『不完全』
バトル突入!!
力が欲しかった。
圧倒的じゃなくてもいい。
絶対的じゃなくてもいい。
どんなに弱くてもいい。
どんなに使えなくてもいい。
僕はただ、彼女を助けるための、力が欲しかった。
諦めたくなかった。自分の無力を理由にして。
言い訳をしたかった。力がなかったから、助けられなかったんだと。
そして、僕は、力を手に入れた。
それは、力の残滓。それは、誰かのおこぼれ。でも、無いよりはましだった。
力があるなら。力があるなら、彼女を助けられる。そう信じていた。
助けられなかった。
力は、そこにあるだけ。大きな力は権力となり示されるが、小さな力は振るわなければ誰も気づかない。
力を振るうための、意思が足りなかった。矛先を、向けられなかった。
その時から、僕はもう、同じ過ちはしないと、そう心に誓った。
次は、必ず、この力を––––––敵に向ける。
☆ ☆ ☆
「あー、服が、血だらけだ。また、洗わなきゃ、なぁ」
三神は、目を見開き、驚愕の表情を浮かべていた。
「まさか、お前––––––『人外』か!!」
「『人外』、ねぇ。面白味の無い、ネーミング、センスだ。それに、僕のことは––––––『不完全』。そう、呼んでくれ」
そう言いながら、心臓に突き刺さっているナイフを抜く。すると、栓を抜いたかのように、溜まっていた血液が溢れ出した。
「あー、ふらふらする。血が、足りない」
軽い貧血に陥ったようだ。視界もぼやけ、霧のようなものが辺りを覆い尽くす。平衡感覚が崩れ、足元が揺れているかのような錯覚に陥る。
「大丈夫か、囲島!?」
白石が、倒れそうになったところを支えてくれた。
「ん......あぁ、大丈夫だ。すぐ、治るから」
「おいおい。いつまで茶番を続けるつもりだ?不完全だかなんだか知らないが、反撃するつもりがないなら、何回でも殺してやるぞ?」
三神は冷静さを取り戻したようで、懐からもう一つナイフを出した。
「白石。僕が、あいつの相手をする。だから、その間に、逃げろ」
「だが、お前、その体––––––」
「僕の心配は、いいから。早く、逃げろ」
「私も、闘える」
「違う。そうじゃなくて、闘ったら、駄目なんだよ」
重たい口を動かし、必死に言葉を紡ぐ。
「僕は、君を守らなくちゃ、いけないんだ」
「何で、お前が......」
「頼まれた、からだよ。昔、というか今も、世話になってる人に、ね」
立ち上がる。まだ少し足元が不安定だが、立てないほどではない。
「じゃあ、早く逃げてくれ」
「けど、逃げるといっても、何処に」
確かに、彼女の家は危険だろう。そのくらいは調べられているだろうから。
どこか、安全な場所。そう言えば、
「学校。学校の、第二、理科準備室だ。そこなら、安全だ。中に、人がいるはずだから、その人に、事情を説明してくれ」
「わかった」
そういうと、白石は公園を出て、学校に向かって走って行った。
「追いかけないで、いいのか?」
三神に尋ねる。
「気が変わったんだ。今の私の目的は、君を殺すこと。白石百合乃は、終わった後でも間に合うしな」
「お前じゃあ、多分、白石には勝てないだろうな」
「ははっ。だったら、なぜ、君が初対面の彼女を庇ったんだ?彼女一人で私に勝てるというのなら、お前が庇う必要などないだろう」
「好感度だよ。ギャルゲーみたく、さ」
先ほど心臓から抜いたナイフを右手で握り締める。
「こういうのは、最初の出会いが、肝心なんだよ」
徐々に痛みに体が慣れてくる。本当に、慣れって怖い。
さてと。
「じゃあ、そろそろ」
「始めようか」
殺し合いを。
三神が先に、前方へ駆け出し、僕との間にあった距離を一気に詰める。
「、らぁあ!!」
三神がナイフを振りかぶると同時に、一歩後ろに下がる。ナイフが、目の前を空振りする。
避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。
二十回ほど繰り返したところで、三神が突然、間合いから外れる距離まで後退する。
「なぜ!!なぜ攻撃してこない!!」
三神が、声を荒げる
「いーや、別に。ただ、単調な、攻撃だなぁ、って」
それは、至極単純な挑発。しかし、攻撃を何度も避けられた三神ならば、激昂するのは––––––当然だ。
「そうかい............あぁ、分かったよ。余興は、これで終わりだ。おしまいだ。そんなにお前が殺されたいなら––––––私が、この手で殺してあげようじゃないか」
そう言って。三神は、ナイフ地面に落とした。
「僕は、『人外』ではない。だけどね、『死神』では、『人外』を人工的に作り出す方法を、研究しているんだ。そして、僕はその研究の、副産物を貰った。それが、これだ」
そう言った途端に、三神の右腕が、みるみる形を変えていき、そして、一つの刃物となった。
「私の右腕は、刃物になる。骨より頑丈で、とっても切りやすい、刃物にね。これで君を切ったら、一体どうなるだろうね。見たところ君の力は回復系だ。だが、傷の治りはそこまで早くない。だとすれば、即死の攻撃を食らったら、君は、死ぬ」
「.............」
「つまらない余興を、ありがとう。お礼に––––––この手で、ぶっ殺してやるよ!!」
そう言って、三神が間合いに入り。
僕は、刺された。
ずぶずぶと、刃が僕の体に飲み込まれていく。
そして、一瞬の空白の後。
「あぁぁぁああぁあぁっぁああぁぁああああぁぁああぁっっぁああぁ!!!!!」
痛みが、体を支配する。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
痛い、けど。いたいけど。
まだましだ。
あの時に比べれば––––––まだ、ましだ。
「っっぐぁ、っがぁぅああっぁぁぁああぁあぁあぁあぁぁぁああ!!!!!!!」
叫ぶ。自分の意識を、とどめるために。腹の底から絞り出したその声量に、三神が怯む。
「ま............だ、おわ、て......い」
そう。まだだ。まだ、駄目だ。
まだ。
敵を、殺していない。
「まだ、おわって............ない!!!!」
そう言って。
手に持っていたナイフを、三神の体に、突き刺した。
「っっ!!が、ごぶぁはぁ!!」
三神が、吐血する。
落ち着いた頃合いを見て、僕は話し出す。どうせ暇だし。
「お前、さ。一つ、勘違い、してるよ。僕の、力は、回復系、だけど。そんだけじゃ、ない」
ごばぁ。血を吐いた。
「僕は、死なない、し、死んでも、生き返る」
つまり、分かりやすく言うと、ゾンビである。死んでも、死んでも生き返り、そしてまた死んで、生き返る。
それが––––––僕の、力。
「が、はぁっ!!............残念、だったな。これで僕の、好感度は、鰻上り、だ」
そこで、僕は一度死んだ。死ぬ前に、白石の姿が見えたような気がするが......多分、気のせいだろう。
『死神』・・・便利屋。何人で経営しているのかは分かりませんが、結構いると思います。
次回、『人外』!!
お楽しみに!!
※変更される時もあります。
※三神の一人称が分かりにくいことになっていたので、私で統一しました。すみません。




