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三人旅

 夜の街道を逃げていたビジーとラッセルに追いついたヴァーゴは事の顛末を説明した。

 ビジーは暗い表情でうつむき、ラッセルは声を押し殺して涙を流した。


 夜が明け、ヴァーゴは二人に自分の目的を伝えた。

 両親を惨殺した男を殺すこと。

 そして二人にはこの復讐に付き合う義理はないということ。

 グッドマンとゴランとは互いに復讐を手伝うという互助の関係にあった。

 ビジーとラッセルに貸しはあっても返すほどのものではない。

 近くの村や街まで護衛をしたら後は好きにすればいい。

 その言葉に反論したのはビジーだった。


「ヴァーゴは助けてくれた。わたしも助ける」

「ガキが命を張るほどの恩じゃねえ。グッドマンもジジイも自分の目的のために命を懸けただけだ」


 一夜明けて落ち着きを取り戻したラッセルは条件付きでビジーの意見に賛同した。


「助けてくれた恩は返すさ。だけど、危ないと思ったらあんたを見捨ててビジーを連れて逃げるよ」

「てめえにそれだけの技量があんのか?」

「逃げ足だけは誰にも負けないさ。女関係でこじれたらいつも逃げてきたからね」


 妙な説得力のある言葉にヴァーゴとビジーはあきれ顔になった。

 同時にヴァーゴはラッセルの性格についての認識を新たにした。

 グッドマンやゴランほどではないが、この女たらしも人並みの情はあるらしい。

 怨敵を殺すための旅だというのに、出会う連中がこぞってお人好しであることにヴァーゴはため息をついた。


「好きにしろ。だが俺はてめえらの助力を当てにしねえ」

「ああ、そのつもりでいてくれ。俺もビジーもまだまだ死ぬつもりはないしね。できる範囲で勝手に手伝うさ」

「うん。かってに手伝う」


 ビジーは両手でコブシを作り、胸の前にかかげた。


(また楽しい旅になりそうだな、相棒!)

(冗談じゃねえや)


 腰元のデルフィンには無下に返しつつ、悪くはない気分だった。




 道中、野盗を殺して寿命を回復したヴァーゴはゴランから引き継いだものを確認した。

 ドワーフ族としての寿命の長さ。

 ゴランが積み上げてきたスキル『ゴランの魔法銃術』。

 同じくスキル『魔導具の知識』。

 くしくもゴランから譲り受けた魔法拳銃が形見になった。


「師匠から引き継いだスキルねぇ」

「てめえもあのジジイから魔法銃の使い方を習ってんのか?」

「メインは魔導具の製作、加工技術だけど、護身のために一応ね。ただ師匠の魔法銃の使い方は荒いからなぁ」

「どういう意味だ?」


 ラッセルは肩をすくめて説明した。


「そのままの意味さ。師匠はドワーフ族だろ? そもそもの体が頑丈だから普通の人間じゃマネできないような強引な使い方が多い」

「てめえは違うのか?」

「あたり前さ。師匠の使い方をマネたら俺の体が持たないよ」


 ラッセルは『アイテムボックス』から魔法拳銃を取り出した。

 街道沿いの林の中、誰の目もない。


「音を消すとかは知ってるだろ?」

「ああ」

「それは序の口で、もっと工夫して魔法弾を撃つのが俺のやり方さ」


 ラッセルは「見てなよ」と言って近くの木へ魔法銃を向けた。

 青白い光が魔法銃に込められ、引き鉄が引かれた。

 放たれた弾丸はゆるく弧を描いて目標の木に銃痕をつくった。


「な? 面白いだろ?」

「軌道を変えただけじゃねえか」

「そこが大事なんだよ。誰しも銃弾ってのはまっすぐに飛ぶと思ってる。普通の銃が一般的だからね。だけど魔法銃はイメージで弾を飛ばす。細かく言うと魔法銃の銃口から弾が出ているように見えて、実はそこはあまり重要じゃない」

「銃口から出てない……?」

「次はさっきのを応用した撃ち方だ。見てなよ」


 ラッセルは再び木に向かって魔法拳銃を構えた。

 青白い光が収束し、今度は一度の引きで何発もの魔法弾が放たれた。

 いくつもの魔法弾はそれぞれ異なる角度で弧を描き、異なる速度で立て続けに木に穴を穿った。


「どうだい?」

「ふむ、なるほど……」

「軌道もそうだけど弾の速度も変幻自在、そこが魔法銃の強みってわけさ」

「たしかにこれはゴランの撃ち方とは違うな」

「だろ? まあ師匠が特殊すぎるだけなんだけどね」


 ラッセルは愉快そうに笑って、思い出したかのようにビジーを呼んだ。

 座って干し芋をかじっていたビジーはてとてと歩いてきた。


「なに、クズ師匠?」

「お前のアレも見せてあげなよ」

「うん。わかった」


 干し芋を食べ終えたビジーは二人の前に立ち、両手のひらを胸の前にかざした。

 すると、うっすらと青白い魔法拳銃が浮かび上がった。


「こいつは……」

「すごいだろ? 魔力で作り上げた魔法銃だ。器用に魔力操作ができなければマネできない。ビジーの魔法使いとしての才能と魔導具師としての知識が合わさって初めてできる芸当さ」


 弟子の特技を自慢げに語るラッセルの言葉は聞き流し、ヴァーゴはビジーの作り出した魔力による魔法拳銃をじっくりと観察した。

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