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第八話

残酷な描写があります。

苦手な方はご注意です。


「ごめんなさいごめんなさい・・・」


「へっ、また来てやるよ」


男の人は嗤いながら階段を上っていった。

体中が痛い。


あの男の人は鍵が掛かっていたはずの鉄格子の扉を、普通に開けて入ってきた。

そして何の躊躇いもなく、私を蹴り飛ばした。

私は何もしていないのに。

私は抵抗しようとした。

すると男の人が私に手のひらを向けた。

その瞬間、全身に矢が突き刺さったような激痛が走った。

痛みに悶えている私を見て嗤いながら、男の人は言った。

その首輪の効果だって。

そして、男の人はまた私に手のひらを向けた。


全身が恐怖で支配されていた。

怖い。

痛い。

思い出したくない。

夢なら覚めて欲しい。

もうあんなの嫌だ。

帰りたい。

寂しい。

助けて。

お母さん。

ダリスさん。


「ぐすっ・・・ごしゅじんさま・・・」






「・・・だいじょうぶ?」



「ひぃっ!だ、だれ!?」


幼い女の子の声が響く。

牢屋の外を見るが、通路には誰も居ない。


「・・・わたし、目がみえない。声のするほう、わかる?」


「どこから・・・あっ!」


私が居る所とは別の牢屋。

一番奥の・・・右側から聞こえてくる。


「・・・わかった?」


「うん!・・・えっと」


「・・・よかった。わたし、ランっていう」


「ランちゃん・・・。私はサミアっていうの。姿が見えないけどよろしくね」


「・・・サミア。ん、おぼえた」


「ランちゃん、目が見えないって・・・大丈夫なの?」


「ん。ずっと前からそう。もう、なれた」



感情の起伏がない平坦な声が、通路に反響しながら私まで届く。

寂しかった心が、少し満たされる。

私は一人じゃないと知り、ちょっと安心した。

恐怖はかなり薄れた。


「・・・ありがとう。ランちゃん」


その時、階段のほうから足音が聞こえてくる。

先ほどの記憶が蘇ってくる。

もっとランちゃんとお話したかったのに。

そんな私を敏感に察知したのか、ランちゃんが平坦な声で言った。


「・・・だいじょうぶ。このひとは、なぐらない」


そして現われたのは、ライトグリーン色の髪色で、耳の長い男の人。

何かを持つように出されている片方の手のひらの上には、薄暗い通路を優しく照らす光の玉が浮いている。

あれは・・・魔法?


「ランちゃん、おはよう。元気かい?」


「・・・おはよう、リラーフさん。げんき」


「それはよかった。・・・おや?」


リラーフさんと呼ばれたエルフの人は、ランちゃんと親しげに話した後、起きている私に気付いたのか、通路を歩いて近づいてくる。

その姿があの男の人と重なって、体が再び恐怖に支配される。


「ひぃっ・・・」


「あっ、ごめんね」


私が怖がるのを見て、歩みを止めるエルフの人。


「・・・さっき、あの人がきて」


「あっ!もしかしてゼジルくんが!」


「・・・そう」


「まったくもう。えっと、痛い所はないかな。直してあげられるんだけど・・・」


私が酷い事されていたのをエルフの人に教えてくれるランちゃん。

エルフの人は歩みを止めた場所から動かず、距離が遠いまま私を心配そうに見ている。

優しそうな人だって事は分かる。

けど、さっきの恐怖が蘇ってきて・・・。


「・・・サミア。このひとは、だいじょうぶ」


「・・・ありがとう、ランちゃん。・・・えっと、お願いします」


「まかせてよ」


エルフの人が牢屋の前まで近づいてくる。

大丈夫。もう怖くない。


「それじゃ・・・サミアちゃん、でいいのかな?」


「は、はい」


「よろしくね、サミアちゃん。僕の事はリラーフって呼んで」


「お願いします。リラーフさん」


優しい顔で言うリラーフさん。


「それじゃ、怖いかもしれないけど、ちょっと近づいてきてくれるかな。この牢屋は僕じゃ開けられないんだ」


「わ、わかりました」


「・・・がんばって。サミア」


ありがとう。ランちゃん。

鉄格子の向こうに居るリラーフさんに近寄る。


「あ、そこまでで大丈夫だよ、準備はいい?」


「は、はい!」


両手を胸に当てて、ギュッっと目を瞑る。

すると。


小さい頃、よく転んで怪我をしていた。

泣いている私の頭をお母さんは撫でながら、回復魔法を掛けてくれた。

しばらくすると痛みは無くなって、お母さんは「もう大丈夫」と笑ってくれた。


そんな記憶が蘇る。

気が付くと、体の至る所にあった痛みは引いていた。


「・・・どうかな?」


心配そうな顔のリラーフさんが私を見ていた。


「・・・もう痛くないです。ありがとう、ございます」


「どういたしまして」


優しく微笑むリラーフさん。

その笑顔がお母さんと重なる。

それを見て思わず泣きだしてしまった。

慌てて俯いて両手で溢れ出た涙を拭う。


「だ、大丈夫かい?もしかしてまだ痛かった?」


「い、いえ、違うんです。お母さんを・・・思い出しちゃって・・・」


吃驚してるリラーフさん。

正直に話しちゃったけど深く聞かれるのが恥ずかしいので、無理やり話を逸らす。


「・・・そ、それより、どうして私はここに居るんですか?」


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