表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/81

胃の満腹 心の空腹  1

 僕は執事を心から信頼している。


父の時代の魔王城での食事は、それはそれは寂しいものだった。

 馬をまっすぐに10頭並べたくらいの長い机で、父と私の二人だけで食事をとっていた。僕との会話はなく、食事をしながらも引っ切り無しに訪れる部下の対応をしていたのを覚えている。

 僕が当主を引き継ぎ、父の席には僕が座り一緒に食べる相手は誰もいなくなった。

 当時、僕はまだは幼かったということもあり仕事という仕事は無かった。というか出来なかった。

 来る日も来る日も、朝から晩まで一人で過ごし食事も一人で食べた。

 

 元々、父とも日常的に話すことがなかったためか自室で本を読んで引きこもっていた僕だった。

 だが父が亡くなり、食事以外で外に出たくなくなった僕は、引きこもることにさらに拍車がかかった。

父の生前、仕事が忙しいなどで父も使えている者達も僕のことを誰も相手にしてせず一人でいることが多かった。

父である魔王死後、『強く頼もしい魔王の息子』ということ後ろ盾は無くなり僕が『情けない魔王』になった。だが武術も魔法も中途半端な僕は幼いこともあり、まわりからはよく思われていなかった。

 表立っては言えないために、隠れて嫌がらせまがいのことをされるようになった。陰からヒソヒソとある事ない事言って笑われたり、魔法などでものを投げてきたり。

 父のように威厳も迫力もない僕は、言い返すこともやり返すこともできなかった。


父の死後、半年ほどたった日のこと。

部屋で本を読んでいた。

 その頃は、食事の時間になっても誰も呼びに来なくなり、自分で直接行っても食事が出てくるのに長い時間待つことが当たり前だった。

 朝から何も食べていなかったためにさすがに空腹になり、昼食を食べるため食堂へ向かった。

席に着き本を読みながら待つと、早々にスープが目の前に置かれた。

 いつものように一人で食事を始めようとするが、スプーンを床に落としてしまった。


 カチャーン


 手に持とうとしたスプーンは僕のことを嫌い、避けるかのように下に落ちたように見えた。

 食事をとっているのは僕だけで、静かな食堂だったために落下音は静寂を裂き金属音だけが大きく音をたてた。

 その音が聞こえなかったとは思えないが僕の元には、誰一人として拾いにも交換にも来てはくれなかった。

仕方なく椅子から降りて、自分で拾おうとした。

 手を伸ばしたら急にスプーンは跳ねあがり机の上に戻った。

 そして、クスクスと笑い声が聞こえた。

 やはりそうだった。気にせずスープを飲もうとスプーンを近づけたら、スープ皿が突如として宙に浮いた。

 驚く暇もなく目線よりもスープは高い位置に浮いて、僕に向かって飛んできた。

先ほどまではクスクスと笑っていたものたちは、隠れながら笑うのを辞め大笑いし始めた。大声で手や壁を叩きながら嘲笑うかのように。


「あっはは。 格式が高くなると、スープもあんな風に飲むんだな!」


「プッハハハ。 うまそうな飲み方だな!」


僕は熱いスープを頭からかぶった。

 いくら魔王の子、魔族とはいえ熱湯に近いものをかぶれは火傷する。

 スープが熱かったせいなのかスプーンを握っていた僕の手は、気が付かないうちに強い拳を握っていてプルプルと震えていた。

 そして、目にはだんだんと涙がたまっていくのがわかった。

『なんで、なんでこんなことするの?僕がなにかしたの?したなら謝るよ。たくさんたくさん謝るよ。だから、だから・・・。』

拳を握り、下を向いたまま動けなくなってしまった。


コンッコンッ


「坊ちゃま、坊ちゃまはいらっしゃいますか?」


 「おい、やばいぞ! 近衛兵長帰ってきちまったぞ!」


「明日の予定じゃなかったのかよ! 仕方ない、急げ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ