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不完全少年の憂鬱  作者: 仲村薫
終わりの始まり
8/20

『万物の弾丸』

万物(ユニヴァース)弾丸(バレット)』–何でも撃てる。ただし、同時に撃てるのは二発まで。人間の手は二つしかないので。

しかし、チートにも程があります。囲島君がズタボロです。

「そっかー。アリス、騙されちゃったのかー。お兄ちゃん(ワル)だねー。じゃあ、悪いことする子には、お仕置きしなきゃねー」

アリスは、両の手を銃の形にする。

「バァン」

そう言った途端に、僕の体を、二つの衝撃が襲う。

「がはっ!!」

「両手撃ちもできるんだよー。アリスは手が二つしかないから、二発までしか同時に撃てないんだけどねー」

最初の攻撃で、勝敗は決まっていた。

それからは、一方的な攻撃。圧倒的すぎる。ラスボス級じゃないか、こんなの。

「アリスの力はね、『万物(ユニヴァース)弾丸(バレット)』って言うんだよ。真っ白なお兄さんがつけてくれたんだー、この名前」

万物(ユニヴァース)弾丸(バレット)』。つまりは、何でもかんでも撃てるってことだろうか。今は石を撃ってるけど。やっぱりラスボス級である。けど、これでもまだ上がいるんだよなぁ、『死神』には。世界は広い。

「真っ白なお兄さん......ってのは、誰だ?」

喋るのが精一杯だった。立ち上がれない。切られたりするのには慣れているが、衝撃というのは初めてだ。殴られた痛みに近い。これは帰ったら青あざだらけだろうな............帰れるかな?

「真っ白なお兄さんはねー。アリス達の、ボスだよー」

ボス直々につけてもらったのか、その名前。もしやボスは中二病なのでは。

だとすると、その真っ白な中二病お兄さんが、僕の最終目標というわけか。

そこにたどり着く前に、勇者さんは挫けそうだよ。だって中ボスポジが強過ぎなんだもの。

少し弱気になってしまったが、とりあえずはこの状況をどうにかしなければ。少女に虐められている高校二年生の図は、流石に泣きたくなる。

「さて......じゃあそろそろ、僕も本気を出そうかな」

今までは手加減してましたアピールである。実際は手加減する暇もないほどやられまくったわけだが。前話の終盤の意気込みが嘘のようだ。あれだけ殺す殺す言ってたのに。恥ずかしい。

「なーんだ、お兄ちゃん手加減してたのかー。だからあんなに弱かったんだねー」

ぐさり。

「アリスにハンデをくれるなんて、お兄ちゃんはじぇんとるまんだねー」

ぐさり。

「優しいお兄ちゃんだねー」

ぐさり。心が痛い。折れそうだ。

「だったらー、お礼にー、

アリスも本気だしてあげる!」

え?

今なんて言った?

「あの......ごめん、今なんて言った?聞き逃しちゃったよ、あはははは」

「むー。ちゃんと聞いててよー。だから、アリスも、本気だしてあげる、って言ったんだよ」

やばい。やばいやばいやばいやばい。

まさか、今までは前哨戦?

僕がやられまくってたのは、ウォーミングアップだと、そう言うのか?

「アリスさん?それ、本気で言ってますか?」

「本気だよー。本気で本気だよー」

なん......だと?

僕が焦りまくっているのも露知らず、アリスの手は銃の形へ変わっていく。

「じゃあいくよー」

「お、おい、ちょっとまて––––––」

「バァン」

ごぉん、と。何かと何かがぶつかった音がした。

僕の後ろにあった壁に、穴が空いていた。

正確には、僕から十センチメートルほど離れた位置に、直径一メートルほどの、穴が空いていた。

「あれー?外しちゃった。ごめんね、お兄ちゃん。次はちゃんと当てるから」

「な、何を撃ったんだ?今」

多分、僕の声は震えていただろう。未知の恐怖に。

「ん?ただの石だよ?」

マジっすか。

これは、ラスボス級どころじゃないだろ。裏面の隠しボスいっちゃってるだろ。

「じゃあ、もう一回!わんもあーってやつだねー」

言動と行動がかけ離れている。百八十度転換してもこんなことにはならないはずだ。

「よぉーし、次は当てるよー。

バァン」


空白。その時、僕の思考は動いていなかった。あまりの痛みに、あまりの衝撃に、何も考えられなかったのだろう。

「、、、、は、?、?」

右の、腕の付け根を見る。

そこに、あるはずのものがなかった。

右腕が––––––なかった。

「ぎゃぁあぁあぁぁぁあぁあああぁああああああああああああああ!!!!!」

強引にもぎ取られたようなその付け根を、手で抑える。赤い血が、まるで噴水のように噴き出ていた。なんていうか、シュール?そんな言葉でしか形容できないほど、それは異様な光景だった。自分の体なんだけどね。

痛みってのは、やっぱり、どんなに言ってても、慣れないもんだなぁ。

「あ、うぇ、、あ」

嗚咽のようなものが、叫び声の搾りかすのように、口から漏れた。

今までとは、格が違った。

なんていうか、常軌を逸してるというか。

今までのやつは、普通に銃を使ったり、ナイフだったり、右腕が刃物みたいになるやつと、まだ、人を脱していなかった。

けど、こいつは。

こいつは完璧に、『人外』だ。

「お兄ちゃん、もしかしてもう終わり?本気出さないのー?」

アリスは、まだ傷一つない。つけられるわけがない。近づく事さえ、出来ないのだから。

本気なんて、とっくの昔から出してるんだけど。まだ、諦めるわけには、いかない。

壁に体をもたれさせながら、ずりずりと起き上がる。

「いーや、まだ終わらないぜ?お兄ちゃんは、まだ本気出してないからな」

「むー。分かったよ。アリスが、ぜぇーったい、本気にさせてあげる」

そう言って。また、あの言葉を、口にする。

「バァン」

「があぁっ!!」

体が、壁に無理矢理押し付けられる。どうやら、次も当たったらしい。

脇腹に、抉られた跡があった。

左足の太腿に、穴が空いていた。

「うーん。二発同時に撃つと、当たりにくくなっちゃうんだよねー」

アリスさんは、冷静に分析してらっしゃる。流石だ。

「ぐっ............!!」

叫ぶのを、必死で堪える。余裕を持たないとね、演技だっていうのがばれちゃうからね。

立っているので、限界だった。本当は、今すぐ座りたいんだけどなー。太腿痛い。

「じゃあ、次は連続でいくよー。

バァン、バァン、バァン」

バァンバァンバァンバァン。

何回、撃たれただろうか。何回か外れたのもあった気がする。

やられ過ぎて、痛覚が麻痺している。そのせいか、痛みを感じない。

うつ伏せになって倒れた状態で、まだ残っていた左腕を使って、アリスの方へ這い寄る。

「大丈夫?お兄ちゃん?アリスからすると全然大丈夫じゃなさそうだよ?」

「だ、いじょうぶ、だ」

「本気、出さないの?」

「あ、あ。おま、えにつかう、には、つよすぎ、るから、な」

ちゃんと喋れているかどうかも怪しい。まだ本気じゃないってさぁ、ここまで来たらそろそろ出せよ。とは言えない。いや、もう本気なんですよー。とは言わない。

「でも、多分次が最後だねー。アリスの方も、弾無くなってきちゃったし」

そう言って、アリスは腰にあるポーチの中に手をいれた。残弾を確かめているのだろう。

「あと二発分弾丸があるから、お兄ちゃんがこれに耐えられたら、お兄ちゃんの勝ちね」

「勝ったら、なにか、あるのか?」

そう訊くと、アリスは腕を組み、悩み始めた。

「うーん。そうだねー。じゃあ、もしお兄ちゃんが勝ったら、アリスは『死神』を抜ける!!それで、お兄ちゃんのこと手伝う!!それでいい?」

「え?そんな、簡単に、抜けていい、のか?」

「うーんと、元々気まぐれで入っただけだからねー。抜けるのも、てきとーでいいんじゃないかなー。セルフサービスってやつだねー」

「それは、ちょっと、違うけど」

こんな隠しボス級の敵が、味方になるのか?それを『死神』が許すとは思わないけど。

「よぉ、し。お兄ちゃん、頑張っちゃう、ぞー」

「でも、手加減はしないよー。本気でいくからね、お兄ちゃん」

両手を銃の形にして。

「バァン」

その言葉が、廃工場に、響く。

響く。響く。響く。

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、?、あ?」


さぁーて。

僕の体に、何が起こったのでしょうか?

正解は。

「あれ?お兄ちゃん、頭取れちゃったー?」


主人公死亡オチ二回目です。

まぁどうせ生き返りますが。

次回、『白の王様』!!

お楽しみに!!

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