荒野
草原を抜けた先にあるのは荒野だ。
今度は草一つなく地平線まで太陽が焼け付けた赤い地面が続く。
「これを進むのか…」
当てもなく化物の所から逃げてきたが、少し軽率であったと考え、自然と言葉が溢れ、ジョンは佇んでいた。
すると「あの~、大丈夫ですか?」と後ろにあった大きな岩が言葉を発して立ち上がった。
「ひっ」
ジョンは声にならない声をあげて怯える。
その岩だと思っていた物はジョンの後ろで膝を抱えてただ座っていたのだ。
そしてそれは顔らしき部分でジョンを覗き込むように近づいてくる。
「ちかよるなぁーー!!」
とジョンはまた腰を抜かしてしまった。
「あぁ、驚かして申し訳ない。 ただ一人で大丈夫かなと思いまして、良ければ渡るの手伝いましょうか?」
「えっ?」
「僕が手で覆いながら運べば暑くないですし、速いですよ」
「お前は一体何なんだ…」
「僕? 僕はゴーレムですよ」
(ゴーレム? ゴーレムって確か岩で出来た人形の魔物とかじゃなかったか?)
「で、どうしますか?」
確かにこの魔物が言うとおり一人で歩けば途中で倒れてしまう可能性が高い。
かと言って手で覆う事が出来るという事は簡単に握り潰す事も出来る。
それに引き返せば何の問題も無い、ジョンはそう考えた。
考えはしたが彼はそうしない。
それは彼の好奇心からか、この魔物にも敵意を感じなかったからか、自分でも形容しがたい複雑な心理から出た行動であった。
「わかった、お願いしよう」
その言葉を伝えると乗ってと言わんばかりに魔物は片手を差し出してくる。
ジョンは安易に信用した訳ではない、だが少しの勇気で彼は魔物の手のひらへ乗っかった。
「決して私を潰すなよ」
「もちろんですよ、そういえばあなたのお名前は?」
「私、わたしは…人間だ」
「えっ! にんげん…本当に!?」
「おいおい、あまり興奮して揺らすな気持ち悪くなる!」
只でさえ疲労と不慣れな環境でストレスが溜まっていた為、つい大きな声を出してしまった。
「ごめんなさい、僕、人間を始めて見たから嬉しくって」
「あぁそうかい、私もゴーレムは始めて見たよ」
皮肉のつもりで返したがその返事は予想だにしないものであった。
「ゴーレムを始めて見たってそれは当たり前だよ、僕しかいないからね」
「僕しかいないっていうのはどうゆう事だ?」
「皆、死んじゃったよ、僕達は今その上を歩いてるんだよ」
この地平線まで続く地面が全て死体、その事実に言葉を失ってしまった。
「僕達は人間みたく同族同士で仲良く出来なかったから、いつの間にか皆地面に埋まってしまったんだ。君がいたらこの世界も変わっていたかも知れないね」
「いや、私がいても変わらんよ…」
「そうかな? 僕はそう思わないけどね」
「なぜ、そう思うんだ?」
「だって僕の手のひらに乗ってくれたじゃない」
「…」
そういって魔物は手をおろす、いつの間にか森に辿り着いていたらしい。
「人間、困ったらまたいつでも声をかけてね~」
私は小さくなっていく魔物の言葉を背に森へと入っていった。




