解決策
マーブルの話が終わり、すべてが明るみに出た今、問題はラッセルの救助と山賊の対処だった。
「んで、てめえの妻が死ぬまでラッセルを囚われの身にしようってんじゃねえよな?」
「も、もちろんです! 妻にはラッセル殿が亡くなったことにして諦めてもらえれば良いだけで、ラッセル殿には逃げていただくつもりでした」
「じゃあなぜそうしない? 冒険者が揃ってんだろう?」
「山賊……「鉄錆の剣」の規模が大きくなりすぎてしまったのです。野盗が安全に暮らせることなどまずありません。ところが、このテアーズ近郊で強盗する分には命を落とすことがほとんどないことがウワサになったのでしょう。この一年ほどで山賊の数が増え、また荷馬車を襲う頻度も増えました。今は冒険者たちで対処できていますが、このまま山賊が増え続ければ……」
「街そのものに攻め込んでくるやもしれぬ、というわけか……」
「おっしゃる通りです……」
ふむ、とゴランは腕を組んで深いため息をついた。
街の事情と仕組みはわかった。
ラッセルが山賊にさらわれた経緯を理解も同情もできた。
だが領主マーブルは引き際を見誤った。
調子づいた山賊が討伐できる規模のうちに、この自作自演を終わらせる必要があった。
その点において、領主マーブルの罪は取り返しのつかないものとなった。
「プリズマダイトを要求してきたのはいつからじゃ?」
「ラッセル殿がさらわれて数ヶ月が経ってからです。このような大胆な要求をしてきたことを考えますと、おそらく、その頃にはもう「鉄錆」の規模が大きくなっていたのでしょう」
「ケッ、イカサマをしたツケを払う時が来ただけじゃねえか。そういうの、身から出た錆っつーらしいぜ」
「返す言葉もありません……」
マーブルは親にこっぴどく叱られた子供のように小さくなっていた。
「で、どうすんだよ?」
「バカ弟子を助ける」
「当然だ。そのためにこんなとこまで来てんだ。街は見捨てんのか、って話だ」
「そこが問題よのぉ……」
ゴランは目をつぶって考え込んだ。
ラッセルを救い出すことがゴランとヴァーゴの目的だ。
逆に言えばラッセルさえ救えれば後は逃げればいいだけの話。
ラッセルという人質を失った山賊が、いずれ戦力を増強してテアーズの街に攻め込んできてもゴランたちが責を負うことではない。
領主マーブルの尻ぬぐいまでしてやる義理はない。
「わしは元来、お人好しではない。わしとラッセルだけの問題なら迷わず見捨てただろう」
ゴランは隣にちょこんと座るビジーに顔を向けた。
「ビジー、この街は好きか?」
問われたビジーは穢れのない澄んだ瞳でゴランを見上げた。
「……すき」
「そういうことだ、ヴァーゴ」
「いまさら驚かねえよ。てめえらが砂糖菓子より甘ったるいっつーことは嫌というほど身に染みてる」
こうなることを予期していたかのように、ヴァーゴは鼻を鳴らしただけで済ませた。
「マーブル、山賊を討伐してラッセルを救出する。対価は求めんが代償も支払わん。この街の行く末は貴殿の力でなんとかするんだな」
ゴランは領主マーブルに山賊討伐を約束する代わりに、交渉材料であるプリズマダイトを借り受けた。




