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襲撃

 深夜。

 複数の商会に雇われた殺し屋たちの中にヴァーゴがいた。

 顔を隠す者たちの中でヴァーゴだけが旅装束の冒険者のような格好だった。

 グッドマンやゴランと旅をしていたときの格好、それは今夜が旅の終着点であり、これ以上、自分を隠す必要がないことを意味していた。


「お前、どこの商会の手の者だ?」

「そんなことを知ってどうする? 目的は同じだろう?」

「……まあいい」


 殺気を込めた視線で殺し屋の問いに答えた。

 刺客はヴァーゴを含めて七人。

 ヴァーゴ以外はいずれも身軽な装束に細身の体を包んでいた。

 暗殺者は標的を殺すことに特化している。

 身軽さ、素早さ、しなやかさ、隠密性。

 それだけあれば事足りる。


 だがヴァーゴだけは違った。

 鍛え上げられた筋肉を全身にまとい、野蛮で強欲なならず者然とした見た目だった。

 それは何がしかの計画でも作戦でもない。

 ヴァーゴが自分のやり方で全力を出すための格好がその形だった。


「いくぞ」


 まとめ役らしき男が指揮をとり、リーブロ商会の豪華な屋敷へ走り出した。

 足音もなく、通り過ぎた箇所の草が揺れるだけ。

 屋敷の敷地内を物陰に隠れながら疾走する。

 三人は地面を、三人は屋根の上を駆けた。

 ヴァーゴは六人の後を追いながら適時、屋根の上にのぼり警戒した。


 標的であるリブラは今回の襲撃を知っているはずだ。

 これまでもすべての刺客を返り討ちにしてきたことを考えると、奴は何がしかの方法で刺客に襲われることを察知している。

 つまり、物陰に隠れて近づいたところで、リブラは刺客を返り討ちにする前提で待ち構えているということ。

 寝首を搔けるのならすでにリブラはこの世にいない。

 それができない相手に暗殺者をいくら送り込んだところで結果は同じだ。


「最上階の部屋だ。そこに標的の──」

「中庭だ」


 指揮役の男の言葉を訂正した。


「なぜわかる?」

「奴は俺たちが来ることを知っている。はなから返り討ちにするつもりだ。屋敷を無駄に壊したくはないだろ」

「……先に中庭を確認してから最上階を目指す」


 他の刺客たちが頷きで返した。

 六人の刺客が我先にと無音の駆け足で中庭へ向かった。

 ヴァーゴは深呼吸をしてから後を追った。


 果たして、中庭にリブラがいた。

 月の光に照らされて佇んでいる姿は戦士の彫刻のようだった。

 リブラは上裸で鍛えられた肉体を黒い布で締め付けていた。

 顔には横一文字の傷跡がある。

 ヴァーゴの古い記憶の姿と重なった。


「多いな。……妙な奴も混じっている」


 低い声で暗鬱にも感じる声音で吐き出した。

 片手にさげた長剣が月の光を反射した。


「……!」


 なんの合図もなく、刺客たちが一斉に駆け出した。

 飛び道具の暗器を難なくかわし、短剣の一撃を受け止めて蹴り飛ばした。

 続く刺客の攻撃も受け止めて力任せに押しのけ、リブラを囲うように刺客が散開した。

 刺客に比べ、リブラからは殺意の欠片も感じられなかった。

 ヴァーゴは警戒しながらゆっくり歩み寄った。


「くだらん」


 リブラが振り上げた長剣を地面すれすれに下ろした瞬間、ヴァーゴは膝をつき、刺客たちは地面に這いつくばった。

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