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誘拐された大魔王  4

明くる朝、いつものように食堂に朝食を食べに行く。

食堂はいつもと同じで変わりはない。マシロの姿は見えない、まだ部屋のようだ。


「ヒツジ、マシロはまだ来ていないの?」


「そのようです。私が行ってまいります。」


「いや僕が行くよ。朝食の準備で手伝えること何もないから。」


彼女の部屋は僕と同じ階に用意した。

 ヒツジ曰く、『何か問題が起きてもすぐ近くにいたほうがいい』ということらしい。

 こんなことなら、まずマシロの部屋に寄ってから食堂に行けばよかった。


 コンッコン


「マシロー。起きてください。朝食ですよ。」


中から返事はない。

 ドアノブに手をかけてみると、鍵は開いているようで室内に入る。

室内に入るが誰もいない。

 ベットは使った形跡があるが温もりはない。枕元には髪留めだろうか、黒い輪のようなものがあった。

不審に感じ、急いで食堂へ戻る。

 だが食堂にもやはり姿はない。


「ヒツジ、ちょっと・・・。」


「お帰りなさい坊ちゃま。おや、マシロお嬢様は?」


「それが・・・部屋にもいないんだよ。部屋にいた形跡はあるんだけど。」


「昨晩私もお召し物を持って行って、注意しましたので出歩くという線も薄いでしょう。

あと考えられるのは・・・。」


「そうだ、この輪っかに魔法を使ってマシロを追跡しよう。」


「坊ちゃまの追跡魔法でしたら、だいぶ遠くに行っていてもわかりますからね。」


僕は、攻撃系の魔法が苦手である。

 しかしその反面、回復や防御、探索など後方支援のようなことは得意である。

彼女の身に着けていたものを使い、その後の彼女の行動が調べることができる。


「えーっと・・・これは、裏山にある森の中の洞窟?なんでそんなところに・・・。」


「マシロお嬢様だけでは森までは行けません。

 誰かが同行しているか、あるいは・・・誘拐されたのでしょうか。」


「誰がそんなこと・・・。」


「マシロお嬢様が人間である、ということに気づいたものが恨みがあって連れて行った・・・というところでしょうか。」


「おはようございます魔王様。険しい表情をしておいでですが、どうされましたか?」


「おはようございます、ルシファー。それが――」


「坊ちゃま。」


「あ・・・いやルシファー何でもありません。ちょっと急用が出来まして、皆さんと朝食先に食べていてください。

ヒツジ行きましょう。」


ヒツジに止められて危うく話すところだった。

昨日ヒツジと話をしてルシファーには言わないことにした。

 今、マシロが本当に連れていかれてるのなら、『なんで連れて行かれた』という問いに答えられない。

二人で裏山の森に向かったほうがいい。


「ヒツジ、このまま二人で裏山に行こう。誰かに話すことはできない。」


「かしこまりました。私が、坊ちゃまの足となりますので先導お願いします。」


彼はそう言うと、おもむろに右肩にヒョイッと僕を乗せて歩き出した。

最初は歩いていた。

 とはいっても彼の歩くというのは音もなく物凄い速さで進んでいった。肩に乗っているにも関わらず振動はなく飛んでいるようだった。

城を出た瞬間に、景色が変わった。

 いや飛んだ、と言うべきだろうか。

 流れていく景色ではなく後ろに景色が飛んでいく。

突如として空は暗くなり、辺りはまるで夜のようになった。月はなく星も出ていない。


「なっ・・・太陽が・・・消えた?」


「・・・これは、おそらく何者かによる魔法かと思います。

 誰が何のためにやっているのかわかりませんが。このあたり一帯だけのようですね。」


「誰が・・・。」


何かが起きているのだろうか。

マシロが連れて行かれ、急に広がった夜の世界。これはだれかの魔法であることには違いないが、誰が何の目的のためにやったのか・・・。

 僕には皆目見当がつかない。

またなのか・・・。

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