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王女誘拐  6 

目が覚めたら見たことのない室内。

王に仕えている部下二人が自分を助けると叫び、先ほどまで一緒にいた男の背中にいる。

これは確かに理解できない状況であろう。


「マリー王女様。そういえば先ほどの自己紹介がまだでしたね。

僕の名前は、ピエーロ・エルドリア・ログフォンス・マケロニオ・フロモルカ・ジャグリック・タンポーポ・ルド・オンガラスタイア・ダモンです。

周りからはエル、ピエロ、などと呼ばれていてあとは魔王ともよばれています。」


ブワーッ


僕の身体を風が包み込み、擬人化を解いた。

僕の頭には角が三本。これを見ればどんな人間でも僕が魔王であることはわかる。


「え?・・・ええッ!?」


王女は何が起こったかまだ理解できていないようだが、頭の回転のいい付き人の二人はあまり驚いていないようだ。

手紙の要求と、僕たちが王様を訪れた理由が一致しているからわかる者はわかるであろう。

間合いを詰めようとしていた二人だが詰めることをやめ、後方へ少し下がった。

このまま話を進めて早いところ魔王城に転移しよう。

まずは王女よりも付き人を


「こ、ここの角は本物なんですかっ!?」


僕の頭をペタペタと触り、角も好き勝手に握ったりさすったりしている。

先日もどこかの人間に似たようなことをされた。

僕の昔からの魔族に対する人間のイメージは、魔族を嫌っていて怖がり恐れるイメージがあった。

だが、マシロも王女もあまりそのような感じには見えない。

たしかに、父のように怖そうには見えないが僕も一応魔王なんだけど・・・。


「マリー王女様。 僕たちはあなたを連れて魔王城に帰ります。

あなたの気持ちは関係ありません。僕たちにとって平和の象徴が必要だからです。人質になっていただきます。」

 

アリスもすでに準備ができているようで、床から立ち上がっている。

マシロは、いつの間にか扉から離れ椅子に座りドリーとじゃれ合っている。

僕の足元にいたマヤも、クゥーンと悲しい声をあげている。

少しの間が流れた後に彼女は口を開いた。


「私は・・・。」


簡単な短い単語を口にするだにも拘らず、彼女の声と身体が震えているのはわかった。

生まれてから一度も、魔族を見たことなく頭に角の生えた怪物など見て本当は平気なわけがない。

平気な人間は少しどころかだいぶおかしい。当然本人には言えないが。


「僕たちは平和の象徴が返ってくればいい。

だから、王様にはその協力さえしてもらえればそれでいいです。あなた達はそう伝えていただけますか?」


「おいっ!貴様・・・こんなことをして許されると思っているのか!。」


「・・・ねえピエロ。マリーさん下ろしてあげなよ。

これだと私達も誘拐だよ。同じにはなりたくないからさ、お願い・・・。」


先ほどまで、我関せずと言った感じでドリーと遊んでいたはずのマシロが突如話を割った。

マシロの言う『同じ』と言うのは、マシロとアリスを誘拐した者とということだろう。

僕はマシロの言うとおり床に下ろした。


「マリー王女様、魔王城に来ても軟禁・・・いや監禁されてしまうかもしれません。

平和の象徴が手に入ったからと言って解放するとも限りません。

この場で助けを求めたほうがいいかと思います。」

 

「マリー様ッ!」


「私は・・・・・・行きます。

私は・・・私が城にいるから父は好き勝手にしているんです。わかっています、わかっていたんです・・・。」


「・・・マリー様。」


「この国はこのままだと手遅れになります。父と母がくれたこの命、無駄にはしたくない。

父だってまだ変われるはずだから・・・。私は信じています。」


彼女は、国が父が変わってしまったのは少なくとも自分にも非があると思っているようだ。

そのために、彼女は自らが人質となって国を正そうとしている。

ここまで国を民をそして家族を思いやれるものが人間にもいる。そう感じ、関係ないのだがなんだか嬉しくなった。

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