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4.

「ふーん……ヤタヌーク地方は……旧バラーレン国で……あらゆる生物のアルビノを最も高貴とし、それ以外を悪とする過激集団である……。ライカって過激集団かよ!ま、それっぽいな!」


 カイラはいくつかの文献を調べ、ヤタヌーク地方について記載したものを集めることに成功していた。


「兄ちゃーん、何してんの?」


「ヤタヌーク地方について調べてんだよ。白が高貴って思い込んでるやつららしい」


「白が高貴ー!?じいさんばあさんの色じゃねえか!そいつらバカだな!」


「女も男も働けるのは若いやつだけしな!シワシワなやつらをありがたがってどうすんだよ!」


「黒が1番高貴だろ?白が高貴ってなんだ?面白いなー!白いやつなんてヒョロいし弱いし最悪じゃねーか!男なら絶対使えねーな!」


「女だって黒い方がいいぜ!プロポーション抜群の子は大抵黒いからな!それに、家事だって力仕事も多いんだからさ、白いんじゃ仕事が出来ないだろ!」


「だよなー!しかも、そのアルビノとやらだけで交配を繰り返してるから、その地方は皆肌が弱くて男も女も頭から黒い布をかぶって黒い眼鏡をかけて仕事してるらしい」


「やっぱそいつらバカだなー!」


「そんなんじゃどうやって女を選ぶんだよ!好きな女も選べねーよな?」


「その地方の元王族だけは、日の光を克服した白い肌を持ってるらしくて、その元王族たちだけが、年に1回開催される祭りで様々な試練を潜り抜けた身体能力が高くて若い女を多数娶るらしい」


「強い女ってことか!そいつぁいいな!」


「ヤタヌーク地方のやつらもよく分かってんじゃねえか!女は強い方がいいよな!」


「多数娶る?それじゃ、普通のやつらが結婚できなくなるんじゃねえか?」


「そうらしい。普通のアルビノの男は肌も弱いし布をかぶらなきゃ畑仕事もできないし、そのせいで作業効率が落ちるから、あまり結婚できないんだってよ!」


「弱いやつが結婚できないのは仕方ないんじゃね?」


「いや、それって女が元王族のところに集中してるのが悪いんじゃ……?」


「それもあるな!元王族に多数娶らせるのをやめりゃいいんじゃねえか?……そもそも、そんなことしてヤタヌーク地方の女たちは怒らねえのか?浮気だ!って」


「それが、元王族の家に入った女たちは協力し合って家事を分担して子育てするらしい」


「なんだそりゃ?」


「家のことぐらい1人で出来ねーのか?」


「ま、やっぱり男だけじゃなくて女も弱いんだろうな」


「何がいいのかさっぱり分かんねーな?まあ、浮気し放題ってとこだけはいいが」


「でも、それも元王族だけだろー?俺、ヤタヌーク地方出身じゃなくて良かった!」


「それで元王族以外の普通のやつらはどうしてんだ?」


「元王族に選ばれなかった女は成人する時の身体能力によって順位付けされて、どこかの家と結婚することになるらしい」


「家との結婚?」


「ああ。書いてあることがいまいち分からないが……書いてある通りに読むなら、兄弟全員が1人の女と結婚することになるらしい」


「げ。兄ちゃんと嫁を共有ってことか?嫌だなー、それ」


「うへー、俺も嫌だわ!兄ちゃんと好みが合わなかったらどうすんだよ!」


「それな!」


「でも、旧バラーレン国は子どもの出産数が少なくて兄弟がいない家も多いらしい。だから結局、兄弟で折り合いをつけてうまくいく家も多いとか。それに、家との結婚だから当然その家の親父ともやるらしい」


「なんだー?それ。気持ち悪くないのか?」


「俺がどこかの家に婿入りしてその女とも母ちゃんともやるってことか……?それは悪くないかもな……」


「うへえ。30ぐらいのババアとか?俺は無理!」


「へんなのー」


「女は分かったけど、順位付けで下の方になった男の家ってどうなんだよ?」


「能力で上にならない限りずっと嫁はもらえないってよ」


「結局、男は働いて地位を上げろってことかー」


「やっぱ男は力がなくちゃな!」


「好きな女も選べないなんて可哀想な国だな!」


「だから戦争に負けたんだろうな!」


「俺たちは魔力は少ないけど、武力はすげーもんな!」


 (ん?あれ……?)


 この時、カイラは笑って頷きながらも少し違和感を覚えた。


 (こいつらが言ってるのって……父さんに俺が言ったことと同じだ……。こいつらも、自分たちが戦勝国だと思ってるんだ……。俺らは本当は敗戦国なのに……ユータナ王国に吸収された……)


 カイラはその夜、眠れなかった。


 (本当だ。父さんの言う通り、俺とライカは同じじゃねーか。ユータナ王国と戦って、広大な領地と領民を持つあいつらに負けた少数民族……。火の魔法で多数の敵の亡骸を築き上げたって……、そうか、あれは俺らの同胞か)


 でも、ライカが何を考えてるのかカイラには分からない。ライカはいつも優美に微笑んでいるように見えたし、誰にでも満遍なく接しているような気がする。


 (あいつは……同胞がユータナ王国にいっぱい殺されたって知らないのか?それとも、何か考えてるのか……?)


 想像の中で、いつも綺麗なライカのその横顔が、少し寒気を帯びるような不気味さを纏っているように感じられた。


 (でも、もう100年も前だ。俺はあまり実感がないし、ノーランダ地域だってもうそんな昔のことを覚えてるやつらはいない。ライカだってきっと知らないはずだ)


 カイラはそう思って、朝方、やっと眠りにつけたのである。


 次の日からもカイラは精力的にライカについて調べた。夏期休暇明けの学園の試験のことなんてすっかり忘れていた。


「貴族名鑑によると、ライラリグ家は……王国内でも魔力量が突出して高く……えっ!?あいつ公爵家!?えー!?なんでだ!?」


「どうした兄ちゃん!そんな大声出して!」


「俺らはこんな広い土地で伯爵家なのに、ヤタヌーク地方に住む白いやつらが公爵家だってよ!」


「ヤタヌーク地方ってどこ?」


「ここだよ。この地図のこのちっぽけなここ!」


「ちいさっ!」


「こんな狭いとこに人間が住めんのか?」


「公爵って?王家の親戚ってやつ?」


「あっ……!そうか!あいつ王家の遠縁なのか……?だからタイラーンド地域に別荘があったり出資したりして……る?」


 カイラがライカのことを調べれば調べるほど、何もかもが繋がっていく気がした。


「遠縁……。あいつの父親の姉がユータナ王家に嫁いでるのか。へー?ヤタヌーク地方って子どもが少ないんだろ?よく外にまで嫁いだな」


 (んー?こう見ると、ノーランダ地域からは王家に嫁いだことがないのか。だから俺らが1番上かあ。俺らはノーランダ地域ではここにあった元王家の末裔ってことか?)


「……んー?いや、ヤタヌーク地方は子どもが少ないって嘘じゃねーか!あいつの父親は何人兄弟がいんだよ!1、2……52?多すぎだろ!ノーランダ地域でもそんなやついねえぞ?どんだけ子沢山だよ!」


 この王国の貴族は結婚後、自身が生まれた時の家名と結婚相手の家名を順番に表記する。最後に表記されるのが婚姻後の相手の家名である。


 ライラリグ家の家名を持つ、成人済みの者だけで、王妃以外に52人であった。勿論、ライカは含まれていない。


「タカミリズ家は……もう爺ちゃんもいないし、爺ちゃんの兄弟は2人とも貴族の名前は捨ててるからな。父さんが当主になった時に父さんの兄弟も名前を捨てたし……。父さんと母さん、俺ら兄弟だけ……で8人か。まあ普通だな」


 それは貴族にしては普通の家系か、それよりちょっと少ない程度の人数であった。


「ライラリグ家は公爵当主が決まっても他の兄弟が名前を捨ててないのか?それともライカの兄弟が多いのか……?でも、学園にライカみたいなやつはいないし……」


 ライカのことが多少分かってきた気がするのに、ライカの家系については謎が深まるばかりである。


 最初はライカについて調べていたのに、同じ境遇だったこともあってか、カイラは自身についてのルーツも気になり始めていた。


 (なんで俺らの地域からは王家に嫁いでないんだ?逆に王家の嫁を貰ったっていいはずだが……。だが、ユータナ王国のやつらは白いから誰も結婚したがらないだろうな。そりゃ親戚にはならねえか。……ん?ユータナ王国はどうだ?あいつらも俺らと結婚したくない理由があったりして……。あいつらの価値基準はなんだ……?)


 カイラは紛うことなき成長期であった。


 課題の進捗や休み明けの試験の結果は大変なことになりそうであったが。

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