事件の始まり 5
マシロの仮説は二つの話を合わせると、確かにそういう見方もできる。だがあくまでも仮説に過ぎない。
アリス誘拐の時だけを考えれば、内部犯の犯行が高いように見える。
マシロの時だと『人間と言うことに気づいた』ということと、『人間に恨みがる』という二つを持ち合わせた内部犯という狭い確率になる。
「それとは別に、二人の合致している特徴として『魔女』と言う点はどうでしょう?」
マシロは実際には人間である。それも彼女曰く別世界の。
ただ人間と言うのは少々魔族では厄介になるために、ヒツジと話して『魔女』ということにした。
そしてアリスは、正真正銘の魔女である。西の魔女が人間として捕まったアリスのことを『魔女だ』と庇ったためだ。
「僕がマシロを紹介した時に『魔女』って説明して、アリスの時は西の魔女が庇いました。
人間に恨みがる魔族の犯行としたら、実際は当てはまらないんです。
権威ある本物の魔女が庇ったアリス。魔王である僕の友人として紹介したマシロ。どちらも『魔女』として紹介しているのに魔族の犯行に見せようとしているのが・・・。」
「魔女は人間と魔族の中間のようなもの。マシロは人間で私が魔女。でも普通の魔族なら絶対に区別がつかない。
マシロを狙ったあとに、アンデットモンスターにしたくてももし本物の魔女はアンデットモンスターにはならない。それは魔族も知っている。動物もならないしなるのは人間だけ。」
「となると・・・。」
「・・・。」
「うーん・・・。」
コンッコンッ
「坊ちゃま、戻りました。」
「ああ、ヒツジ。開いてるよ、どうぞ。」
僕とマシロとアリスの結論は出なかった。逆にどんどんいろいろな仮説が出て、いろいろな可能性がたくさん出た。
・本当に殺す気があったのか。
・人間と言うことを信じて魔族がやったのか。
・内部犯に見せかけたものなのか。
・魔女ということで犯行に及んだのか。
出てきた仮説をすべてヒツジに話した。
ヒツジはアリスの件も、アンデットモンスターとの王都の件も、マシロの件も少なからずすべて拘っている。彼の率直な意見が聞きたかった。
「・・・。」
彼は直立した状態で黙っている。
「・・・ヒツジ、なにか意見はない?どんな小さなことでもいいから。」
「そうですね・・・。私には少々難しいお話ですので的確な意見は申し上げられませんが、まったく別の者の犯行、模倣犯という考えもありますし・・・。」
「・・・なるほど。そうだよね。」
「私が生きていることがわかって、再度犯行に至らないのがわからないのよね・・・。」
「それはただ単に、アリスが魔法が強くなって太刀打ちできないからじゃないの?」
「なら私もアリスちゃんくらい強くなれば、安心して過ごせるということ?」
「犯人の意図がわかりませんが、まあそういうことになるかもしれませんね。
じゃあ当面は、アリスとマシロは一緒に過ごしてください。」
「ええぇっ!?なんで私がマシロと一緒になの!?」
彼女は勢いよく立ち上がり、座っていた椅子をはじき倒した。
「僕は男ですし、いろいろとまずいし不便なこともあるかと思いますので。」
「アリスちゃん、そんなに私のこと嫌なの・・・?」
「嫌ですよ!なにされるかわかりませんもん!」
「うーわー。ショックだ。傷つくわー。
あ、じゃあアリスちゃんがだめだからピエロ一緒にいてね?食事も、寝る時も、・・・お風呂も。」
「え、マシロそれはちょっとまずいと思いますよ・・・。」
「・・・そん・・・だめだよ。」




