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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第6章 水の都
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6-77 耐える戦い 『前編』

 呼吸する度に何処からか空気の抜ける音がする。心臓が鼓動を刻む度に血管が破け浅黒い内出血が広がっていく。一歩足を動かすたびに繋いだ骨がひび割れて行く。


 明日の朝日を拝むことはできないと口にしたのは、誇張でも卑下でもなく、純然たる事実だ。はっきり言って、真夜中まで持つかどうかも怪しかった。


 それだけ、リザの一撃は凄まじく、同時に素晴らしくもあった。


 自分の持てる技量と、使える道具を駆使し、命がけで放った攻撃。それを避けるという選択肢はエレオノールに無く、甘んじて受け止めた。


 腹部に糸を巻きつけ、糸を織り込んで作った盾も間に挟み、その執念の一撃を凌駕すると信じて防御して、結果としてこうなった。


 体が横に二つに千切れ、全身余すことなく傷ついた。高い所から落とされた卵のように、砕け散った。


 大剣の重量や高所からの落下、それに加えて海面という場所の悪さなど要素は幾つもあったが、なるべくしてなったとも言えた。


 眩い海面が遠ざかり、深海に囚われそうになる中、エレオノールは大急ぎで裂けた体をつなげた。ツギハギだらけのボロ雑巾のような有様だが、見てくれはどうにか人間を保っている。


 だが、こうして戦闘が始まれば無理が生じる。


 能力強化を施したオルタナが地面を軽やかに蹴り飛ばして距離を詰めると、上段蹴りからの回し蹴りという素早いコンビネーションを放つ。それをしゃがみ込んで掻い潜るも、すぐさま次の攻撃が飛んでくる。避けた直後のエレオノールに向けて、従者の大砲のような一撃がこめかみを狙う。糸で編まれた盾を幾つか作り、減速させなければ皮一枚で躱す事はできなかった。こめかみから噴き出す出血を呑み込んで、龍刀の炎が迫る。大鎌で打ち払うが、その度に縫合した傷口から血が滲んでいく。


 エレオノールの全身は至る所がダメージを負っていた。


 落下した際の衝撃で骨は砕け、砕けた骨が肉を突き破り皮膚を裂いた。自らの体が自らを傷つけていた。そのため、持てる糸の半分を治療に回し、残った分の三分の一を感知に回すと、残ったのは大鎌と盾を数枚作る分だけだった。


 他者を操る糸は使えない。あれは一度に操れるのは、生者なら一人のみという弱点がある。それに、糸を侵入させている間は無防備となる。三人の内の誰を選んでも、残り二人に止められてしまう。


 魔法は切り札だ。


 どれだけ体が傷つき、朽ち果てかけていても、怜悧な思考に陰りは無い。高い集中力を必要とする超級魔法を含めた六発の魔法はすでに最終節まで済ましてある。後は状況を見て、必要に応じた魔法を放つ。逆に言えば、六発使い切っても、この四人の中で一人でも生き残られてしまえば、それはエレオノールの敗北となる。


 いまは耐える時だと言い聞かせながら、エレオノールは戦う。


 大鎌を立て、龍刀の横薙ぎを受け止める。そしてくるりと回して龍刀を弾くと距離を取ろうと下がる。だけど逃がすまいと従者の踵落しがエレオノールの頭部に向かって落ちた。従者の一撃は全て頭部に向けて振り下ろされている。この威力で当たれば、エレオノールの頭部は割れた柘榴のような断面図を晒すだろう。


 咄嗟に躱したが、完璧とは言い難い。掠めた踵が皮膚を削る。


 痛覚を遮断して良かった。もし、遮断していなければ、今頃は痛みで七転八倒した挙句死期を速めていたに違いない。


 どろりと血が流れるが、お構いなしにエレオノールは大鎌を従者に向けて振るった。外した踵落しはその威力の高さから足が床に突き刺さっていた。身動きの取れない従者に向かって大鎌が迫る。


 だけど、従者は恐れることなく大鎌を防いだ。大鎌の軌道を見極め、左右の拳をぶつけ合った。ナックルダスターが甲高い音を響かせると、大鎌の刃が従者の顎の寸前で止まっていた。


 ナックルダスターによる真剣白羽取りだ。


 大鎌を引き戻そうとするエレオノールだが、刃先がビクともしない。まるで巨大なモンスターに掴まれているように大鎌は微動だにしない。エレオノールの肉体は普通の人間種の少女。対して相手は肉弾戦特化の魔人種だ。筋力の値が、文字通りケタ違いだ。


 エレオノールは舌打ちをすると、大鎌を手放した。そうしないと、厄介な存在が迫って来るからだ。


 厄介な存在が風のような素早さで近づき、疾風のような拳を繰り出した。一呼吸で三発。エレオノールのこめかみ、顎、喉に向かって繰り出された拳は、しかし目標が逃げたために空振りに終わる。


 だけど、拳の破壊力を伝えるかのように疾風がエレオノールにも届いていた。


「猪突猛進な……パワーファイター……だけでも大変なのに、こんな……伏兵が……居たとはね」


 エレオノールは余裕を持って避けたはずの頬に浅い傷がついたのに気が付いて、手袋で流れる血を拭った。


 レイ、従者、オルタナの三人の中でずば抜けて厄介なのは実はオルタナだった。


 龍刀を持ったレイは炎を纏わせた一撃を振るう。それを回避したり、防いでも炎が伸び、エレオノールをつけ狙うが、糸を犠牲にすることで防ぐことはできる。レイの技量は三人の中で最も低く、冷静に対処すれば問題にはならないレベルだった。


 少年はまだあの夜に見せた肉体強化の魔法を使って来ない。あの、上級魔法を打ち破った爆発的な力は、肉体強化の魔法と併用してしか使えないのだろうとエレオノールは推測していた。そしてそれは肉体強化系の例に漏れず、短時間で効果は消え去り、連発が出来ないのだろう。つまり、レイの切り札なのだ。使うべき時を見定めているのだ。


 従者は細身の体に似つかわしくない、巨人の一撃を持っている。瀕死のエレオノールがその一撃を正面から浴びれば、繋ぎ合わせた縫い目が全て解け、肉と骨と皮の塊に成り果てる。


 しかし、攻撃が大雑把だ。落ち着いて相手の行動を見極め、最優先に避ければ、いまのところ当たる心配はない。また、彼女の使う毒による異常状態は、自分の体を糸で操る分には支障がないため無視できる。針が幾度も発射されている様だが、痛くも痒くも感じる事の出来ないエレオノールには命中しているかどうかすら分からない。


 問題はオルタナだ。


 飄々とした態度や仕草に似つかわしくない、堅実的な戦い方をこの男はしていた。近中距離で戦うレイとインファイト主体の従者の間を埋めるように立ち回り、エレオノールに休む暇を与えない。気が付くと、一番厄介な位置に男は滑り込むように存在して、エレオノールの逃げ場を削る。


 従者と同じ拳や脚を武器とした戦闘方法だが、両者には明確な違いがある。


 一発で戦闘を決める大砲タイプの従者と違い、オルタナの拳は長期に渡って相手に響く。相手の体力を奪い、選択肢を奪い、行動を奪う。


 まるでカミソリで体を削られるような不快感をエレオノールは抱いていた。


「嫌らしい……戦い方……だ。大体、魔法使いが……肉体強化を……使って接近戦というの……が……流儀になっていない……じゃないか。このアクアウルプスに、そんな……異端の魔法使いが……居るなんて……知らなかったよ」


「……グチグチと喧しい小娘だな。囀るだけの体力はあるみてぇなら、さっさと回復の呪文を教えやがれ」


 距離を取って帽子を深くかぶり直したオルタナが呟くと、エレオノールはピクリと動きを止めた。光を奪われた分、彼女は他の五感には自信があった。


 その中で初めて聞いたオルタナの声に引っ掛かりを覚える。


(……この声。何処かで聞いたことがあるぞ。何処だ。何処で聞いたんだ。……いや、待てよ、聞いたことがある声という事は、ぼくはこいつを知っているというのか?)


 三人に囲まれ、戦闘中だというのに立ち止まり、記憶の扉をあけ放つ。それだけ、エレオノールにとってはオルタナの声は違和感が強かったのだ。


 それを見逃す従者では無かった。


 彼女は自分が受け止めた大鎌を無造作に投げ返した。


 従者の膂力で投げられたのだ。無造作とはいえ、その勢いは凄まじく、我に返ったエレオノールが展開した糸の盾を容易く突き破り、エレオノールに直撃した。


 エレオノールにとっては幸いというべきか、レイ達には残念というべきか、大鎌の刃の部分では無く、柄の部分が直撃した。


 それでも衝撃は凄まじく、エレオノールの肋骨は複数本纏めて再骨折して、体に食い込んだ。骨の刃は内側を突き破り、血を吐くエレオノールは手元に戻ってきた大鎌を杖のように支えとして立ち上がった。


 すかさず、レイが襲撃する。振るわれたコウエンから炎が二筋走る。エレオノールは自分の正面に糸の盾を展開したが、レイの狙いは違った。二筋の炎はエレオノールの左右を走り、そして背後で交差する。彼女の退路を断つように炎の壁となった。


 そして正面からレイが吶喊した。


 エレオノールはここが勝負の分かれ目だと判断した。ありったけの糸を展開して盾を人の背丈を越す壁の大きさまで伸ばした。


 エレオノールの体を覆い隠すほどの壁を前にしてもレイは躊躇わずに接近してコウエンを斜め上から振り下ろす。


 その瞬間を見計らって、壁の糸が解れた。まるで津波のように糸がレイに向けて押し寄せる。


 大鎌を水平に構えたエレオノールは、糸の津波に拘束されたレイを両断するべく力を貯める。


 だが、


「同じ手は何度もくわないよ。《崩剣》!」


 龍刀に纏わせた精神力が戦技と昇華し、振るわれた刃は一刀を持って糸を切り裂いた。いや、単に切り裂いただけなら、糸同士が結びつき、まだレイを拘束する事が出来る。だけど、戦技を受けた糸は傷口から砂状に崩壊していく。


 そして返す刀でレイはエレオノールを襲う。


 下から振り上げられた一撃を、エレオノールは大鎌で受け止めた。


 受け止めてしまった。


 戦技を纏った龍刀は大鎌の柄を何の抵抗もなく斬り、そして二つに割れた大鎌は砂状に崩壊した。盾も大鎌もなくなってしまった。


「今度こそ!」


 三度目の正直とばかりに返った刃が同じ軌道を逆に描いて振り下ろされた。だけど、その一撃は空を斬る。武器も防御も無くなったエレオノールは驚くことに背後の炎へと飛び込んだのだ。


 そして、炎の壁に焼かれながら、向こう側へと逃げ出した。すぐさま用意していた水の魔法で全身に纏わりつく炎を消した。


 炎に巻かれていたのが数秒とはいえ、赤龍の炎は恐るべき威力だ。数秒足らずで、エレオノールの至る所に火傷の痕を残していた。黒いドレスも焦げ跡を幾つも作り、その下のツギハギだらけの皮膚を晒している。


 体の炎を消した水魔法で、ついでとばかりに炎の壁を消した。水蒸気が地下空間を包み込み、白い靄が視界を潰す。もっとも糸による感知が出来るエレオノールにはハンデにはならない。


 彼女は、魔法を使用したことで警戒したレイ達が後ろに下がっているのが手に取るようにわかった。そして、その後ろでじっと動かずに居る少女の事も。


 レイ達が戦闘している最中、シアラは一人後方で動かずにいた。彼女の足元には変換の魔法陣が刻まれている。その上に立つシアラは自分の中で生命力と精神力のバランスが変わりつつあるのを感じていた。


 立っているだけなのに全力疾走したかのように息が切れ、汗が頬を伝う。肌の艶が失われていき、まるで寿命を切り売りしているかのような錯覚に陥る。


 だけど、それならそれでもいいと彼女は考える。エレオノールを捕まえるという難題を、自分の寿命を差し出せば済むならそれでもいい。


 そう、レイ達の目的はエレオノールを倒すのではなく、あくまでも捕獲だ。無力化し、拘束し、本当の《アニマ・フォール・リジェネ》の詠唱を吐かせる。それが目標だ。


 最初の想定ではこの四人のごり押しなら何とかなるのではないかと考えていたが、その考えは甘かった。


 まさか、エレオノールがあそこまで瀕死の状態だったとは誰も思わなかった。


 リザの与えた渾身の一撃が、予想以上の結果を生んでいた。


 あれ程悪魔的な存在だったエレオノールが、間違って殺しかねないほど弱々しい姿になってしまった。


 そのため、方針を変更する必要があった。


 一気に力押しで決着を着けるのではなく、相手の戦意を削ぐように追い詰める。


 具体的には、エレオノールの精神力を全て使い切らせる事だ。無詠唱の使い手である彼女は意識がある限り魔法を詠唱し続ける。だから、精神力を使い切らせる必要がある。


 そのためにはあの超級魔法を使わせる必要もある。


 いま、水魔法を使った事で残りは超級魔法を含めて五発。この戦いはその五発を受けきってなおレイ達が生き残れるかどうかに掛かっている。


 エレオノールが耐えているのと同様にレイ達も耐え抜くことを作戦に加えていた。


 この一戦は、つまるところ耐久戦なのだ。エレオノールは魔法を放つタイミングが来るまで耐えて、レイ達は六発の魔法を耐えるという地味な戦いだ。


 視界を白に塗りつぶされる中、レイ達はシアラの所まで戻ってきた。この作戦のかなめはシアラだ。これまでの戦闘は時間稼ぎにすぎず、シアラの準備が整った時が本番だ。シアラの足元には飲み終わったポーションの空き瓶が散乱している。


「あとどれぐらいでいける?」


「……三十秒ぐらいよ」


 エレオノールに聞かれることを想定して言葉を削る。だけど、それだけで通じたレイは額を流れる汗を拭った。


「どうする? これ以上だらだらと戦っているとらちが開かないぞ。それにあの女が通路に逃げ込む恐れもある」


「それはたぶん大丈夫。アイツの今の速度なら通路に飛び込む前に捕まえる事はできるし、それにアイツの魔法は狭い所で使えば周りを崩しかねない。アイツはここでケリを付けるしかないんだ」


「なら、始めますか」


 従者の問いにレイは目をつぶり、そして頷いた。


「では打ち合わせ通りに従って、私が単騎で先陣を」


「お願いします。でも、くれぐれも殺さないように気を付けてください」


 首を縦に振った従者は懐に仕舞っていた物を取り出した。それは小さなケースで、中を開けると針が数本収まっていた。


 その中の一つを慎重に取り出すと、従者は自分に向けて突き刺した。瞬間、従者の黒目が拡大し、首筋の血管が膨張したかのように太くなった。吐き出された息は荒く、燕尾服が覆う彼女の肢体は一回り膨れ上がった。


「それでは、行ってきます」


 言うやいなや、従者の姿は掻き消え、視界を潰していた白い靄が一気に吹き飛んだ。ずぶ濡れとなったエレオノールの姿が露わになる。


 彼女の糸は、直前までの四人を捉えていた。一塊になり、何かを打ち合わせしていた所までは聞き取れていた。


 しかし、その直後に従者の姿が消えた。代わりに、何か途轍もない速度で移動する存在を知覚した。それが自作の毒で一気に強化を果たした従者だと気が付くのは自分の近くの床が捲れた後だった。


 従者は驚くことに、戦闘用の技能スキル、戦技、魔法のどれも習得していなかった。前二つの習得は本人の資質による物が大きいが、魔法に関してはワザとだ。


 彼女の役目はジョゼフィーヌの傍に居て、彼女の目となり、手となり、足となる事だ。ウージアの女帝と呼ばれる彼女は、時として極秘な会談を行う。その場に付き従う同行者が戦闘用の魔法を持っていれば、排除される恐れがある。そのため、彼女はワザと戦闘用の魔法を習得してこなかった。


 その代りに磨いたのが毒の分野だ。他者を蝕む毒だけでなく、自分を強化する毒も彼女は研究していた。


 いま打ったのもその一つだ。全身の力を一気に強化するが、その後反動が凄まじく、身動き一つ取れなくなる狂戦士化の毒だ。従者にとっては切り札といえた。


 その効果は凄まじく、金属で出来た固い床に指が沈みこむ。まるでスライムを引き千切るかのように、床が捲れエレオノールを襲った。それは一枚ではすまず、従者は二枚三枚と移動しながら床を捲っていく。


 広範囲に渡って襲いかかる土石流のような攻撃に、エレオノールは魔法を使った。彼女を守るように炎が竜巻となって表れ、捲れた床を吹き飛ばした。


 先の水と併せれば、これで二つ。


 続けて、従者は炎の竜巻に向かって飛びかかった。ぐるりぐるりと二回転しつつ、勢いをつけた回し蹴りで炎の竜巻を蹴り飛ばして粉砕する。勢いそのまま彼女は落下しながらも回転し、その蹴りがエレオノールめがけて振り下ろされる。


 エレオノールは咄嗟に、自分に向けて魔法を放った。地下空間に風が吹き荒れる。レイがシアラの前に立たなければ、彼女の体は吹き飛ばされてしまったかもしれない。


 そんな強風を切り裂くように、従者は足を振り下ろした。だけど、そこにはエレオノールの姿は無かった。彼女の体は風に持ち上げられ、宙を舞っていたのだ。


 これで三つ。


 同時に従者の体が崩れ落ちた。毒の反動が来たのだ。


「今度は俺の番だな」


 腕、足、胴体の三カ所に肉体強化の魔法を三重に掛けたオルタナが帽子を脱ぎすて、一気に駆けだした。肉体強化を施してあるとはいえ、その速度はレイの目にも辛うじて映った。それに彼は空を飛ぶことはできない。空中に居るエレオノールに攻撃は届かないはずだ。


 そう考えたレイの意表を、オルタナは突いた。


 彼はエレオノールの真下を通り過ぎ、反対側の壁に激突する寸前に脚に強化の魔法を更に施し、直角の壁を蹴ったのだ。


 一歩、二歩と重力に逆らった男は止めと言わんばかりに壁を蹴り、同じ高さに居るエレオノールに向かって突撃した。


 エレオノールは苦悶の表情を浮かべた。レイ達の狙いに気が付いたのだ。


 ワザと戦力を分散して投入し、魔法を誘発させて精神力切れを起こさせる。非常時に備えていた糸が使えなくなった以上、追い詰められるのが分かりながらも自分の身を護る為に、エレオノールは魔法を繰り出した。


 雷が収束し轟雷となってオルタナに向かう。オルタナは咄嗟に全身に肉体強化の魔法を掛けて、雷の上級魔法をあえて浴びた。


 男の体を雷は蹂躙した。オルタナは悲鳴一つ上げず、しかし失速してしまい、重力に捕まり床へ落下した。


「オ……オルタナァ!」


 飛び出すタイミングを計っていたレイは思わず叫んだ。床に激突した男は、何も言わずに、ただ腕を天に向かって伸ばした。まだ生きている。そして、次はお前の番だと伸びた指がエレオノールを突き刺していた。


 これで四つ。


 レイは龍刀を握りしめ、嵌っている赤色の指輪を掲げた。


読んで下さって、ありがとうございます。

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