6-4 オウリョウ
シュウ王国最南端に位置するオウリョウは赤茶けたむき出しの大地の上に君臨する砦のような街だ。都市を二重三重に囲む城壁。棘のように突き出した大砲。遠くからでも聞こえる兵士達の鬨の声。商業と外交をメインに据えている首都のアマツマラとは一線を画している。
なぜなら、ここより南に広がるのはメスケネスト平野。人が住むには厳し過ぎる環境で、常にモンスターたちが縄張り争いを繰り広げる危険地帯。そこから北へと、人の住む領域へと進もうとするモンスター達を押しとどめる防波堤としてこの街は存在する。
「でかいな。……アマツマラの外城壁よりもデカいんじゃないか」
門へと続く馬車の列に並びながらレイは城壁を見上げた。近づくにつれてオウリョウを楕円形に包む城壁の大きさは驚嘆に値する。どれだけの人手と時間、それに金を費やせばこれだけ厚く、そして高い城壁が出来上がるのか想像すらできない。日が傾くにつれ伸びる城壁の影が大地を黒く染める。
「普通のスタンピードを想定して、この大きさになっていると聞きます」
馬車の御者台から見上げているレイに並走して、アスタルテに騎乗したリザが説明をする。
メスケネスト平野の中心部に一つの火山がある。名をメスケネスト火山と呼ばれ、そこの地下には広大な迷宮が広がっていた。深層まであると分かっているこの迷宮は人の手が入らない迷宮の一つでもある。
なにしろ迷宮に行くまでに無数のモンスターがひしめく平野を抜け、上層部攻略推奨レベル70オーバーの迷宮に挑み、地上に帰還したらまた平野を戻らなくてはいけないのだ。誰だってそんな面倒な事はしない。メスケネスト平野の迷宮はギルドが数年おきに送り出す部隊の調査の時しか冒険者が訪れない。
そうなると別の問題が浮上する。
スタンピードだ。
迷宮内のモンスターが許容量を超えた時に起こる生存活動。後から生まれる兄弟のために、新天地を目指して地上へと至ったモンスターたちが、肥沃な大地に進軍する津波のような破壊力を持った行進。
手つかずの迷宮というのは往々にして、それが起きる危険性がある。だが、メスケネスト火山の迷宮はその可能性が限りなく低かった。理由は火山の主にある。
長らく、火山を根城にしていたのは古代種の龍が一体、赤龍だった。
一年に一度、迷宮に溜まった魔力を吸い上げ己のものとし、残りの時間をうたた寝に費やすこの龍のお蔭で迷宮のモンスターは一定の数で押さえられていた。
ところが、たまに。十年に一度くらいの頻度で赤龍が寝坊する時がある。
魔力の吸い上げを怠り、モンスターの生成される数が増してしまう。もしくは、一度に吸い上げる量をうっかり増やしてしまい、迷宮内の魔力を枯渇寸前まで追い込んでしまう時もある。
そうなると、生きる為にモンスターは故郷を捨てて地上を目指してしまい、結局スタンピードが発生するのだ。
(随分と迷惑な存在だよな。お前は寝てても起きてても世界に与える影響力が強すぎるだろ)
レイは腰に差してあるコウエンへ視線を向ける。残念ながら、その中に宿るコウエンは未だに眠ったままだった。ナリンザの葬式の後から、コウエンはレイに一度も語り掛けない。まるで眠っているかのように意思の疎通は出来ないでいた。
ともかく、オウリョウは赤龍のミスで時折起こるスタンピードに対する最前線基地としての面があった。通常のスタンピードなら、人の密集している街を目指すため、オウリョウが最初に標的にされる。堅牢な城壁はモンスターの侵入を拒むためにある。
「この城壁なら、赤龍のブレスも受け止められたんじゃないのか」
「うん。それぐらい立派な城壁だね」
《ミクリヤ》の中で赤龍のブレスを受けたことのあるレティが同意を示した。
軍事色の強いオウリョウには様々な人物が集まる。商人や職人のような一般人から、血の匂いを纏わせる冒険者や傭兵たち。種族も様々だ。普通の人間族だけでなくドワーフも居れば、人の背丈の半分ぐらいしか無いハーフリングも居る。獣人種の中には見たことのない種族も居た。まるで人の形をした鳥のような集団だ。衣服の背中が開いており、そこから翼が飛び出している。
まさか飛べるんじゃないだろうなと思っていると、門を目指す列が動き、遂にレイ達の番になろうとする。
門では兵士による身分の確認が行われている。ギルドに所属している者はプレートを。それ以外の者達はそれぞれ持っている身分を証明する物を差し出していた。
「そういえば、ダリーシャス。貴方の身分証はどうなってるの?」
レイが今頃その事に気が付くと、ダリーシャスが呆れたように首を振った。
「ここまで来て、今頃そんな事を言うのか其方は。まったく。俺の身分証明は、ほれこれだ」
ダリーシャスは自分の荷物を纏めてある鞄から、ある物を取り出した。油紙で大切にくるまれた紙片には太陽を崩した様なマークが刻まれている。折りたたまれた紙を広げるとエルドラド共通言語で氏名や年齢、そして容姿に関する特徴などが事細やかに書かれている。
「デゼルト国の旅券だ。これで各国に渡ることが出来るぞ」
「……あのさ。この氏名の欄、違う名前が書いてないか」
馬車の中が凍り付いたかのように時が止まる。シアラが慌ててレイの横から顔を覗かせ、旅券に記された氏名を読み上げる。
「ダリ―・マクギル? 誰よこれ!」
「まさか、アンタ。実は王子じゃないとかそう言う落ちじゃないよね」
レイとシアラに問い詰められたダリーシャスは平静を保ったままもう一枚の紙片を取り出した。同じような油紙に包まれたそれはまたしても太陽を崩した様なマークが刻まれた旅券だった。
そこにはダリーシャス・オードヴァーンと書かれていた。身分も王子とくっきりと書いてある。
「こっちにはダリーシャスって書いてある。ということは、このダリ―某は偽造って事ですか」
「いや、それは違う。ダリ―・マクギルの方も王政府が発行した紛れもない旅券である。正真正銘の本物だ」
ダリーシャスの方の旅券を大事そうに仕舞うと、彼は説明を続けた。
「今回のシュウ王国訪問は非公式の訪問である。王子としてこの国を訪れたことは極力残したくないので、こちらのダリ―の方の旅券が必要なのだ。その上、俺は国内からの刺客に狙われている身。下手にダリーシャスの旅券を見せびらかすわけには行くまい」
「……一国の政府が公認で作った偽造旅券って事ね。世も末だわ、まったく」
シアラが呆れた風に言うと、外からリザの声が掛かる。ついに、レイ達の番が来たのだ。
レティがキュイを停めると御者台の方から兵士たちが声を掛けた。
「長旅御苦労。早速で悪いが、都市に入るには身分と積荷の検査をさせてもらう。見た所、冒険者だな。だったらプレートを提示してくれ」
てきぱきと指示を出す兵士に対して各自がプレートや旅券を差し出し、それを兵士が確認する。ダリーシャスのデゼルト国公認偽造旅券は難なくスルーされた。
順番にチェックが終わり、最後はレイの番になったがレイは困り顔で告げた。
「申し訳ありません。僕だけ迷宮内でプレートを無くしてしまいました」
「む。そうなのか。だとしたら、君だけ審判官の所で身分の確認をしてもらう。今の内に必要事項を書き込んでくれたまえ」
冒険者がプレートを無くすことは割とある事だとリザは言っていた。迷宮内で何が起きるのかは誰にも予測できないし、別の人物のプレートを手に入れた所で何も得る情報はない。そのため、プレートはギルドで再発行出来る。
レイは自分の氏名と年齢。それに所属しているパーティー名にランクとレベルを書き込む。ここで注意するべきなのは、最後に更新された時のランクとレベルだ。
『招かれた者』であるレイは常に最新のステータスを確認できる。シアトラ村の戦いを経てランクは上がりレベルも上がっているのは知っているが、それをここに書くのは不味い。
慎重に、疑われないように書いてあるか再度確認してから兵士に羊皮紙を返した。
「えーっと。名前、レイ……所属……《ミクリヤ》。……まさか、《ミクリヤ》のレイか!?」
突然の大声にレイは戸惑いながら頷いた。すると、身元確認や警護として巡回していた兵士たちが一斉にレイの方を向いたのだ。辺りの兵士達がにわかに騒めき始めるとリザが馬上のまま剣の柄に手を伸ばした。
馬車の中でもそれぞれ武器に手が伸びた。
「黒髪に一部白髪が混じり、朱色の鞘。間違いない。報告にあった人相と一致する」
「えっと……なにか問題でもありましたか?」
どこか考え込み始めた兵士に対して声を掛けたレイだが、言葉は届いていなのか返事はない。再度声を掛けようと試みるも、先に兵士が口を開いた。
「申し訳ありませんが、ただいま審判官をお連れしますので列から外れてお待ちして頂けませんか。すぐに、直ぐに戻りますから!」
レイの返事を待たずに兵士は走り去ってしまう。思わずリザと顔を見合わせたが、彼女にも何のことか分からず首を捻る。仕方なく兵士の指示通りに列から外れて帰って来るのを待つことになった。
先程の騒ぎを見ていた人々はレイ達の横を通り過ぎる際にちらりと視線を向けてくる。興味本位の視線に晒されること数分。兵士が走って戻ってきた。背中には審判官が揺れていた。
「お、お待たせしました。お時間は取らせません。さあ、審判官殿。質問をお願いします」
目隠しを取り外した審判官の特殊な瞳がレイを見つめる。紫色の光彩に魔法陣が刻まれている瞳の前で偽証は通用しない。何を尋ねられるのかと身構えていたレイに対して審判官が口を開いた。
「冒険者殿。貴方は《ミクリヤ》所属のレイ殿でよろしいですね」
「……はい。そうです」
「事実の様です。彼は間違いなくレイ殿です」
審判官がハッキリというと、周りの兵士たちは慌てたように動き出した。応対していた兵士が背筋を伸ばして強張った声を出した。
「そ、それではレイ殿。お手数ですが、あちらの門から中に入っていただきたいのですが、宜しいですか」
兵士が指しているのはレイ達が入ろうとしている門とは別の門だ。いわゆる貴族や豪商などの上流階級専用の門だ。ほとんどノーチェックで門を通過できるため、こちらの門のように長蛇の列は出来ていない。冒険者でも上位、それこそオルドぐらいしか使えない出入り口だ。
(なんだか、おかしなことになっているな)
誘導する兵士に従ってレイ達は別の門へと向かい、そこから中に入ると、門の前で待っているようにと言われた。
「ただいま執政官付補佐官をお呼びしております。申し訳ありませんが、こちらでお待ちしていてください」
と、言われたのだ。
正直、嫌な予感しかしていない展開だけにさっさと街の中へと入りたかったのだが、兵士が行こうとするレイ達を必死に押しとどめるために諦めるしかなかった。
貴族たち専用の門だけに行き交うのは高級な装飾の施された箱馬車や、それを護衛する勇壮な騎士達ばかりだ。彼らは往来の邪魔にならないように端に馬車を停めているレイ達を横目で見ていく。地位が偉くなろうが、人の本質はあまり変わらないようだ。レイ達を見つめる目には好奇心が浮かんでいる。視線から隠れるようにレイは馬車の中に引きこもる。
似つかわしくない場所に居るだけで目立つのに、そのレイ達を逃がさないように取り囲む兵士たち。彼らは決して威圧的では無く、むしろ彼らなりに礼儀を尽くしているかのように背筋を伸ばしていた。それが返って目を引いていた。
すると、馬のひづめの音と共に馬が街の方から駆けて来た。兵士がそれに気づき手を振ると、馬は馬車をすり抜けレイ達の方に近づく。
「馬上から失礼します。……《ミクリヤ》のレイ殿で間違いありませんか?」
涼やかながら凛とした声だ。幌に隠れて顔が見えないため、レイは御者台へと躍り出た。
レイに声を掛けたのは女性だった。凛とした声に短めの髪が相まって男性かと思ったが、柔らかそうな顔立ちは間違いなく女性の物だ。
それも普通の人では無かった。小人族とよばれる小さな背丈の種族だ。レティよりもやや大きいぐらいの女性がポニーに乗ってレイを見上げている。
「え……ええ。その通りです」
レイが質問を肯定すると、女性はポニーから降りるとレイの前で跪いた。慌ててレイが御者台から降りると口上を述べた。
「お初にお目に掛かります。わたしはシュウ王国南領執政官付補佐官のカンネと申します。冒険者レイ殿に我が主がお会いしたいとの事。唐突ではございますが、足を運んではもらえないでしょうか」
「……その……貴方の主ってどちら様なんですか」
顔を上げたカンネは一瞬ためらった後、しかしはっきりと口にした。
「シュウ王国第二王子スヴェン・ヴィーランドであります」
その名はあまり聞きたくない名前だった。
「信じらんないよ。あの王子様。この街の……いやシュウ王国南領を取りまとめている長だったなんてさ」
石畳を踏みしめる馬車の中でレイは愚痴りながら服を着替えている。持っている衣服の中で一番ヨレが少なく、見た目が上等なのを選び手早くボタンを外す。
「そうと知っていたら、オウリョウに寄らなかったのにさ」
「何時まで愚痴ってるのよ。着替えが終わったら、頭を整えるわよ」
シアラが桶に水を張り、香油を準備する。長旅で乱れた髪に向けて櫛を入れていく。一方でダリーシャスはいつもと変わらないラフな格好のままレイに笑いかける。
「まさか知らないとは思わなかったぞ。オウリョウに向かうと村で聞いた時も、顔に似合わず豪胆な性格をしていると感心したのだがな」
「馬鹿言っちゃいけないよ。僕の心臓なんてノミの心臓。国の権力者に刃向っておいて、そのひざ元でのうのうと過ごそうなんてこと、ちっとも考えてません」
レイ達一向はオウリョウの中心部へと進んでいく。道先案内人はハーフリングのカンネだ。彼女は見た目の幼さや可愛らしさとは裏腹に肝が据わっており、レイの前でにこやかな笑みを浮かべつつ、
「それでは、参りましょうか」
と、有無を言わせない迫力で水先案内人となった。
「まあ、どうやってもこの街に居る間は第二王子と会わないって選択肢はないんでしょ。だったら、さっさと会って話を済ませちゃえばいいじゃない。流石に取って食われることは無いでしょ」
シアラが励ますように言うも、レイは気が重かった。
スヴェン・ヴィーランド。
父親と同じ銀髪を短く刈り込んだ偉丈夫はほとんどなし崩しのようにレイに決闘を挑んできた。避ける事の出来なかった決闘に応じたレイは、そこで死にかける目に遭い、更には往来で王子に剣を向けたことで兵士に追われるようにアマツマラを離れた。
あとから父親であるテオドール王から今回の件の責任がレイに無い事と、罰を与えたことは聞かされたが、それで安心できることは無い。むしろ、自分が父親から叱責を受けたことでレイの事を逆恨みしているかもしれない。
余計に気が重くなる。
一応、面倒な相手ではあるが王族という事で失礼の無いように畏まった姿をしている。白のシャツを襟元まで締め、ほつれていないズボンをはき、エトネが磨いてくれた鎧を着込むのと馬車が止まったのは同時だった。
「ご主人さま。着いたよ」
キュイの手綱を握っていたレティが声を掛けるので、レイは幌の隙間から外へ出た。レイ達が辿りついたのは荘厳な建物の正面だった。日本で言う所の県庁なのか、武官だけでなく、文官と思しき制服を着た人たちが慌ただしく出入りをする。
「こちらが政所となっております。主であるスヴェン王子はここで政務中でございます」
ポニーから降りたカンネが建物の説明をするもレイは話半分に聞いていた。言葉を出し尽くしたのか、途切れた瞬間を見はからって尋ねる。
「それで、第二王子は僕との面会を希望しているのは分かりましたが、僕の仲間は同席してもいいんでしょうか」
その質問に対してカンネは首を横に振る。
「申し訳ありませんが、殿下はレイ殿と……そちらの方との面会を希望しております。それ以外の方はご遠慮いただきたく存じ上げます」
カンネが目線を送ったのは幌から覗いていたダリーシャスだった。リザ達の中で軽い緊張が走る。
「ふむ。俺をご所望か。ならば仕方ないな」
軽やかなステップで馬車を降りたダリーシャスが政所を見上げた。まるで戦いに赴く様な戦士の横顔を見せていた。
「ご主人様。私達は馬車にて待機しております。……いつでも動かせるようにしておきます」
「うん。よろしく頼む」
リザは後半をカンネに聞こえないように小声で言う。スヴェンの目的がレイとの面会では無くダリーシャスとの面会だとしたら、彼を連れてこの街を即座に脱出するという展開もあり得る。それとなく緊張を高めているリザ達が駐車場に向かうのを見届けてから、レイ達はカンネを先頭に政所へと入る。
オウリョウのみならず、近隣一帯を支配していることもあってか、政所の中は人でごった返していた。給金を受け取りに来た騎士や、陳情を訴える村人。商売の許可証をとる職人や、税を納める商人などで賑わうホールを抜けて、階段を上る。
レイはカンネに聞かれないように小声でダリーシャスに尋ねる。
「第二王子と面識はあるんですか」
「無論、あるとも」
「それじゃ、第二王子が何を考えて僕らを呼びつけたのか、その考えは分かりますか」
「そればっかりは、全く思いつかん」
肩を竦めたダリーシャスは顎に手を当てながら呟く。
「第二王子。スヴェン・ヴィーランドはあまり政ごとに興味を示す御仁では無い。シュウ王国内での勢力争いに俺やデゼルト国を使おうとはしないだろうし、ましてや叔父上たちからの協力を要請されたとしても受けるとは思えん。そう言う気風の御仁だからな」
つまり、これが何かしらの罠という可能性は少ないとダリーシャスは言う。だけど、レイはそれを鵜呑みにするわけには行かない。脱出できそうな窓や、通り過ぎるドアの隙間から室内の様子を確認しながら、来た道を覚えておく。
それを読んだかのようにカンネは階段を昇り、廊下を渡り、別の階段を昇りとジグザグに動く。しかしそれも終わった。これまでとは打って変わって静かなフロアの中央。それまでの部屋の扉とは違う、重厚な扉の前で彼女は足を止めた。警護をしている、全身鎧の騎士が直立不動の姿勢のまま身じろぎ一つしないから、てっきり彫像かと思ってしまう。
「殿下は中に?」
カンネの短い質問に騎士たちは頷くと、レイ達に鋭い視線を送った。正確にはレイ達の手にしている武器に視線を送っているのだ。
建物内では何も言われなかったが王子の前で帯剣しているわけには行かない。武器を手放すのは危険だが、仕方ないと思い武器をベルトから外そうとすると、
「ああ。大丈夫よ。彼らの武器は殿下が許可しているわ」
と、カンネが止めに入った。一瞬、承服しかねるような態度をした騎士たちだが、納得したように直立不動の姿勢に戻った。
「殿下との経緯は聞いているわ。武器を持たないで会うのは不安でしょ」
心を見透かしたかのように言うハーフリングは騎士によって扉を開けて貰い中へと入る。レイ達も続いた。
室内は魔法か何かで涼しくしているのか外の熱気とは無縁の世界だった。実直な人柄を表すようなシンプルな装飾しかない執務室の奥から声が掛かった。
「ご苦労さん、カンネ。そして、レイ。ようこそオウリョウへ」
執務室の最奥に待ち構えていたのは―――全身包帯を巻いたミイラ男だった。
読んで下さって、ありがとうございます。




