大魔王は来た時から 1
魔大陸には季節は存在しない。
一年中雪が積もっている山もあれば、水不足の砂漠があったり、寒暖の差が激しいところや、逆に一年中寒暖の差が穏やかな気候のところなど様々である。
魔王城のある王都は、魔大陸の中では住みやすく農耕にも適しているために多くの住民がいる。
時々訪れる、長い嵐以外は非の打ちどころがないくらいである。
長い嵐というのはそのままの意味である。朝から晩まで雨が降り続き、酷い時には嵐のように風が吹き荒れ、作物などに被害を及ぼす。
街の住民も悩みの種ではあるが、どこに暮らすにせよ何かしらのデメリットは付いて回るものである。
かくいう、今も嵐の真っただ中である。
一昨日から始まった嵐の快進撃で、風が自由に吹き荒れまさにやりたい放題といったところ。雨も一緒になって踊りまわって、これでもかというほど大地に雨を降らせている。
少し前まで雨が少なかったから、周りの者からしたらちょうどいいかも知れない。
だがこれではマシロの魔法の練習が進まない。
一昨日、裏山でアリスとマシロの三人で魔法の練習を行っていたところ黒マントが現れた。
アンデットモンスターを引き連れて魔王の座を要求してきた。譲る気は毛頭なかったが、マシロが交渉を拒否したために戦闘になった。
アリスの直々の推薦で、マシロに魔法の成果を試させた。
彼女の才能は計り知れないもので、上級魔法をいとも簡単に使いこなしたのである。・・・いや、実際は使いこなせていなかったか。
上級魔法を放ったのはいいがその後どうすればいいかわからず、上級魔法の垂れ流し状態になった。
アンデットモンスターは一蹴できたし、黒マントはいつの間にかいなくなっていた。
だが、そのおかげか裏山は隕石と落雷のためにボコボコになってしまった。
いつか直さなくては、と思っていたがこの嵐で幾分かなだらかになってくれれば儲けものである。
マシロは魔法を止めることができず、結局アリスが横について止め方をその場で教えた。まさに、『実践あるの』みと言ったところだ。
嵐の影響で、昨日から外で魔法の訓練ができないために部屋で読書に励む三人。
マシロはベットで横になりながら魔法を覚えているようで、この先彼女自身が戦力になることは間違いない。
この世界に来て、まだそれほど時間が経っていないのにマシロはとても強い。本当はこの世界でまったく知らない土地、魔族で心細いはずなのにそれを見せず気丈に振る舞っている。
そんな彼女の力になってあげたいと思う。
「アリスちゃーん、いつになったら私の膝の上に座ってくれるのー?」
「安心して、二度とそんな日は来ない。」
「全くもう・・・アリスちゃんの恥ずかしがり屋さん!」
「はいはい、そうですねー。」
・・・前言撤回すべきか、それともだんだんとアリスの対応が冷たくなってきたことに対して同情してあげるべきか。
僕も慣れてきてはいるものの、相手が女の子ということもありまだ僕の方は時間がかかりそうだ。
アリスはというと、自ら買って出てくれた魔法陣と転移魔法の二つを調べてくれている。
何度か謁見の間の魔方陣も見に行ったりして、魔法陣を発動させようとしたりと本格的に調べてくれている。
元々、アリスは勉学は得意で大の本の虫でもある。声をかけなければ食事を忘れて本を読み続けてしまう位だ。
昨日も本に噛り付くように読んでいた。それを見つけたマシロが、静かに近寄りアリスを後ろから抱きついた。慌てふためくアリスとは裏腹に、マシロの顔は恍惚とした表情でアリスの髪にスリスリと自分の頬を擦り付けて喜んでいた。
そのため今日のアリスは、壁に背中をくっつけて視界にマシロが入ったら本から目を話すようにしているみたいだ。
集中するのは良いことだが、集中し過ぎるのも玉に傷である。
自室に籠っての魔法研究というのも、籠ろうとしてるのではなく集中のし過ぎで気が付いたら籠っていたと言ったほうが正しい。
彼女のことだから魔法陣と転移魔法のことも、そのうち解明してくれるであろう。




