大魔王覚醒 4
「お前は何者なんだ?」
「・・・城に戻レば、コイつらハ街に解キ放たレルコトになるダろう。」
「街にいる魔族を人質にと言う訳か。」
「・・・。」
僕の問いに対してすべて答える訳ではなく、脅しをかけているようだ。
しかし、何のためだろうか。街で暴れたければ真っ先に行ったほうが暴れられる。
今、僕たちにかまっている間に魔法を使って城の人間に連絡を取ることができるのだから。
だが、アリスも僕もそれをしないのは何かあると踏んでいるからである。
要求を聞く前に動けばどうなるか、それこそわからない。
「お前の要求は」
「魔王ノ座。」
「え?」
「魔王ヨ、お前ハ無能ダ。今スグ魔王を俺ニ渡セ。」
「悪いけど、僕が無能で役立たずであっても魔王にはさせるわけにはいかない。」
「モウ一度だケ言おう。魔王の座ヲ」
「黙れ。」
「ことわ、っえ?マシロ?」
僕と黒マントが話しているところに、『黙れ』というマシロの声。
たしかにマシロの声であったが、その声は低く冷たく押しつぶすような威圧感のある声だった。
すぐにマシロの方を向くが、先ほどとは変わらない様子で立っている。アリスも僕と同様にマシロを見ている。
マシロはただ一点だけを見ている。
黒マントのいる方向だけを。凝視するわけでも、睨み付けるわけでもなくただ見ている。
壁に飾られている絵画の一部を見続けているように穏やかな感じで。
「オ前でハない。お前ガ」
「黙れ。」
彼女は魔王の僕や、魔法兵長のアリスを苛めるくらいだ。たしかに苛めっぽいところはあるが、いつものような無邪気で茶目っ気のある声ではない。
「魔王よ、コレガ答えでいイノか?」
「いや、答えではないがもともと要求を呑むつもりは」
「さっきからさ、魔王魔王って言ってるけどあんた馬鹿なの?」
「えっ!?」
先ほどまで黙っていたアリスも、驚きのあまり声が出てしまった。
僕も全く一緒に驚いた。
マシロの言っていることが理解できず僕たちも驚いている。
黒マントも何も言わずに、黙ってその場に佇んでいる。
僕自身、マシロが言っていることがわからないということもあって話を遮った。
「あのマシロ、どういう意味?」
「だから私言ったでしょ。『ピエロが魔王なら私は大魔王』だって。だから魔王なんかに言わないで、大魔王の私に言いなさいってこと!」
吃驚仰天。まさかこのような言葉を使う日が来るとは思ってもいなかった。
僕は、昔から本が好きで人間の書物もよく読んでいた。
こんな言葉、本だけの世界でしか使うことはないだろうと思っていたが、まさか使い時がくるとは・・・。。
いやいや、こんなことを考えている余裕はない。
それは、マシロが初めて会った時に言っていた言葉である。言われたときに、今ほどではないが驚いたので今も憶えている。
まさか彼女が本気だったとは、まったくもって思いもしなかった。
というか、一般的には軽いジョークとして受け止めるのが当たり前と思った。だが、これが異世界の人間のクオリティなのだろうか。
「大魔王ダと?貴様何者だ?」
「いやいや、気のせいだから僕が魔王で」
「ヤマダ マシロ、大魔王。」




