大魔王覚醒 1
「エルー!!うわぁーん!!」
カーテンの外はまだ薄暗く、太陽は昇っていないようだ。
金ダライが降ってきたようなけたたましさで部屋に入ってくるアリスの声で目が覚めた。
昨日、意見を出し合って犯人探しをしたが結局見当もつかず諦め、マシロとアリスは寝食を共にしてもらうことにした。
マシロは魔法が使えたと言えど、しっかりした指導も受けておらず魔法を使える許容量なども全くの未知数である。
そのためにマシロには、魔法のスペシャリストのアリス直々に指導してもらうことになった。
人間の中で魔法を使えるものもいる。魔族は人間より魔法を使えるものは多いが、実際使えないものも多い。
人間で使えるものは少なく貴重である。そのために小さな町や村などでは高い地位を得ることができる。
しかしその反面、それを嫌う王族や貴族は『魔女狩り』と言って魔法が使え自分達に不利益になりそうなものは排除してしまうこともある。
だから一般人で魔法を使えるものは少なく、王に仕えている兵士などしか魔法を使うものはいない。
逆に魔族は、魔法が強ければどんどんと伸し上がることが出来る。
実際にアリスはその強さから瞬く間に魔法兵長にまで上り詰めた。
僕も魔法のことで時々教えてもらうことがあるが、そんな彼女直々に教えているのだからさぞ厳しいものかと思いきや、マシロの苛めっぷりに磨きがかかっているようだ。
「エルぅー!エルぅー!!うわぁーん!」
バフンッ
「ぐふぉおっ!!」
まだベットから起き上がっていない僕の上に、覆いかぶさるように勢いよく飛びついてきた。
もう少し、ゆっくり優しくやってくれればちょっとは違う受け止め方もできたかもしれないが、小柄と言えはっきり言って痛いだけだ。
「マシロがぁぁあ!」
「お・・・お落ち着いてアリス。深呼吸してから話そう。」
「グスン・・・スーハー・・・
マシロが私のベットに潜り込んできて、抱きついたまま離してくれなくて近距離転移して逃げてきたの・・・。」
「とりあえず、何かあるといけないから戻ろう。僕もついていくから、ね?」
「・・・うん。」
アリスは人に馴れていないというべきか人見知りと言うべきか、甘え方も甘えられ方も忘れてしまっている。忘れているのかわからないかも僕はわからないが。
でもマシロの場合は、甘えているということではないが。
西の魔女の引き取られ魔法の勉強に行っている時にアリスは、たしかに育ててもらったようだが聞いた感じではどちらかといったら師弟関係に近い。親と言うよりは先生と言ったところだ。食事はあるが質素なもので朝から晩まで魔法漬けの毎日。
幼くして両親を亡くし引き取られ、甘えたいのに甘える相手もいない。同世代の相手もいなかったためか『友達』というのも若干戸惑いのようなものがあるようだ。
僕も似たようなものだったが、僕の場合は少し年上でも仕えている者達と笑いあえたからアリスよりいい生活を送ってこれた。
だから、アリスにも友達というものを作ってほしいとは思っているものの・・・マシロでは少々難しかったようだ。
二人の部屋に着くと、マシロはベットでぐっすり眠っていた。
部屋には灯りが薄暗くともされている。ベットの横には机があり、たくさんの魔法関係の本がある。
すでにたくさん勉強しているようで、なんだかんだ言っても二人ともしっかりやっているようで安心した。
マシロの寝顔だけ見ると無邪気な人間の子供のようで、いつもの面影は裏山にでも置いてきてしまったように見える。
昨晩、一つのベットでは狭いというアリスの要望でヒツジが用意してくれた二つ並べたベット。
このベットの真ん中部分で対角に陣取って正に大魔王の如く良いご身分で寝ているマシロ。仕方なくアリスはベットの端のほうにちょこんと座る。
「エル・・・。もう少しだけいてくれない?」
「いいよ。僕はもう眠気はないから、ここで本でも読んでますよ。」
アリスはマシロに背を向けるように横になり、僕は机の上にあった本を読み始めた。




