『万物の弾丸』
『万物の弾丸』–何でも撃てる。ただし、同時に撃てるのは二発まで。人間の手は二つしかないので。
しかし、チートにも程があります。囲島君がズタボロです。
「そっかー。アリス、騙されちゃったのかー。お兄ちゃん悪だねー。じゃあ、悪いことする子には、お仕置きしなきゃねー」
アリスは、両の手を銃の形にする。
「バァン」
そう言った途端に、僕の体を、二つの衝撃が襲う。
「がはっ!!」
「両手撃ちもできるんだよー。アリスは手が二つしかないから、二発までしか同時に撃てないんだけどねー」
最初の攻撃で、勝敗は決まっていた。
それからは、一方的な攻撃。圧倒的すぎる。ラスボス級じゃないか、こんなの。
「アリスの力はね、『万物の弾丸』って言うんだよ。真っ白なお兄さんがつけてくれたんだー、この名前」
『万物の弾丸』。つまりは、何でもかんでも撃てるってことだろうか。今は石を撃ってるけど。やっぱりラスボス級である。けど、これでもまだ上がいるんだよなぁ、『死神』には。世界は広い。
「真っ白なお兄さん......ってのは、誰だ?」
喋るのが精一杯だった。立ち上がれない。切られたりするのには慣れているが、衝撃というのは初めてだ。殴られた痛みに近い。これは帰ったら青あざだらけだろうな............帰れるかな?
「真っ白なお兄さんはねー。アリス達の、ボスだよー」
ボス直々につけてもらったのか、その名前。もしやボスは中二病なのでは。
だとすると、その真っ白な中二病お兄さんが、僕の最終目標というわけか。
そこにたどり着く前に、勇者さんは挫けそうだよ。だって中ボスポジが強過ぎなんだもの。
少し弱気になってしまったが、とりあえずはこの状況をどうにかしなければ。少女に虐められている高校二年生の図は、流石に泣きたくなる。
「さて......じゃあそろそろ、僕も本気を出そうかな」
今までは手加減してましたアピールである。実際は手加減する暇もないほどやられまくったわけだが。前話の終盤の意気込みが嘘のようだ。あれだけ殺す殺す言ってたのに。恥ずかしい。
「なーんだ、お兄ちゃん手加減してたのかー。だからあんなに弱かったんだねー」
ぐさり。
「アリスにハンデをくれるなんて、お兄ちゃんはじぇんとるまんだねー」
ぐさり。
「優しいお兄ちゃんだねー」
ぐさり。心が痛い。折れそうだ。
「だったらー、お礼にー、
アリスも本気だしてあげる!」
え?
今なんて言った?
「あの......ごめん、今なんて言った?聞き逃しちゃったよ、あはははは」
「むー。ちゃんと聞いててよー。だから、アリスも、本気だしてあげる、って言ったんだよ」
やばい。やばいやばいやばいやばい。
まさか、今までは前哨戦?
僕がやられまくってたのは、ウォーミングアップだと、そう言うのか?
「アリスさん?それ、本気で言ってますか?」
「本気だよー。本気で本気だよー」
なん......だと?
僕が焦りまくっているのも露知らず、アリスの手は銃の形へ変わっていく。
「じゃあいくよー」
「お、おい、ちょっとまて––––––」
「バァン」
ごぉん、と。何かと何かがぶつかった音がした。
僕の後ろにあった壁に、穴が空いていた。
正確には、僕から十センチメートルほど離れた位置に、直径一メートルほどの、穴が空いていた。
「あれー?外しちゃった。ごめんね、お兄ちゃん。次はちゃんと当てるから」
「な、何を撃ったんだ?今」
多分、僕の声は震えていただろう。未知の恐怖に。
「ん?ただの石だよ?」
マジっすか。
これは、ラスボス級どころじゃないだろ。裏面の隠しボスいっちゃってるだろ。
「じゃあ、もう一回!わんもあーってやつだねー」
言動と行動がかけ離れている。百八十度転換してもこんなことにはならないはずだ。
「よぉーし、次は当てるよー。
バァン」
空白。その時、僕の思考は動いていなかった。あまりの痛みに、あまりの衝撃に、何も考えられなかったのだろう。
「、、、、は、?、?」
右の、腕の付け根を見る。
そこに、あるはずのものがなかった。
右腕が––––––なかった。
「ぎゃぁあぁあぁぁぁあぁあああぁああああああああああああああ!!!!!」
強引にもぎ取られたようなその付け根を、手で抑える。赤い血が、まるで噴水のように噴き出ていた。なんていうか、シュール?そんな言葉でしか形容できないほど、それは異様な光景だった。自分の体なんだけどね。
痛みってのは、やっぱり、どんなに言ってても、慣れないもんだなぁ。
「あ、うぇ、、あ」
嗚咽のようなものが、叫び声の搾りかすのように、口から漏れた。
今までとは、格が違った。
なんていうか、常軌を逸してるというか。
今までのやつは、普通に銃を使ったり、ナイフだったり、右腕が刃物みたいになるやつと、まだ、人を脱していなかった。
けど、こいつは。
こいつは完璧に、『人外』だ。
「お兄ちゃん、もしかしてもう終わり?本気出さないのー?」
アリスは、まだ傷一つない。つけられるわけがない。近づく事さえ、出来ないのだから。
本気なんて、とっくの昔から出してるんだけど。まだ、諦めるわけには、いかない。
壁に体をもたれさせながら、ずりずりと起き上がる。
「いーや、まだ終わらないぜ?お兄ちゃんは、まだ本気出してないからな」
「むー。分かったよ。アリスが、ぜぇーったい、本気にさせてあげる」
そう言って。また、あの言葉を、口にする。
「バァン」
「があぁっ!!」
体が、壁に無理矢理押し付けられる。どうやら、次も当たったらしい。
脇腹に、抉られた跡があった。
左足の太腿に、穴が空いていた。
「うーん。二発同時に撃つと、当たりにくくなっちゃうんだよねー」
アリスさんは、冷静に分析してらっしゃる。流石だ。
「ぐっ............!!」
叫ぶのを、必死で堪える。余裕を持たないとね、演技だっていうのがばれちゃうからね。
立っているので、限界だった。本当は、今すぐ座りたいんだけどなー。太腿痛い。
「じゃあ、次は連続でいくよー。
バァン、バァン、バァン」
バァンバァンバァンバァン。
何回、撃たれただろうか。何回か外れたのもあった気がする。
やられ過ぎて、痛覚が麻痺している。そのせいか、痛みを感じない。
うつ伏せになって倒れた状態で、まだ残っていた左腕を使って、アリスの方へ這い寄る。
「大丈夫?お兄ちゃん?アリスからすると全然大丈夫じゃなさそうだよ?」
「だ、いじょうぶ、だ」
「本気、出さないの?」
「あ、あ。おま、えにつかう、には、つよすぎ、るから、な」
ちゃんと喋れているかどうかも怪しい。まだ本気じゃないってさぁ、ここまで来たらそろそろ出せよ。とは言えない。いや、もう本気なんですよー。とは言わない。
「でも、多分次が最後だねー。アリスの方も、弾無くなってきちゃったし」
そう言って、アリスは腰にあるポーチの中に手をいれた。残弾を確かめているのだろう。
「あと二発分弾丸があるから、お兄ちゃんがこれに耐えられたら、お兄ちゃんの勝ちね」
「勝ったら、なにか、あるのか?」
そう訊くと、アリスは腕を組み、悩み始めた。
「うーん。そうだねー。じゃあ、もしお兄ちゃんが勝ったら、アリスは『死神』を抜ける!!それで、お兄ちゃんのこと手伝う!!それでいい?」
「え?そんな、簡単に、抜けていい、のか?」
「うーんと、元々気まぐれで入っただけだからねー。抜けるのも、てきとーでいいんじゃないかなー。セルフサービスってやつだねー」
「それは、ちょっと、違うけど」
こんな隠しボス級の敵が、味方になるのか?それを『死神』が許すとは思わないけど。
「よぉ、し。お兄ちゃん、頑張っちゃう、ぞー」
「でも、手加減はしないよー。本気でいくからね、お兄ちゃん」
両手を銃の形にして。
「バァン」
その言葉が、廃工場に、響く。
響く。響く。響く。
「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、?、あ?」
さぁーて。
僕の体に、何が起こったのでしょうか?
正解は。
「あれ?お兄ちゃん、頭取れちゃったー?」
主人公死亡オチ二回目です。
まぁどうせ生き返りますが。
次回、『白の王様』!!
お楽しみに!!




