第九話
「あの人の奴隷・・・ですか・・・」
「うん・・・」
私は森の中であの男の人に気絶させられた後、たまたま通りがかったリラーフさんに助けられたらしい。
馬車の御者台に乗っていた人は奴隷商人。
ということは、私はもう少しで奴隷として売られる所だった。
リラーフさんはそれを助けてくれた。
命の恩人だ。
だけど、リラーフさんは勘違いをしていた。
「森の奥で捨てられそうになっている君を僕が引き取ったんだ」
リラーフさんは、首輪のつけられていた私を奴隷と勘違いして、その私が森の奥で捨てられそうになっていたので引き取った、と思っている。
私は最初から奴隷じゃないんだけど・・・。
でも、本当の事を言ったら、優しいリラーフさんは絶対に落ち込んでしまう。
黙っていよう。
「隷属首輪は特定の人の魔力を登録して発動するんだけど・・・」
申し訳無さそうな顔で言うリラーフさん。
隷属首輪。
今、私の首につけられている首輪がそうだ。
一度首輪に登録すると、登録した人しか使えないし、その人しか首輪を外せない。
「サミアちゃんを引き取った時は誰も登録されてなくて・・・でもさっき」
その首輪の効果だ、という言葉が頭をよぎる。
それと同時に思い出したくない記憶が蘇りそうになる。
「あの子、ゼジルくんって言うんだけど・・・ごめんね・・・」
「・・・いえ・・・いいんです。助けてくれてありがとうございます」
リラーフさんは悪くない。
私を助けてくれたんだ。
感謝しないといけない。
それに、今は思い出したくない。
・・・そうだ、大事なことを聞かないと。
「あ、あの、聞きたいんですけど、私を助けてくれた場所の辺りに村がなかったですか?」
「・・・・・・」
難しい顔になるリラーフさん。
嫌な、予感がする。
「僕があの森に行ったのはね、依頼があったんだ。魔獣の討伐依頼がね」
「サミアちゃんを助けた後に、煙が上がっているのが見えて・・・」
「急いで駆けつけたんだけど・・・遅かった」
「村が全焼した跡があったよ。そこに魔獣も倒れてた。相打ちだったのかな」
・・・そんな。
・・・もしかして、私が?
・・・何も、考えられない。
「僕がもう少し早く着いていれば・・・サミアちゃん?」
「・・・大丈夫です。あの、一人に・・・してもらえませんか・・・」
私は牢屋の奥に行って固い地面に横になり、落ちていたボロ布を頭から被った。
なんで。
約束、したのに。
お母さん・・・。
絶対って、言ったのに。
帰ってくるって思ってたのに。
私の・・・せい?
私が、助けを呼んでいなければ。
私が、捕まっていなければ。
私が、余計なことをしなければ。
村のみんなは、助かったかもしれない。
私が・・・私が・・・。
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。
「・・・ぐすっ・・・ごめんなさい」
「・・・サミア」
ランちゃんの心配する声が聞こえた気がした。




