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第十四話


俺は振り上げた片手を、俯く女の子に向かって勢いよく振り下ろす。


「・・・!」


そして、女の子に触れる寸前で止め、俺のちょうどお腹の位置辺りにある頭の上に、ポンと優しく手を置く。

ビクっと小さな肩が震え、身を固くする女の子。

獣耳がしゅんと垂れる。

怯えてないように見えたが、やはり怖いらしい。

まるで本当の小動物を相手しているようだ。

保護欲と独占欲が同時に沸いてくるが、かなぐり捨てる。


そして、俺は拷問を開始する。


真っ白な髪の毛を優しく撫でる。

手のひらから女の子の体温が伝わってくる。


「・・・?」


「お前、名前は?」


「・・・ラン」


「ランか」


壊れ物を扱うように優しく、よしよしと撫でる。

俺を見上げてくるラン。

獣耳がぴくぴくと動き、小さな鼻をすんすんとさせる。

その表情は包帯によって隠されていて分からないが、眉は困ったように顰められている。

そうだろう。

苦しいだろう。

俺は拷問を続けながら、問いかける。


「ランは目が見えないのか?」


「・・・ん」


「何があった?」


「・・・・・・」


「ああ、言いたくないならいい」


怯えたように獣耳が垂れ、俯いてしまうラン。

ゼジルの記憶ではランは会った時から包帯を巻いている。

目を失うほどの何かがあったのかもしれない。

俺は撫で撫での優しさを上げる。

すると、ランが俯いたままつぶやく。


「・・・わたし、けもの。ひとじゃない」


「・・・」


「・・・けもの、きたない。けがれる、よ?」


撫でていた手が止まる。

無感情な声で淡々と話すラン。

獣耳はずっと垂れたままだ。


「誰がそんな事言った?」


「・・・むかしの、あるじ」


「目が見えないのはそいつのせいか?」


「・・・ん」


いったい何歳の時から奴隷だったんだこの子は。

ランをこんな状態にした野郎に言い知れぬ怒りが沸いてくる。

そして頭に血が上っていたせいか、つい言ってしまった。


「ランは汚くなんかない」


「・・・?」


「ランの真っ白な髪、俺は好きだぞ」


「・・・!」


弾かれたように顔を上げるラン。

獣耳もピンと立ち上がった。


「・・・ほんと?」


「ああ」


「・・・でも」


また俯いてしまい、獣耳も垂れる。

まぁ暴力ばかり振るってくる男の言葉なんて信じれないだろう。

当たり前だ。

俺は撫で撫でを再開する。

今度は獣耳を重点的に。

垂れたままの獣耳に触れる。

するとピクっと獣耳が跳ねた。

少し震えているのが伝わってくる。

それをマッサージするように撫でる。

動物と同じ、もふもふな毛触り。

俺は獣耳を撫でながら優しく語り掛ける。


「ラン、甘えるって知ってるか?」


「・・・?」


俺を見上げてくるラン。


「寂しい時ってないか?誰かと一緒に居たい時ってないか?」


「・・・・・・」


「今まで酷い事されて、辛くなかったか?悲しくなかったか?」


「・・・・・・」


「そういうのを全部、吐き出していいんだ。それを俺にやってみないか?」


「・・・・・・」


「俺は今までお前に酷い事をしてきた。けど今はそんな事はしない。何を言っても、何をやっても怒らない。痛いことはしない、約束する」


撫でていた手を止める。


「どうだ?」


「・・・・・・」


ランは俺を見上げたまま黙っている。

さすがに、信じられないか。

そりゃそうだ。

今まで数え切れないほど酷い事をした。

そんな俺の言葉を信用なんてできないだろう。

少し悲しいが仕方ない。

ランの頭から手を退ける。

そして俺は振り返り、放り捨ててしまった食料の入った袋を取りに戻る。


だが、それはできなかった。

俺の服が何かに引っ張られたからだ。


「・・・まって」


ランだ。

俺は振り返る。


「どうした?」


「・・・」


俺が言うと獣耳が怯えるように垂れた。

俺の服を掴んでいた小さな手が宙を泳ぐ。

その手を捕まえ、優しく包み込む。

冷たい手だ。

すると、獣耳がピンと立った。


「俺はここに居るぞ」


「・・・え、と」


何かを必死に伝えようとしているが、うまく言葉にできないようだ。

獣耳もだんだんと垂れてくる。

俺は膝立ちになり、捕まえた手を引っ張ってランを抱き寄せる。


「・・・あっ」


ぽふん、と俺の胸に収まる。

体を固くするラン。獣耳がピンと立つ。

体はとても冷たく、強く抱きしめると壊れてしまいそうなほどに小さい。

ランの息が出来るように俺の肩に頭を乗せて、後頭部を優しく撫でる。

心臓の鼓動がトクントクンと伝わってくる。

俺はランを優しく抱きしめながら語り掛ける。


「大丈夫だ。ゆっくりな」


「・・・」


緊張をほぐすように、優しく頭を撫でる。

しばらくすると。


「・・・・・・くらいの」


「ん?」


「・・・ずっと・・・まっくら」


ランは、ぽつりぽつりとつぶやく。


「・・・ずっと・・・くらくて、いたい」


「・・・なにも、みえなくて」


「・・・くらい、とこ、ずっと、ひとり」


「・・・さびしい、の」


「・・・こわい」



「・・・そうか。辛いだろう?でも今は俺がいる。ひとりじゃない」


「・・・ひとり、じゃない?」


「ああ」


「・・・ひとり・・・じゃない・・・」


ランは反芻するようにつぶやく。


「我慢しなくていいんだぞ」


「・・・がまん?」


「ああ。泣きたい時は泣いて、笑いたい時は笑うんだ。簡単だろう?」


「・・・・・・」


「・・・ぐすっ」


「・・・ひくっ」



ランの背中をポンポンと叩く。


「ほら、我慢すんな」


「・・・うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」


ランの泣き声が響き渡る。

赤子のように泣きじゃくるランの背中をあやすように優しく叩く。

頭を撫でるのも忘れない。

すると、ランは俺の肩に顔を埋めて体を預けてきた。


やはり、今までずっと我慢していたのだろう。

ゼジルの記憶でも、ランはどんなに酷い事をされても泣いた事は無かった。

ずっと我慢していたせいで、こんな性格になってしまったのかもしれない。


俺はランが泣き止むまでの間、ずっと優しく頭を撫でてやるのだった。


うまく書けてるでしょうか・・・。

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