『死神』
登場人物+
三神 『死神』組織の一員。係長くらいの人
「貴様............誰だ」
僕と白石は、無意識の内に立ち上がっていた。目の前の男に、危険を感じたのだ。黒いスーツで身を包んだその男は、明らかに、ただの一般人とは思えない雰囲気を纏っていた。
「『死神』組織の三神です。はじめまして。そちらの女の子–––白石さんには、部下がお世話になったね」
部下、ということは、白石は既に『死神』と接触しているのか?
「何が目的だ」
三神という男に聞く。
「先程言ったことの通り。白石さん......あなたを、『保護』しにきた」
「私は、保護なんてされる必要は、ない」
「あなたの意思など、関係ない。これは––––––亡くなられた、あなたの母親の、遺志なんだからね」
「あの人は母親なんかじゃない!!」
白石が、初めて、声を荒げた。
母親じゃ、ない。その言葉の真意は、僕には分からない。
「だから、言っただろう。あなたの意思は、関係ない。私は、私の任務を全うする。ただそれだけのことだ」
三神は、まるで白石の言葉を意に介さず、そう言い切る。
「じゃあ、ついて来て貰えるかい?あんまり面倒なことはしたく無いから、抵抗しないで欲しいんだけど」
そう言いながら、三神が、白石の腕に手を伸ばす。
「嫌だ。私は、行かない」
そう言って、白石が手をはねのけた。
「はぁぁー。面倒なことは、したくないんだけど............しょうがないか」
そう言いながら、三神が、少し離れる。そして、
「指の一つや二つ、奪っても大丈夫だよね」
「っっ!!」
三神の言葉に、嘘はないだろう。
『死神』。便利屋のように、色々な依頼を受け、その成功率は100%とまで言われている。そんな組織が、なぜ死神という名前なのか。答えは単純。
依頼の成功のためなら、殺人をも犯すから。
一つの依頼で一人殺す。そんな噂が流れるほど、彼らは何事もないように、さも当然のように、人を殺す。
だから『死神』。それが『死神』。
だからこそ、三神の言葉は本当だ。それに躊躇するような人間は、『死神』にはいない。
「どの指がいいかい?親指?人差し指?中指?それとも全部切って欲しいかな?」
そう言いながら、三神がナイフを構える。
狂気に染まった顔。
それはまさに––––––死神だった。
「ほら、どうするんだい?大人しく来るか?それとも指を切って欲しいかい?」
「私は––––––」「ちょっと待て」
白石の言葉を遮る。
「僕のことを、忘れてもらっちゃあ困るなぁ」
「? 誰なんだよ、お前」
「僕は、囲島だよ。知らないかな?」
「知らないな、そんな名前のやつは。まぁ、お前に用はないんだ。そこをどいてくれ」
「嫌だね。僕は、同級生の指が切られるところなんて見たくないし、白石が連れていかれるのも御免だ」
「どけ。殺されたいのか?」
「いーや。殺されたくはないよ。でも、白石が連れていかれるのは嫌なんだ」
「囲島、私は大丈夫だ!!だから––––––」
「君が、闘うって?それは駄目だ」
「なぜだ!あいつぐらいなら、私だけで、」
確かに。三神くらいの相手であれば、白石でも対応できるかもしれない。だが、
「保証は、あるのか?君が無傷であいつを倒せる、保証が」
「それは............」
「100%なんて、あり得ない。選択肢にリスクがないことなんて、いつだってないんだ。君がリスクを背負う必要はない。そのリスクは......僕が背負う」
「なんで、そこまでするんだ。初対面の、私に」
理由付けは、いくらでもできる。本心を隠すことも、容易い筈だった。けど。
僕は、言った。
「もう、後悔したくないから」
その時、僕はどんな顔をしていただろうか。あの過去を思い出して、どんな気持ちだったんだろうか。
「それに、君と僕は、似ているしね」
そうだ。同じじゃない。白石と僕は、似ているだけ。それを、忘れていた。彼女との、明確な違いを。
「あーあーあーあー!!」
三神が、突然、叫ぶ。
「くそ、いつまで喋ってるんだよ、お前ら。面倒だ。あー、もういい。分かったよ。お前、殺してやるから」
そう言って。
三神はこちらに近付いて、ナイフで僕の心臓の辺りを、を刺した。
あー。いってぇなぁ。
傷口から、体内の何かが流れていくのがわかる。多分、血だ。
まぁ。大丈夫だろ。
だって、僕は。
「あー、くそ、面倒だなぁ、また上に怒られる。だから殺したくなかったんだ––––––」
「だぁーれが、殺されたって?」
僕は、死なない。
何故かって?
「僕は––––––不完全なんだ」
次回、『不完全』!!
お楽しみに!!
※三神の一人称が分かり難かったので、私で統一しました。すみません




