魔導具を売るには
街の大通りで魔導具販売をしている露店を調べた結果、ウワサどおり売れ行きが良くないことがわかった。
だが、商人ギルドや魔導具師に聞いた話を総合してみるに需要がないわけでは決してない。
要するに売り方が悪いのだ、とヴァーゴは結論づけた。
宿にもどってベッドに体を投げ出しているヴァーゴにデルフィンが声を掛けた。
『どうすんだい、相棒?』
「どうもこうもねえ。売るしかねえんだ」
『あの暇を持て余している露店連中の一人に加わるのかい?』
「冗談じゃねえ。あんなところで店を開いたって売れるもんも売れねえ」
ヴァーゴは目をつぶって頭の中でぐるぐると考えていた。
便利な魔導具の知識はある。
その使い方や適正価格もきっちりわかる。
だがそもそものところ、どうすれば金持ちの客に魔導具を売れるのか、根本的な部分のアイディアが思いつかなかった。
「うーん……」
『悩んでるみたいだな、相棒』
「こんなことならマーカス商会に潜入していた時にもっと勉強しておけば良かったぜ」
『相棒から出たとは思えねーセリフだな!』
「うるせえ」
ラッセルたちと分かれ、一人で行き詰った状況ではデルフィンの軽口も数少ない気晴らしになった。
そんなヴァーゴを見かねて、デルフィンは得意げに話しかけた。
『相棒がどうしてもって頼むなら俺様がヒントくらいはくれてやれるぜ?』
「魔剣のてめえにそんなことが分かんのかよ」
『俺様だって伊達に長生きしてるわけじゃねーんだ。お前さんの何十倍もの時間、人間っつーやつを見てきてる』
「……チッ」
ベッドから起き上がり、ウンザリした顔で褐色の魔剣に目を落とした。
「魔剣のデルフィン様よ、どうか愚かな俺に知恵を貸してくださいやがれ、ちくしょうが」
『しょーがねーな~! 特別だぜ、相棒!』
デルフィンの得意げな声にヴァーゴは眉間に寄っていたシワをさらに深くした。
『相棒は魔導具を金持ちに売る、これが目的でいーんだよな?』
「おう」
『じゃあ金持ちっつーのはどんなやつだい?』
「金持ちか……」
通常、金持ちと言えば領民から税を取り上げている領主、つまりは貴族が思い浮かぶだろう。
次に金持ちな人間と言えば、商売で大きく成功した者、つまりは商人だ。
お宝を探し当てた冒険者や顕著な活躍で有名になった冒険者などは例外として除外する。
「貴族に商人、か……?」
『その通りだぜ!』
「だがよ、この街の貴族ってーと領主だ。そいつはドクヘビと繋がっていると考えたほうがいい。この街で一番成功している商人はリーブロ商会の会長だ。こいつはドクヘビ本人のはずだ。他の金持ちの商人もリーブロ商会の息が掛かってると思っていい。いきなりそんな奴らに接触したら怪しまれておしまいだ」
『よくわかってるじゃねーか!』
「おい、てめえ……」
頭を使って導き出した金持ちな人間を肯定されただけでは何らヒントにならない。
ヴァーゴが文句を言おうとすると、
『相棒、そこまでわかってるなら答えはお前さんの中にあるぜ!』
「俺の中に……?」
『お前さんは知ってるはずだ。目標に近づくために、無関係だが同業の仕事から近づいていったやり方を!』
「……!?」
デルフィンの言葉にヴァーゴは目から鱗が落ちた気分だった。
「なんでこんな単純なことに気付かなかったんだ……」
『そりゃー自分で考えるのと、言われたことをやるだけの違いだわな!』
「気に食わねえが、やっぱりグッドマンは切れ者だったんだな」
デルフィンのヒントから光明が見えたヴァーゴは不敵な笑みを浮かべた。




