第十二話
俺は自分の部屋に戻り、ベッドに腰掛けて考え事をしていた。
冷静になれ。
俺は将来、奴隷商人になるんだ。
こんな調子でいいのか。
獣人の奴隷が飼ってた猫に似ているくらいで。
そんな事で動揺していたら先が思いやられる。
奴隷に怯えられて心を痛めてどうする、俺。
あの少女の撫で心地を思い出す。
耳がモフモフで気持ちよかった。
もっと撫でたい。
撫で回したい。
そういえば他の奴隷たちもほぼみんな獣人。
仲良くなれば怯えらる事もなく撫で放題かもしれない。
撫でて撫でてと寄ってくる獣人の子たち・・・。
「はっ!」
妄想に浸っている場合じゃない。
自分の頬を叩いて気持ちを切り替える。
これからは、心を鬼にしないと駄目だ。
別に拷問して自分の嗜虐心を満足させるような趣味は俺には無い。
だがこれから奴隷商人をやっていく上で、本当の躾けとして奴隷たちに手を上げないといけない事があるかもしれない。
そういう時の為にも。
必要な事だ。
必要な事なんだこれは・・・。
自分に言い聞かせる。
その時、部屋の扉がコンコンとノックされる。
「ゼジルくん、いるかな?」
扉越しにリラーフさんの声が聞こえてくる。
帰ってきていたようだ。
「います・・・いるよ、どうぞ」
敬語で返しそうになって言い直す。
やめてと言われたんだった。
ガチャと扉が開き、リラーフさんが入ってくる。
改めて見ると背が高い。180センチくらいはありそうだ。
それにしても、イケメンだ。
ライトグリーン色で肩にかかるほどの長さの髪。
整った顔立ち。綺麗な碧色の瞳。スラっと高い鼻。
そしてエルフ特有の長い耳。
エルフっていうのはこんなイケメンばかりなのだろうか。
「ただいま。お邪魔するね」
「おかえり。そこ座って」
微笑みを浮かべるリラーフさん。
椅子を勧めると、優雅な動作で座る。
それがすごく様になっていた。
もしかして貴族とかだったんだろうか。
「初仕事、どうだったかな?」
それを聞きに来たのか。
記憶を忘れたという事にしているから今回が俺の初仕事になる。
ここはリラーフさんを心配させない為にも、これからの自分の為にも。
全然、余裕だった。
そうだ。
怯えられたけど、別になんとも思わなかった。
「全然、大丈夫だ」
「・・・本当に?」
俺が答えると難しい顔になるリラーフさん。
どうしたのだろう。
変なことは言ってないが。
もしかして、嘘ってばれたのだろうか。
顔に出ないように努力したんだが。
「・・・怖がられたり、しなかった?」
「したが、なぜ?」
「えっと・・・それを見てショックだったり、悲しくなったりしなかった?」
リラーフさんはエスパーだったのか。
もしかして心が読める魔法とか使えるのか。
いや、それなら既に俺の中身が違うと見抜いてるはず・・・。
動揺して顔に出そうになったが、なんとか冷静を保つ。
「だ、大丈夫だ。びっくりはしたが、躾けやすくていいんじゃないか」
「・・・仲良くしたいとか、思わない?」
やめてくれ。
血の涙を流しながら決した俺の覚悟を揺さぶらないでくれ。
「お、思わないが・・・」
「・・・・・・わかったよ。それなら、安心だ」
難しい顔のままで言うリラーフさん。
全く安心とか思ってなさそうなんだが。
リラーフさんはゼジルにどうしてほしいのだろう。
奴隷商人になってもらいたいのでは。
リラーフさんの考えが読めない。
ふと、リラーフさんが立ち上がる。
「それじゃ、僕はまた用事で出掛けるから、奴隷の子たちのご飯がある場所を教えとくね」
「わかった」
ちなみに奴隷たちのご飯は一日三食、小学校の給食にでてきそうなパン一つと、苦いジュースのような物。栄養ドリンクだろうか。
水分は、水の出る道具が地下に設置されてるらしい。
やはり魔法なのだろうか。便利な物だ。
リラーフさんに場所を教わり、すぐ出掛けるというリラーフさんを玄関まで見送った。
主人公のキャラが安定しないですね・・・。




