決めをしている。


 アイナには目下の所、一つ悩みがあった。


 それは年下―――アイナからすれば大抵の人間は年下だが―――の少女二人の仲が宜しくない事だ。


 ファルナは15歳という若さで大手クランの一つ、『紅蓮の旅団』の班長、つまり自分のパーティーを持つことを許された。団長の娘という背景を抜きにしても、ファルナにはその過酷な大役をこなせるだけの器量があるとアイナは旅の間で感じていた。


 ルリジオンはファルナの一つ上の若さで二等異端審問官を務めている。13神への苛烈な信仰と、異端に対する行きすぎた暴力行為を辞さないという欠点はあるが、彼女は旅の間も暇を見つけては神に祈りを捧げ、困っている人間を見つければ法衣が汚れるのも構わずに助けるような、根が善人で素直な子だ。


 そんな二人を軸として、アイナの護衛任務は行われているため、両者の関係が不仲だったら、それだけ失敗する危険があると言う訳だ。最年長のアイナとお目付け役であるカーティスは二人の仲をよくよく観察して、一つの結論に達していた。


 ファルナとルリジオンは仲は悪くないのだが、良好とも言えなかった。


 幾つか理由があるが、一番の理由がこの護衛任務のきな臭さにあった。そもそもの大前提としては、三百年ぶりに活動を再開した六将軍を撃退したアイナを敵の手に渡さず、逆に迎え撃つための囮として使うために聖都へ護衛しているのだ。当然、道中で襲いかかってくる可能性も無い訳じゃない。


 だけど、ここに来るまで数度の戦闘はあったが、どれもコロニーから外れた野良のモンスターや、野盗程度。アイナ達は魔人種に襲われることなく、順調にここまで来たのだ。


 無事に到着したことをファルナが単純に喜べるような性格なら問題は無かった。だけど、彼女は元からこのクエストに裏があると睨んでおり、この静けさが疑念に余計な拍車をかけていた。ありていに言えば、ルリジオンを疑っているのだ。


 ファルナ自身は自分が疑っていることは隠そうとしていたが目つきや、言葉の調子、そして行動の端々にそういった空気は滲み出る。二月も続ければ、周りにもばれてしまう。


 観察を続けていたアイナにも、年の近い団員たち、そして何よりルリジオンにも気づかれていた。


 ここでルリジオンが不満の一つでも言ってくれれば、何かしらの変化が起きたのかもしれない。だけど、彼女は異端審問官。鉄の精神を持つ信仰の徒。不満何て一言も口に出さず、ただファルナから距離を取っていた。


 そのためこの旅の道中、両者の中に出来た溝は埋まることなく、深くなっていくばかりだった。


 ファルナもルリジオンも性根は悪い子ではない。二月の旅と、一月半の同棲を経てアイナはそう結論付けていた。そんな二人がこのまま事務的な、仕事の依頼人と請負人の関係で終わるのを忍びないと思っていた。


 仲を取り持とうと二人に話を振ってはみるが、


「あ、ビッグロックが空を飛んでいる!」


「そうだね」「そうですか」


「……うわぁ! このシチュー、絶品ね!」


「そうだね」「そうですか」


「……ほ、ほら。夕焼けが綺麗よ」


「そうだね」「そうですか」


 と、にべもない態度を返され、アイナの心は折れかけていた。ファルナは初めての班長という大役に加えて、何か裏のあるクエストに固くなり、ルリジオンは時折姿を消しては何かの工作をしたかのような振る舞いをみせていた。


 これでは両者の溝は埋まることは無かった。


 食事が届いても、向き合って座る両者の間は無言で、反対側についている『紅蓮の旅団』メンバーの会話は星が煌めくように輝いていた。


 正直、そっちに混ざりたいなと思いつつも、アイナは今日も話を振ってみる。


「そういえば、『紅蓮の旅団』って冬ごもりはどうするつもりなの?」


 雪の話が出た事もあり、ふとアイナは冒険者にとっては一般常識でもある内容を尋ねた。すると、予想外な事にルリジオンの方から口を挟んできたのだ。


「……冒険者の方も冬眠をなさるのですか?」


 素っ頓狂な質問にファルナはアイスブルーの瞳を丸くさせた。他のメンバーも似たような反応を示したので、ルリジオンは自分が何か失言したのかとおろおろした。落ち着きなく瞬きが繰り返されると、彼女の隣に座るカーティスが助け舟を出した。


「冬ごもりというのは、冒険者の冬の過ごし方に関する隠語のようなもんです」


「隠語? それはどういう意味なのでしょうか」


 カーティスは説明を続けようとしたが、机の下という死角から襲った一撃を浴びて言葉を止めた。位置的には正面に座るアイナが、素知らぬ顔で水を飲んでいる。ただコップを握る指がファルナの方を向いていた。


 ジェスチャーだけで意味を理解したカーティスは、


「……それじゃ、お嬢。説明、お願いします」


「アタシ? ……まあ、いいけどさ」


 急に話を振られたファルナは食事の手を止めた。ルリジオンが真剣な態度で視線をファルナに向けると居住まいを正した少女の説明が始まった。


「アンタが言った通り、雪の時期は移動がままならくなる。平地は雪で覆われ、海も場所によっては氷で通行止め。何処かに定住して迷宮に潜っている冒険者にとっては関係ないけど、アタシらのように世界各地を渡り歩く冒険者にとっては厳しい季節になるんだ」


 冒険者は大別すれば二種類に分かれる。何処か一カ所に拠点を構え迷宮探索を専門とする冒険者と、世界各地を渡りながらクエストをこなしていく冒険者。『紅蓮の旅団』は後者に属するクランだ。


 主な仕事は街から街へ運ばれる荷の護衛や、要人の警護。時にはどこかの国軍の教育も行っている。そのため、活動範囲は広くクラン内で複数のパーティーが別々に活動をしている。ファルナ班もその一つだ。


 そんな冒険者にとって冬は実に厳しい。移動がままならなくなるだけで、冬の間は一気にクエストの数が減るのだ。収入は激減する。そこで渡りの冒険者は冬の間は別の事を行う。


「どこかの迷宮近くの宿を冬が終わるまで借り切って、その迷宮に入り浸るのさ。冬の間だけ篭るから冬ごもりって呼ぶのさ」


 冬ごもりのメリットは色々あるが、一番はレベルアップを集中的に行える事だ。世界各地を飛び回ると言えば聞こえはいいが、裏を返せばそれだけ迷宮に潜る時間は少なくなってしまう。冒険者のレベルを手っ取り早く上げるにはモンスターを倒す事だ。そうしなければ冒険者は強くなれない。


「『紅蓮の旅団うち』じゃ、秋に入る前から調整が行われて、各地に散っている班達の距離とか位置、それに抱えているクエストの量とかから、集まりやすくてなおかつ難度の幅が広い迷宮を選んで、その近くの街に集合。そして冬の間は潜るようにしてるのさ。……そういや、そろそろ決まる頃か? その辺どうなってんのよ、カーティス」


「……さあな。まだ聞いていない」


 そうなのかい、と納得したファルナだが、アイナはあれと思った。狼人族ヴォルフの青年は答える際に言葉に詰まり、視線があらぬ方向に向けられたのだ。あからさますぎる誤魔化し方にアイナは疑問を抱く。


 すると、その疑問を解消するかのように別方向からの攻撃が入った。


「あれー? 何言っているスカ。冬ごもりの場所ならもう決まったって言ってたじゃないスカ」


「あ、こら! 黙ってろよ、トリシャ!」


 紅茶のような色のした三つ編みを何本も垂らした少女の口を塞ごうとするのは、茶髪を紐で括った目つきの鋭い少年。少女の名前はトリシャ、そして少年の名前はホラスだ。


 トリシャはドワーフ族と人間族の間に生まれた子供で、両種族の特徴が色濃く出ている。人族にしては低い身長に、ドワーフ族にしては柔らかい皮膚を持った彼女は、見た目にはそぐわないが身の丈を越す巨大なハルバードを振り回す。この体格でファルナよりも筋力があると言うのだから、人は見た目によらない。少々訛りがあり、時折爆弾発言をしてしまうのがたまに傷だが、今回は特に威力が大きかった。


 トリシャの言葉を受けてファルナが疑いの目でカーティスを見た。


「どういう事だい? 団長から何か聞いてんのならアタシにも言いなよ。アタシが知らなくて、部下であるトリシャが知っているなんて筋が通んないじゃないの?」


「いや……トリシャに知られたのは偶然というか……その」


 オルド譲りの眼力に睨まれたカーティスは観念したように肩を落として話し始めた。


「……次の冬ごもりの場所は既に決まっていて、少し前に俺に対して通達が来たんだ」


「この班の長はアタシだよ。アンタはお目付け役でしょ」


「それは分かってる、お嬢。だけど、団長はいまこの事を知ればお嬢が任務に集中できなくなるんじゃないかって考えて黙っているように俺に言ったんだ」


 任務に集中できなくなるという言い方にファルナのみならずアイナも不思議に思う。少女二人に見つめられたカーティスがポツリと呟いた。


「次の冬ごもり。場所は学術都市になるそうだ」


「が……学術都市だって!?」


 驚きのあまり、ファルナの口から大声が飛び出し、アイナも釣られて目を丸くした。


 学術都市。それは中央大陸の西にある最大規模の都市国家だ。


 人も、街の大きさも、国土も広いが、その街にはある特徴がある。それは世界三大迷宮と呼ばれる物の一つが都市の地下に存在して居るからだ。


 かつて、北の地にあった三大迷宮の一つは冒険王が攻略してしまった。彼はそこで手に入れた財宝を使いギルドを作り、国を興した。


 そして残りの人生を使い、もう一つの三大迷宮を攻略しようとした。


 そのために学術都市の前身に当たる村を迷宮の地上部分に築いた。その入れ込みようは推して知るべし。結局、冒険王はその迷宮の攻略を成し遂げることなく死去。


 かくして冒険王すら攻略できなかった迷宮として学術都市の迷宮は冒険者にとっての聖地のような扱いになったのだ。


 だけど、ファルナとアイナが驚いたのはそこでは無い。


 彼女らにはもう一つの意味が学術都市にはあった。


「それって、レイ君が向かっている場所ですよね?」


「あ、ああ。確かそうだったはずだよ」


「……だから言うなってきつく言われてたのに」


 アイナとファルナが顔を見合わせる横でカーティスが肩を落とした。その隣の隣では何故かホラスも肩を落としており同年代の男どもと涙を流し合っていた。かすかに聞こえてくるのは、次にあったらぶん殴ってやるとか、酒を飲まなきゃやってられねえよとかの愚痴だ。


「レイ……レイ……レイ? はて、確か、どなたかのお名前でしたね」


 この場でレイと面識のないルリジオンが呟いた。


 レイとはとある冒険者の名前だ。アイナもファルナも、そして『紅蓮の旅団』メンバーにも縁浅からぬ間柄の少年だ。


 彼が学術都市を目的地としているのは二人も知っていた。それが短期では無く、中期、あるいは長期の滞在になりそうだというのも何となくではあるが知っていた。


 つまり、冬の時期までレイが学術都市に滞在する可能性は高いのだ。


「そうか。……そうか……そうなんだ」


 どこか嬉しそうに、しかしそれを周囲に悟られないように緩む口元を隠そうとするファルナ。そんな彼女にアイナはあからさまに、


「いいなー。ファルナさん、レイ君と会えるかもしれないんだ」


 と、堂々と不満を口にしていた。自分は聖都に行けば六将軍絡みのごたごたが終わるまでは拘束されているため、再会はしばらくないと思っていた。


「い、いいなって別に。アタシはアイツと会いたいなんて―――」


「―――ああ、思い出しました。お二方の寝言によく出てくる御仁の名前でしたね」


 ルリジオンの突然の発言に二人は固まった。油の切れた歯車のようにぎこちない動きでルリジオンの方を向いた。


「……ちょっと神官さん? 寝言ってどういう意味だい?」


 頬を引きつらせたファルナの問いにルリジオンは淡々と答える。


「寝言は寝ている時に発する言葉です。お二人ともバカレイとか、レイ君とか口に出していました。頻繁に口に出していらっしゃるので回数を記録してしまいました」


「ひ、人の寝言を記録しないでください!」


「そうだよ。それもアタシの分まで!?」


「これも職務なので。寝言の日付と内容と表情なども克明に記してあるので読み上げましょうか?」


「止めてください!」「記録!? そんなの寄越しな! 燃やしてやる!」


 懐から取り出した黒い手帳の中身を読み上げようとするストーカー神官に、二人が飛びかかろうとしたまさにその時。


 食堂の扉が勢いよく開かれたのだった。


読んで下さって、ありがとうございます。


簡易登場人物紹介


アイナ……ネーデの街の受付嬢。純血の魔人種で、元冒険者という事もあり魔法に秀でている。現在、六将軍への囮として聖都へ護送中。

ファルナ……『紅蓮の旅団』所属の冒険者。目出度く、自分の班を持ち、法王庁からのクエストを受ける事になった。

ルリジオン……法王庁情報部所属第二異端審問官。ストーカー神官の異名を持つ、追跡術、逃走術の達人。おはようからお休みまでアイナを見守る。

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