一流の魔導具師の戦い方
「ジジイを殺せ! 逃げた男を追え!」
山賊の頭領が大声で叫ぶとゴランの視界のあらゆる方向から木矢や銃弾が飛んできた。
風を切ってゴランに襲い掛かった無数の飛び道具はしかし、見えない壁に弾かれて地面に落ちた。
ゴランを球状に保護する魔導具が発動していた。
「このジジイ……ッ!?」
「老兵は歴戦の生き残りじゃ、バカモンが」
構えていた魔法長銃に収束していく青白い光が凝縮、停止。
先端から極大の青白い閃光が射出された。
直径は大の大人二人が両手を広げたより広い、殲滅の円柱。
とっさに避けようとした頭領の片手の指先以外を丸ごと滅し、背後の砦の大部分を飲み込み、さらに後ろの山々ごと消し飛ばした。
巨大な消滅の光はその威力に見合わない静かさでゴランの視界の正面を更地にした。
大きくえぐれた地面や砦には赤く溶けた土や岩だけが残された。
強烈な光と直後の惨状、あまりに一瞬の出来事に我を忘れていた山賊の残党が声をあげた。
「こ、殺せー!」
「ジジイを殺せ!」
「ぶった切れー!」
飛び道具は効かないと判断した山賊どもは一斉にゴランに斬りかかった。
ゴランは魔法長銃から手を放し、落とすように『アイテムボックス』に収納した。
代わりに肘を持ち上げるように『アイテムボックス』から二丁の魔法拳銃を取り出した。
山賊たちが振りかざした長剣や曲刀は地面を叩いた。
音もなく、両腕の魔法拳銃で反動目的の弾丸を放っていたゴランは山賊どもの斜め中空に飛んでいた。
距離が完全に離れる前に片手を向け、魔法拳銃から撃ち出されたのは火球の山。
ゴランを見失った山賊たちは火球の雨に全身を焼かれ絶叫した。
皮鎧を身に付けた山賊が地面に着地するのを見越して斧で横殴りに攻撃を仕掛けた。
予見していたゴランはもう片方の魔法拳銃を斧に触れる寸前に撃ち放った。
山賊の斧は魔法拳銃を叩き折ることもできず、白い煙をあげながら腐り落ちた。
金属腐蝕の魔法弾。
長い棒だけを振り抜く形となった山賊は、腹に密着した銃口から赤い光を撃ち込まれた。
「あ、あ……あぢ、ぃ」
山賊は両手で頭を抱えた。
苦痛に歪む顔から眼球がこぼれ落ち、穴という穴から高温に溶けた血肉をまき散らして泥人形のように崩れ落ちた。
動きを止めた隙をついて長剣や斧で襲いくる山賊どもを、まるで虫を殺すように一発ずつ凍らせ、溶かし、圧縮し、破裂させ、風穴を空けて駆除していった。
恐怖に慄き、背中を見せた山賊には逆さに開いた『アイテムボックス』から落ちてきた魔法長銃の狙い撃ちで即座かつ正確に頭部を爆散させた。
圧倒的な戦いに勝てないと悟った残党は散り散りに逃げ始めた。
しかし、二丁の魔法拳銃による立体的な高速の軌道で一人ずつ確実に破壊していく。
逃げる下衆どもを駆逐し、広場に降り立ったゴランのふくらはぎに痛みが走った。
「くっ……!」
追撃は防壁の魔導具がはじき、魔法長銃を取り出したゴランは攻撃が飛んできた砦の残り、その上空へと銃口を向けた。
黄色い光が収束、凝縮。
魔法弾を放った直後、半壊した砦の残存部の直上に巨大な岩の塊が生み出された。
音もなく落下、砦と内部に潜んでいた山賊ごと押し潰した。
わずかな悲鳴が漏れた後、巨大岩の下の残骸から赤い血が流れ出てきた。
あたり一帯に静寂が満ちた。
パチパチとたき火の音だけが響く。
死体と肉片と血の海の真ん中で、ゴランは膝をついた。
痛みが這い上がってくるような感覚に襲われ、受けた攻撃の種類を確認した。
地面には木矢が刺さっており、傷口を確認すると裂傷の周囲が深い緑色に変色していた。




