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厳重のリブラ 3

 斬り合い、受け止め、致命の一撃が入ると思った瞬間に重力の影響を受け、ヴァーゴは傷だらけになりつつもリブラへの猛攻を止めなかった。


(三十年!!)


 スキルをさらに使い、速度と重みの増した攻撃でリブラの巧みな動きを封じに行く。

 大きく振りかぶった両手の片方に魔法拳銃を握り、振り下ろす際に加重される中、撃ち放った魔法弾がリブラの脇腹をえぐった。


「素晴らしい!!」


 魔法拳銃そのものは重力負荷の影響を受けるが魔法弾はイメージを練り上げた魔力の塊だ。

 実体がないため重力の影響を受けず、また銃口から放たれるわけではないのでリブラの先読みの埒外から魔法弾が肉を穿った。

 これはゴランから譲り受けたスキル『ゴランの魔法銃術』とラッセルの発想の合わせ技。


 リブラは魔法拳銃を厄介と見たのか、ヴァーゴの全身に今までで最大の重力負荷を掛けてきた。

 地面に膝をつきそうになったヴァーゴにリブラが袈裟斬りを叩き込む。

 長剣が触れる直前、魔法拳銃から反動の魔法弾が撃ち出され、超高速で後退して回避した。


(五十年!!)


 全身に付与された重力がヴァーゴの肉を潰し、骨をきしませ、血が噴き出すと同時に修復されていく。

 みなぎる膂力は片手でリブラを切り裂ける域に達していたので、もう一方の手に魔法拳銃を握りしめた。


「楽しいぞ化け物め!」


 重力の加速を得たリブラの横薙ぎをデルフィンで受け止め、頭蓋めがけて魔法拳銃の引き鉄を引いた。

 即座に飛びのいたリブラを七つの魔法弾が追撃するかのように動いた。

 一つは速く真っすぐ、一つは弧を描いて緩やかに、一つは大きく跳ね上がって直上から直下に落ち、二つは左右に勢いよく飛び出してリブラの逃げ道をふさぐように、最後の二つは空中に停滞していた。

 奇妙な経路と異なる速度で飛んでくる魔法弾を警戒するリブラ目掛けて地面を蹴りつけ、飛びかかった。

 魔法弾の軌道を読みながら辛くもヴァーゴの重厚な剣撃を回避した直後、停滞していた二つの魔法弾が勢いよく射出され、一発がリブラの腿を貫いた。


 リブラは体勢を崩しつつも、大きな隙を見せたヴァーゴに斬りかかった。

 ヴァーゴはリブラに目もくれず、その場で地面に向けたまま魔法拳銃の引き鉄を引いた。

 数十もの魔法弾が銃口とは真逆に頭上に撃ちあげられ、ヴァーゴの魔法拳銃を持つ腕を斬り落としたリブラもろとも放射状に弧を描いて斜めに着弾、二人の全身を貫いた。


 血を吐きつつ、リブラが背後からヴァーゴの首を落としに掛かった。

 その瞬間、ヴァーゴの背に十を超える魔力で形成された青白い魔法拳銃が出現した。


「!?」


 驚愕に顔が歪んだリブラは魔力で形成された魔法拳銃の一斉射を受け、吹き飛んだ。

 地面に打ち付けられたリブラは全身から血を流しながら呻き声をあげた。

 ヴァーゴはゆっくりと振り返り、這いつくばって見上げてくる男に視線を合わせた。


「熱くなるタイプで助かったぜ」

「どういう、ことだ……。今の銃撃は……」

「読めなかった、か?」


 リブラは額に汗を浮かべ、ヴァーゴを睨みつけた。

 ヴァーゴの片目に圧が掛かり、眼球が潰れた。


(三百年!!)


 あふれるほどの生命力の奔流がヴァーゴの全身を駆け巡った。

 空いた穴はふさがり、斬られた腕の出血も止まった。


「三百年、だと……?」

「片目くらいくれてやらあ」

「馬鹿め!」


 リブラは再びヴァーゴを睨みつけた。

 だが、ヴァーゴの残されたもう片方の眼球も、その頭蓋も潰れることはなかった。


「なぜ、だ……」

「重力操作ってのはこうやるのか?」


 ヴァーゴが残った目で睨みつけるとリブラとその周囲の地面が大きく沈んだ。


「げあっ……!」


 三百年分の生命力を込めたスキルはリブラの全身の骨を砕き、肉を潰した。


「なぜ、使える……なぜ……」

「てめえが知る必要はねえ」


 リブラは何度もヴァーゴの眼球や頭部に重力負荷を掛けようと試みた。

 だが、ヴァーゴが自身に掛けた重力軽減のスキルによって打ち消された。


 ヴァーゴは残った腕の手の甲を持ち上げ、はめられた褐色の指輪に感謝した。

 ラッセルとビジーが丹精込めて作り上げた『二重底の指輪』。

 それは装着者の頭の奥底、二重底でもう一つの思考を行うための魔導具。

 ラッセルが想定していた最悪のケース、思考を盗み見るスキルに対抗するための特別な魔導具だった。


 リブラの重力操作のスキルを目にした時から圧倒的な不利を覚悟していた。

 その気になれば頭部を潰されて終わりだ。

 対抗するには何度もスキルを使わせ、観察し、分析し、学習するしかないと結論づけた。

 全身にスキルを食らい、その特徴と要領を解析し終わったとき、ヴァーゴは新たなスキルを身に付けた。


 ヴァーゴは魔剣デルフィンを振り上げた。


「てめえの敗因は単純だぜ。命で遊んだことだ」


 これまでの旅を共にした仲間たちの顔が脳裏をよぎり、ヴァーゴは剣を振り下ろした。


「雷鳴剣!!」


 全生命力を込めた巨大な光の雷撃が、横たわってうめく男を灰にした。

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