第十五話
「・・・ひっくっ」
「ほら、もういいか?」
「・・・ん」
俺は膝立ちのまま、抱きしめていたランの肩に手を置いて離れさせる。
獣耳が恥ずかしそうに垂れている。
包帯が濡れてしまってるな。
替えの包帯とかあるんだろうか。
後でリラーフさんに聞こう。
「ちょっと待ってろ」
地面に落ちていた布団代わりの布を拾ってランの肩に掛けてやる。
ついでに食料の入った袋も取りに行く。
肩が湿って生暖かい。
袋から食料を取り出し、ランの所へ持っていく。
小さな鼻をすんすんとさせるラン。
再び膝立ちになり、ランの手を取って持たせる。
「ほら」
「・・・いたく、なかったよ?」
「俺に我慢せず甘えただろ?」
「・・・ないたら、ごはん?」
「ああ、もう」
ランの頭に手をポンと置く。
「じゃあ次来た時は、笑ったらご飯だ」
「・・・わらう?」
「ああ。嘘の笑いじゃ駄目だぞ。楽しい時の笑いだ。それを俺に見せてくれ。でないとご飯はあげない」
「・・・たのしい、とき・・・」
「練習、しとけよ?」
「・・・うんっ!」
練習の必要はなさそうだ。
目隠しされているのでそれが笑顔だとは分からないが、口角が上がって頬にえくぼが浮かび、いつものような無感情な声ではない、初めて聞く楽しそうな声音。
獣耳も垂れることなく、ピンピンしている。
百点満点だ。
ランの頭をポンポンと叩き、手を離す。
その時。
「ランちゃんがそんなに楽しそうな顔をするなんて初めてだね」
「!」
振り返るとリラーフさんが鉄格子の向こうで微笑みながらこちらを見ていた。
「リ、リラーフさん」
「・・・リラーフさん、こんにちは」
「こんにちは、ランちゃん。楽しそうだね」
「・・・ん。がまん、しない」
「ふふ。良い事だよ」
ニコニコと俺とランを交互に見やるリラーフさん。
「リ、リラーフさん。いつからそこに」
「今さっきだよ。ちょっと用事が早く終わったから様子を見に来たんだけど」
「リ、リラーフさん!ここ開けとくからランの包帯を交換してやってくれ!」
食料の入った袋を持って、鉄格子の扉を閉めずに牢屋の外に出る。
袋をリラーフさんに押し付ける。
「後は頼んだ!」
リラーフさんの返事を聞かずに猛ダッシュで階段を上り、自室に戻る。
そしてベッドに潜り、自分のやった事を思い出す。
「・・・・・・・・・」
嘆いた。




