大魔王覚醒 6
「マシロ、さっそくか。
エル、ちょっと下がろう。ここだとマシロの魔法の射程に入ってる。」
「メテオストームッ!!」
「うええぇぇ!?」
僕は後ろに飛んだ。
後方跳躍は苦手だが、今回ばかりはエビもビックリのなかなかにジャンプになった。
というのも彼女の放った『メテオストーム』という魔法は、上級魔法で兵士たちの中でもほとんどの者が使うことができない。魔法を扱う上での一般的なキャパシティを一気にオーバーしてしまうからである。
使うとしたら、アリスかルシファーかあと数名といったところだ。
強力であるが、それを扱うにはそれ相応の実力を伴うものなのだが・・・。
それをいとも簡単に使いこなしている。
たくさんの隕石が、次から次へとアンデットモンスターに降り注ぐ。
倒しているのかはまったくわからない。隕石が当たっているのは確かだが、影も形も残らずに消えている。
「サンダーボルトォ!」
「・・・・・・。」
またしても上級魔法。
魔法をしっかり教えてもらい始めたのは昨日から。
一昨日の夕方初めてこの世界に来たはずなのに・・・。
マシロは本当に大魔王なのではないだろうか?
泣いてはいない。でもおかしい、心が痛い。
降り続ける隕石。轟止まぬ落雷。
さきほどまで緩やかな草原の丘だった地形はすでにボッコボコになり、原型が全く分からない状態になっている。
アンデットモンスターの姿は見当たらず、先ほどの黒マントもいない。
「マシロ、もう大丈夫です。魔法は止めて、下りてきてください。」
「・・・。」
マシロは、僕の言葉を無視して空中に留まり続けている。
そして彼女の唱えた隕石も落雷も止むことはなく、どんどんと激しさを増す一方。
・・・不自然すぎる。マシロのことだから、誇らしげにすぐに下りてくると思っていたがいつまでたっても下りてこない。
もしかしたら、稀に起きてしまう暴走だろうか。気を失っても寿命を削りながら魔法を放ち続ける・・・可能性はある。
それか先ほどの黒マントがマシロになにかしたのか?洗脳の類でもしたのか?
もしそんなことをしているのだったら急を要する。
しかし、彼女が洗脳されていたら迂闊に近づけない・・・。
僕の横にいるアリスは、ただじっとマシロを見つめている。どうするべきか。
「マシロ、僕の声が聞こえるなら返事をしてくださいッ!!マシロォ!!」
「・・・ピエロ」
『黙れ』と言った時とは打って変わって、今は弱弱しい声になっている。
まさかと思ったが本当に最悪の事態になっているのか・・・。
あれほどまでの魔法を使うマシロが、城や街を襲えば甚大な被害が出てしまう。このままここに放っておくわけにはいかない。
どうにか、僕とアリスで何とかしなければ。
「ピエロ、ごめん・・・。」
「・・・大丈夫、大丈夫ですから。絶対に、僕とアリスが助けますから安心して!」
マシロの申し訳なさそうな声に、僕は自分の力の無さを悔やんだ。
僕に力があれば、魔法が強ければ、もっとしっかり判断していれば・・・。
悔やんでも悔やみきれない。一昨日に来たばかりの異世界の人間に対して、荷が重すぎた。
気が付いたらては強く握り拳が作られていて、目には涙が溜まっていた。
だが、泣いている時間はない。
アリスとともに止めるしかない。
「ピエロ・・・。」
「マシロ・・・。」
「・・・どうやって止めるの?」




