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ラッセル救出作戦 2

 身代金のプリズマダイトに取引対象である人質がそろった。


「よし。魔導具師は危なくていけねえ。お前、剣を置いて鉱石を持ってこい。ゆっくりだ。こっちも男を向かわせる。……おい!」


 頭領の男が叫ぶと手下の山賊がぶかぶかのマントを羽織った奴隷らしき少年を連れてきた。

 青白い表情はうつろで、手下の山賊に耳元で何かを命令された。

 裸足の少年は栄養が不足しているせいか、やせ細った手足でラッセルの服をつかんだ。

 後ろ手に拘束されたラッセルは少年とともに、ゆっくり歩きだした。

 ヴァーゴは腰のデルフィンをゴランに預け、青い鉱石を手に載せながら同じくゆっくりと歩き出した。


「ブツをガキに渡すのが先だ。妙なマネしたら撃ち殺すからな」


 徐々に縮まっていく距離。

 ラッセルの顔には不安の色が浮かんでいた。

 ヴァーゴは無表情に、しかし周囲に警戒しながら近づいていった。

 互いに手がとどく距離で立ち止まった。

 その時、目を見開いたゴランがデルフィンに小声で伝えた。


「ラッセルを守らせろ!」

(相棒! そいつを守れ!)

(──!?)


 脳内で響いたデルフィンの声に即座に反応したヴァーゴはラッセルを奪い取り、体を反転、抱き込み、山賊たちの目から隠した。


(『十年』!)


 ラッセルに覆いかぶさると同時にスキルを発動させた。

 直後、やせ細った少年のマントの内側が発光し、爆発した。

 轟音が響き渡り、爆風と衝撃波がヴァーゴに襲い掛かった。


「クッ……!」


 土煙が立ち込め、ヴァーゴとラッセルの姿が消えた。

 ヴァーゴの背中は火傷でただれ、爆発物の破片が全面に突き刺さった。

 痛みはあれど、ヴァーゴの傷はスキルで向上した異常なまでの自然治癒力で回復していく。

 土煙が晴れたときにはヴァーゴの傷は完治していた。

 ヴァーゴの背後、爆発した地面はえぐれ、周囲に少年だった肉片が散らばっていた。


「マジかよ!? あの野郎、防ぎやがった!」

「おい……話が違うじゃねえかよ」

「わりぃな、交渉内容を言い間違えたわ。プリズマダイトを置いてとっととうせろ」


 頭領の男と手下どもが武器を構えた。

 プリズマダイトの頑丈さを見越して人質のラッセルもろとも吹き飛ばす算段だったようだ。

 ヴァーゴが全身に力を込めようとした時、後方から低い声が聞こえた。


「爆発の魔導具を、子供に巻き付けて使ったな……?」


 常に冷静で合理的に行動するゴランから憤怒の威圧感がにじみ出ていた。

 目つきは鋭く、噛み締めた歯は今にも砕けそうだ。


(相棒! もどれ!)


 瞬時にゴランの元へ跳躍したヴァーゴは、山賊の頭領から目を離さないゴランからデルフィンを受け取った。

 これほど感情的になっているゴランは初めてだ。

 殺意をあらわにした時のグッドマンにも劣らない重圧。

 ヴァーゴは即座に理解した。

 一流の魔導具師として愛してやまない魔導具を、よりにもよって子供を爆殺する前提で使ったことが許せないのだろう。

 職人としての矜持が先ほどの魔導具の使い方を許せなかったのだ。


「ゆけ。そやつとビジーを連れて街を出ろ」


 有無を言わせぬ低い声にヴァーゴは返事もせず従った。

 プリズマダイトを『アイテムボックス』に収納し、ラッセルを担いで強靭な脚力で駆け出した。


「おいてめえ! 逃げんじゃねえ!」


 すでに小さくなったヴァーゴの背中に怒鳴り声をあげた大男の視線をゴランが遮った。

『アイテムボックス』から魔法長銃を取り出し、


「貴様ら下衆の相手はわしじゃ」


 片足を地面につき、銃を構えた。

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