『白の王様』
これ書いてたらいきなりデータ消えました。
書き直し。ぎゃあああ。
力というのは、使われるためにある。
目の前に座る白い少年は、それを理解している。理解した上で、力を使う。理解した上で、力を持つ者を、使う。
少年は、真っ白だった。服装も、肌も、髪も、そのすべてが白かった。それがある意味、少年の異様さをひきたたせていた。
「報告書です」
「ありがとう」
そんな形だけの、無駄のない、必要なことさえないような短い会話を交わす。
私は、少年の秘書であり、部下であり、そして駒である。それは、重々承知しているつもりだ。しかし、それでもやはり思ってしまう。なぜ私は、この少年に仕えているのだろう。なぜ、10歳くらい年下のような少年に、使われなければいけないのだろう、と。それは確かに、自分の中にあるプライドであり、同時に、唯一残っている自分の様でもあった。
少年は、人を使うことに長けている。まるで、人を使うために生まれてきたのではないかと思うほど、人の使い方を知っていた。天は人の上に人をつくらず、という言葉がある。それはあながち、嘘ではないだろう。私は神様のことなんて何も知らないが、それでも、人間は、この世に生まれた時点では平等だろう。けれど、成長するにつれて、人間には優劣が出来てくる。教育の仕方や病気、子供の頃のしつけなど、生活は様々なのだから、自ずと違いがでるのは当たり前のことだ。
けれど少年には、その言葉は通用しない。当てはまらない。それはもう、優劣とかではなく、まるで最初から決まっていたかのように、少年は人の上に立っていた。人の上に存在していたのだ。
使う者がいれば、使われる者がいる。
そうして、少年は力を持つ者を集めていき、それが『死神』の原形となった。
「へぇー。そうか。三神の死体処理は済んだかい?」
「はい。既に処理は終わっております」
使う者は一人しかいないが、使われる者は限りなく存在する。たった一人の犠牲など、特に問題はないのだ。
「この、白石百合乃というのは、一体なんなのですか?」
と訊いて、しまった、と思った。そういった些細な好奇心は、ここで生きていくには、邪魔でしかないのだから。それもどうせ、今日で終わりなのだけれど。
「うーん。なんていうかねぇ。例えるなら、僕が信仰される神だとしたら、彼女は皆に手を差し伸べる神。裏と表、とまではいかないけど、方向は真逆だよね。彼女には自覚はないんだろうけどね」
そう言って、少年は薄い笑みを浮かべた。
「それと、夕方頃に、白石百合乃を誘拐したという電話があり、アリス・セヴィエンチアがそちらに向かいました」
「アリス・セヴィエンチア......『万物の弾丸』か。それで、その誘拐犯の名前は分かるかい?」
「え?あ、囲島、だったと思います」
その情報は必要ないと思い、報告書には書いていなかったので、返答に少し手間取ってしまった。
「囲島......囲島、ねぇ」
「なぜ、そんなことを?」
「別に、ただ、気になっただけだよ」
そう言って、少年は怪しい笑みを浮かべる。
「そこには、死体処理班が向かう必要は無いよ」
「?......何故ですか?」
「彼は、死なないからさ」
「死なない、とは?」
「そのままの意味だよ。......彼は、死なない」
死なない。普通の人間であれば、そんなことはまずありえない。
だとすると。
「『人外』、ですか?」
「うーん、どうなんだろうね。彼は、少し違うかな」
少年の笑みは、まるで、すべてを見透かしているかのようだった。
「彼は、言うなれば......『不完全』。欠陥品だよ」
「そう、ですか」
これ以上は、私の知る必要はない情報だろう。『不完全』というのは初めて聞いたけれど。
「長くなって、すみません。では、失礼します」
そう言って。
私は、拳銃で少年を撃った。
真っ白だった少年は、瞬く間に深紅に染まっていった。
「失礼、します」
自然に、口から漏れていたその言葉の真意は、自分でも分からなかった。
私は、凡人だから。
『人外』を人工的に作り出す研究でも、私は不適合だった。
ただの、凡人。
だから。
才能を持つ人が、羨ましかった。
ただ––––––それだけ。
それ以上の理由を求めるほど私は冷静じゃなかったし、たとえ考えても、それしか浮かばないだろう。
才能が羨ましい。妬ましい。疎ましい。
そして。
何もない自分が、悲しい。
だから、私はここで死ぬことにした。
どうせ、こんなことをしたのだから、いずれ殺されるだろう。だったら、今、何もない私のまま、死にたい。
死んで、すべてを終わりたい。
もう、人生に飽きちゃったから。
「これで.......終われる––––––」
「まだ、終わらせないよ」
唐突に。
声がした。死んだと思っていた、少年から。
少年は血まみれの服のまま立ち上がり、
「君は、麻宮詩織は、まだ僕の元で働いてもらわないといけない。だから、まだ死ぬんじゃない」
と。
そう言った。
少年は、白かった。真っ白だった。
少年の前では、すべてが、平等に思えるほど。
凡人も、天才も。何もかも。
少年の前では、霞んで見えた。
その、誰よりも白い、少年は。
誰よりも上に立ち。
人を使いこなす、その姿は。
まるで––––––
少年の名は、ケイト。
『死神』組織長、『白の王様』。
間に挟むくらいだったのに、書きすぎた。
次回、『相談』!!
お楽しみに!!
突然タイトルは変わるかもしれないので、すみません......




