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王女誘拐  7

目の前にいる付き人の、先ほどから突っかかってきた方が泣き崩れている。


「魔王様・・・どうかマリー様に酷いことをしないでください。その子は、私たちの腹違いの・・・義理の妹なんです。」


なるほど。それで王様より真っ先に王女を助けに来たという訳か。

主従関係ではなく、義姉妹ということで必死になっていたということか。


「マリー様は・・・城から出たのも今日が初めての世間知らずの子なんです。まだまだこの世界に知らないことがたくさんあるんです。

だから・・・どうかお願いします!人質としての罰があるなら私が受けます。なんでも受けますから。だからどうか、どうかッ!」


泣き崩れながらも彼女は、土下座をして僕に懇願してきた。額を地面にぶつけるほど。

これでは明らかに僕が悪者である。

というか誘拐をしようとしていたのだから悪者に違いない。

王女は俯いたまま動かない。

このままだと、王女も付き人も精神的に辛い思いをしてしまう。

僕は人間を恨んでない。むしろ今回だってマシロ、人間を返すためにやろうとしていることである。

まあだからと言って、ほかの人間が代わりに犠牲になったり苦しむというのはおかしいことではある。


「顔をあげてください。」


僕は転移魔法を使って、泣き崩れ土下座したままの彼女の前に立った。

僕の声に反応し、顔をあげたその額からは血が出ていた。くしゃくしゃに泣いていた顔で額には怪我、そして流血。


「僕は魔王です。では消しましょう。」


僕は右手を彼女の額に向けた。

彼女は悟ったかのように泣くのをやめて目を閉じた。

そして受け入れた。


「えっ!? そんなちょっとまって!!」


家の中から王女が制止しようと言葉をかけるが僕は続けた。

僕の右手は光を発した。夜のためか一際明るい光。

しかし、右手で輝く光のはずなのに近くの僕でさえ眩しくない。


「きれいね。」


コレットさんがボソッと呟いた。

その光る右手で付き人の額を軽く触った。

一瞬強く光ったと思ったら、すぐにその光は消えてまた夜の闇に覆われた。


「・・・えあれ?」


「・・・ふぁえ?」


付き人は膝をつき泣き顔でくしゃくしゃになったまま、場にそぐわない素っ頓狂な声を出した。それは王女も同じで二人して目を丸くしていた。


「なぜ・・・なぜ怪我を治したのですか?」


「僕は魔王だから人間の怪我は治すわけないですよ。

消そうとしたら、間違えて傷を消してしまったようですね。」


もう一人の付き人の問いに、僕は少々格好つけて返した。

父が昔コレットさんにしたことをたまたま思い出した。

なんとなく人間と距離を近づけるのはこれがいいかなと。


「・・・ぅぇ、うえぇぇーんっ!」


「マリー様。生きておりますから安心してください!」


「あと伝えておきますが、マリー王女様には監禁も軟禁もしないです。

希望とあらば魔大陸の観光にも連れて行く予定です。

『神様でも魔王でもいいから外に出てみたい』それが彼女の願いですから。」


「それってさっきの私との話・・・。魔王様・・・。」


「魔王様。改めて言いたい。

どうか、マリー様はよろしくお願いします。」


「はい、わかりました。謹んでお受けいたします。」


コレットさんと付き人の二人と別れ転移魔法で魔王城へ帰った。

最初の予定とは変わって、まさか王女を連れて帰ってくることになるとは。

元々の目的だった、鍵は結局わからずじまい。

付き人の二人が、王様を説得して全力で探してくれることになった。

こちらとしては結果オーライである。

マシロが来て王女が来てと、どんどん賑やかになっていく。

何も起きなければいいが・・・と思っても僕の願いとは裏腹に多分何かしら起きてしまうのであろう。

人を思う気持ちが、やがて他人を変えて周りを変え国をも変える。

それは悪い意味もいい意味もどちらにも成りえる可能性を持ち合わせている。表裏一体の関係だ。

いつか変わった国が、世界をも変えるほどのいい国になってほしい。

心から思う。


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