実際の市場調査
魔導具を扱う商人として活動を始めるヴァーゴには売り場もツテもない。
商人ギルドで聞いた話では魔導具を扱う専門店は街に一軒もなく、商人から買い取った魔導具を大通りの露店で販売している者が多少いるくらいだった。
ヴァーゴは庶民の服を着込んで魔導具を販売している露店の様子を調べることにした。
「安くて便利な魔導具はいかがー?」
大通りのはずれ、魔導具を扱う露店が固まっている場所があった。
通りすぎる庶民は呼びこみの言葉に見向きもせずに去っていく。
ヴァーゴは露店の前で立ち止まり、売られている魔導具に目を通した。
「おっ、お客さんいらっしゃい! 便利な魔導具がいっぱいあるよ!」
「ふむ、このティーポットはどんな魔導具ですか?」
「お目が高いね! それは中のお茶が冷えにくい魔導具さ。あったかいお茶をゆっくり飲むならこの魔導具で決まりだね!」
「値段はいくらです?」
「たったの金貨五枚さ!」
「ふーむ……」
ヴァーゴは脳裏でスキル『魔導具の知識』と照らし合わせた。
腰元、ズボンのベルト付近に『アイテムボックス』から柄頭だけ出したデルフィンがささやいた。
(ぼったくりだぜ、相棒!)
(わかってる)
スキル『魔導具の知識』と照らし合わせた結果、このティーポットが割高なのはすぐに理解できた。
だが、デルフィンがぼったくりとまで表現したのはこの魔導具の出来が悪いからだ。
お茶は乾燥させた茶葉を熱湯でふやかして風味のよい飲みものになる。
いつだかに聞いた話だと茶葉をふやかす時間には細かい決まりがあり、時間が短くても長すぎてもダメだという。
つまり、茶葉と熱湯を入れて冷めにくくしたところで茶葉の風味はどんどん熱湯に煮だされていき、味の濃すぎるマズい飲みものになってしまう。
その点でこの魔導具は出来損ないと言える。
「こっちの手鏡はどういう魔導具ですか?」
「お、それはすごい魔導具ですよ! なんと、自分の後頭部を映す手鏡なんです!」
「後頭部? 頭の後ろ側、ということですか?」
「その通りです! 髪型を整えるときに自分で頭の後ろは見えませんよね? そんな時に役立つのがこの手鏡! 特に長い髪の女性なら髪を結うのに便利ですね」
「片手で手鏡を持って、片手で髪を結うんですか?」
「ん、んー……まあ慣れてれば片手でも髪型くらい整えられますよ! お値段なんと金貨十枚!」
(相棒、こいつはゴミだぜ)
(役に立たねえもん売ってんな)
金持ちであれば侍女や使用人に任せればいいし、庶民であっても別の者に手伝ってもらえば済む話である。
「ちなみにこういう商品を買っていくお客さんってどれくらいいるんです?」
「え、うーん……あ、いや結構いますよ! よく売れるんです!」
店主の態度から滅多に売れないことがうかがえた。
その後もヴァーゴは魔導具を販売している露店を興味深そうな態度でまわり、売られている商品と売れ行きを調べた。




