第二十三話
「ほら、そのボールに意識を集中してみろ」
「・・・はい」
少女は立った状態で、俺が渡したボールを両手に持ってじっと見つめる。
自分にも魔法が使えるかと少女に聞かれたが、俺には分からないと答えた。
リラーフさんなら分かるだろうか。
魔法を使うには魔力を感じ取れないといけない、という話をすると、ランちゃんにやった訓練を私にもお願いします、と少女に言われ、今に至る。
ランとは遊んでいただけなので訓練なんて嘘なのだが、この機会を無駄にする訳にはいかない。
これを機に、少女の俺に対する警戒心を少しでも和らげたい。
「・・・どうだ?」
「・・・・・・何も感じないです」
まだボールから魔力は発せられているはず。
何かアドバイスでもできればいいのだが。
俺はランと遊んでいると、ふとした瞬間にボールから何かを感じた。
一瞬でそれは消えたが、ボールに全意識を集中すると、またそれが感じ取れるようになった。ランの言った、もやもやした何かが。
一度でも感覚を掴めば、できるようになるのだろうか。
「ちょっとそのボールをこっちに投げてみてくれ」
「・・・えっ?」
「ほら」
ボールが受け取れるように構える。
困惑する少女。
「え、えっと・・・いきます!」
意を決したのか、少女は両手でぽいっとボールを投げた。
しかし、力が足りなかったのか、ボールは俺の方まで届かず、俺の立つ数歩前で落ちた。
「あっ・・・」
声を漏らす少女。
俺はボールを拾おうと少し前に進む。
「ひっ!」
一歩踏み出すと、少女が怯えた悲鳴を上げて後ずさる。
心がズキリと痛む。
俺は一歩下がった。
「・・・何もしない。ボールを拾うだけだ」
「・・・・・・」
暗くて表情が見えないのは幸いだった。
俺は少女の様子を見ながら慎重に踏み出し、ボールを拾った。
・・・キャッチボールでもしようと思ったんだがな。
まだ難しそうだ。
「・・・すまないな」
「・・・・・・」
俺は少女に背を向け、食料を置いて牢屋を後にする。
「・・・・・・あの!」
すると、少女が話しかけてきた。
少女の方へ振り返る。
「・・・なんだ」
「・・・いえ・・・なんでも、ないです」
「・・・そうか」
俺は鉄格子の扉を閉め、牢屋を後にした。




