売れ筋商品
ゲンナル商会との取引契約を結んだヴァーゴは、さっそく加工された商品を商会に卸した。
金持ち向けの高級品のため、商会がいくつか所有する商店の中でも金持ち向けの店舗に商品を置かせてもらえることになった。
ヴァーゴの目的はリーブロ商会に目を付けられるくらいに目立つこと。
そのため、売れ行きのいい商品を提供する必要があった。
売上数が多く、ウワサになりやすいものといえば日用品だ。
ラッセルに加工を依頼し、そこそこに上質なナイフや石鹸、洗剤などを通常よりも安めの適正価格で売る。
ゲンナル商会への仲介料を支払うと利益はほとんど出ないがそれは主目的ではない。
数が売れて、ウワサになればいい。
ひと月もしないうちにヴァーゴの卸す加工された商品群はゲンナル商店の売れ筋商品となった。
「うまく動いているみたいじゃないか」
「はい。我ながら順調だと思います」
「……フフ」
ラッセルはフォークで刺した生ハムを口に放り込み、ビジーはジュースを飲みながらヴァーゴの格好と口調に小さく笑った。
ヴァーゴは柔らかいパンをちぎって食べながら、
「新しい知らせはありますか?」
「この街に王都の騎士様が派遣されてるのは知ってるかい?」
「ほぉ……王国騎士ですか」
かつてグッドマンが出向を命じられたように、この街にも監査役として王国騎士が派遣されているらしい。
王家お抱えの王国騎士が出張ってくるということはそれなりの理由があるということ。
この街の領主の目付け役と捉えて問題ないだろう。
「理由は?」
「それについて突っ込んで調べてみた。もう少しで遠洋祭があるよね?」
「そのようですね」
「これの荷下ろしで、ある粉っぽいものを仕入れるみたいだよ」
「ふむ……」
“粉っぽい”と濁してはいるが要するに麻薬だ。
酒は一般に広く飲まれているが、それ以外の規制されるような嗜好品は利益率が高い。
当然、麻薬を取り扱っているのはこの街随一の権力を持つリーブロ商会で間違いないだろう。
「その割にこの街は健全な雰囲気ですけどねぇ」
「そこが賢いところさ。この街では広めていないんだ。王都に近い都市群にも流通させてない」
「足がつかないように、ですか」
「ただ、お偉いさんの間では情報が出回っているはずさ。じゃなきゃ騎士様が派遣される必要がないからね。あくまでポーズってわけだ」
「なるほど……」
大っぴらに違法な麻薬を売買されては王国の威厳に傷がつく。
あくまで牽制として王国騎士を派遣し、やりすぎるなと警告しているのだ。
こういった金と権力の権謀術数について、ヴァーゴは特に関心がなかった。
復讐を成し遂げるために麻薬の流通を止める必要性がない。
ヴァーゴは歓楽都市エクサリドで麻薬入りの酒が出回っていたことを思い出したがすぐに頭の中から追い出した。
「念のため、監査役の騎士様には接触してみますか」
「そうだね。あまり深入りしても火傷するだけだろうさ。あんたの場合、魔導具を活かしたルートで行けるだろうからね」
「頭の片隅に入れておきましょう」
ヴァーゴはグラスの水を飲み干して席を立った。




