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水中世界のデレリクト  作者: 雪峰
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第21話.探索者とダンジョンと

『プルウィア、次は何を作る? 命令を』


 一瞬で豪華絢爛な円卓を作り上げたプルウィアは、手のひらを緑色に発行させて俺を見つめていた。


『ちょ、ちょっと待ってくれ。少し考えるから』

『承知。プルウィア、待機して命令を待つ』


 遺跡に開いた大穴から繋がった、謎の空間から連れて来た人工精霊プルウィア。

 建築用に作られたというその力は、あまりにも未知だった。


 本来、目玉が飛び出るような金額のクラフトキットを買わなければ出来ないような芸当が、目の前で行われたのだ。

 ちょっと怖くなるのも無理はない。タダより高い物はないのだから。


『プルちゃんすごい、どんな魔法を使ったの?』

『ブモー』


 シーシャが瞳を輝かせる隣で、俺は少しでも情報を得ようと端末を取り出し、


 ―ピロロロロロ……


 た、ところで、通知が来ていた。

 いや、通知じゃなくてこれは着信!?


『スイレンさん!?』


 スイレンさんは前回の地上での探索でお世話になった、氷魔法使いの探索者だ。

 探索同行のお礼として、ダンジョン内で通信が出来るようになるデバイスを設定してもらったんだった。


 ちょっと電話してくると言ってプルウィア達から離れ、通話を取る。

 端末の向こうから明るい声が聞こえてきた。


「こんにちは、先輩! この前ミズキ先輩に教えてもらったお店のフード、ほのちゃん喜んでくれてますよ」

『良かったです』

「それでまた相談が……って、敬語じゃなくて良いって言ったじゃないですかー」

『はは、慣れたらね……』


 色々あってスイレンさんは俺をテイマーの先輩と認識し、彼女のテイムした火蛇「ほのちゃん」の相談をしたがっているみたいだった。


『力になりたいけど、今ダンジョンだからあんまり時間は取れなくて』

「え!? そうなんですか? すみません、じゃあまた改めますね」

『あ、待ってスイレンさん。変な事聞くんですけど……ダンジョンから奇妙な場所に繋がった、みたいなことってあります?』

「え? 何ですかそれ」


 俺はスイレンさんに今の状況を手短に説明した。


「……ええ……!? 突っ込みたい事がいっぱいあるんですけど……わたしもそっちに行って状況を確認したすぎる……!」

『水中なんで、気軽に来れるような場所じゃないですからね……』

「そうですよ! なんで先輩だけ平然と探索できるんですか!」

『いや、そういうスキルだし……』


 スイレンさんは何か興奮した様子だった。


「しっかり探索出来れば、全世界のダンジョン学者がひっくり返るくらいの発見になるのに! ミズキさん、そんな場所にいて今まで何してたんですか!?」

『え? 最近はシチュー食べたり、貝のベッドで昼寝したり』

「メルヘンですかっ!!」


 端末から大音量の声が響く。


「というか、未知のダンジョンで何をのんびりしてるんですか……!? もっとこう、あるでしょう!?」

『もっと……!?』

「謎を発見したなら、徹底的に探索するんですよ! わたしたち探索者なんですからね! 未知の発見は何よりの勲章です!」

『スイレンさん、落ち着いてくだ……』

「あ、もしかして、人手が足りない感じですか? なら、わたしが声をかけて……」

『待ってください、俺がここでやりたいのは謎の解明とかじゃなくて……!』

「? 何ですか?」


 謎や勲章に興味がない俺は、探索者失格なんだろうか。

 ただ、ここで穏やかに過ごしていたいと思う。


 俺はこの場所を失うのが怖い。

 元からダンジョンが俺の私物じゃないのは分かっている。

 それでも、俺たちが集まって過ごせる場所はここしかないんだ。


「いやマジですか……ダンジョンで暮らすのが最終目標ですか……? そりゃ法的には問題ないというか、そんな事しようとする探索者なんていないから法整備されてないって言った方が近いですけど……」

『最初は地上に全然未練なくて、戻りたくないしずっと水中にいたいって思ってたくらいなんですけど』

「サラっととんでもない事聞きました、わたし」

『でも最近は、完全に地上を遮断するのは違うかなって思うようになってきました』


 地上の人とモンスターの縁を繋いだり、スイレンさんと一騒動あったりしているうちに。


 初めは義務感で戻っていた地上も、昔思っていた程悪い場所ではないと思えた。

 水中拠点が一番大切というのが大前提で、だが。


「……なるほど?? でも住む場所なら尚更、謎があったら気になりませんか?」

『そうですかね? 俺は借りた部屋が事故物件でも気にしないタイプなんですが……』

「気にしてください!?」


 スイレンさんの呆れ声が響く。


「万が一、危険でもあったら放っとくのは悪手なんですから!」

『み……耳が痛いです』

「謎の遺跡の探索、承知してくれますね?」

『わかりました。でも、どうやって?』


 そこは適任がいるので任せて下さいと、スイレンさんは笑った。


「というか、そこがダンジョンである時点で、遅かれ早かれダンジョン庁だの署だのの手が入るんですから。なんか言われる前にこっちから呼んでみるのもアリと思いません?」

『え!? アリなんですか、それ……!?』

「ふふ、このわたしも出来る限りの協力はするんで安心してください」





 詳細は後日聞くことにして、通話は切れた。

 その瞬間に、視界が揺れる。


『んん……!?』


 何か巨大なものが砂の間から生えてきたのだと、認識するまでに時間はかからなかった。


『キューーーーッ!!』

『ういろう……!? どうした、何があったんだ!?』

『ピキュイ!』


 見ればプルウィアが緑色の光線を出して次々に柱や壁を出現させている。


『あっ! ミズキ見て見て!』

『シーシャ!? プルウィアはどうしたんだ?』

『えっとね、プルちゃんと家の話をしてたら、作れるって言うから、試しに作ってみてってお願いしちゃった』

『試しに家を!?』


 遺跡跡の隣の何もなかった空間に、いくつもの部屋が出現していく。


『プルウィアは建築用に作られた。この程度は朝飯前』

『主様、これは凄いな! なんたる建築の妙技!』

『わくわくするねえ』

『ブモ~』


 呑気にプルウィアの神業を見守る皆を見て、思わず全身から力が抜ける。


 俺たちの穏やかな生活……このままいけるのか……!?

なんて言ってますが今後も全然のんびり暮らします。


いつもお読みくださりありがとうございます。

皆様のおかげで書き続けられています。本当に感謝!

次回更新は来週となります。

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