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不完全少年の憂鬱  作者: 仲村薫
終わりの始まり
4/20

『死神』

登場人物+

三神(みかみ) 『死神』組織の一員。係長くらいの人

「貴様............誰だ」

僕と白石は、無意識の内に立ち上がっていた。目の前の男に、危険を感じたのだ。黒いスーツで身を包んだその男は、明らかに、ただの一般人とは思えない雰囲気を纏っていた。

「『死神』組織の三神です。はじめまして。そちらの女の子–––白石さんには、部下がお世話になったね」

部下、ということは、白石は既に『死神』と接触しているのか?

「何が目的だ」

三神という男に聞く。

「先程言ったことの通り。白石さん......あなたを、『保護』しにきた」

「私は、保護なんてされる必要は、ない」

「あなたの意思など、関係ない。これは––––––亡くなられた、あなたの母親の、遺志なんだからね」

「あの人は母親なんかじゃない!!」

白石が、初めて、声を荒げた。

母親じゃ、ない。その言葉の真意は、僕には分からない。

「だから、言っただろう。あなたの意思は、関係ない。私は、私の任務を全うする。ただそれだけのことだ」

三神は、まるで白石の言葉を意に介さず、そう言い切る。

「じゃあ、ついて来て貰えるかい?あんまり面倒なことはしたく無いから、抵抗しないで欲しいんだけど」

そう言いながら、三神が、白石の腕に手を伸ばす。

「嫌だ。私は、行かない」

そう言って、白石が手をはねのけた。

「はぁぁー。面倒なことは、したくないんだけど............しょうがないか」

そう言いながら、三神が、少し離れる。そして、

「指の一つや二つ、奪っても大丈夫だよね」

「っっ!!」

三神の言葉に、嘘はないだろう。

『死神』。便利屋のように、色々な依頼を受け、その成功率は100%とまで言われている。そんな組織が、なぜ死神という名前なのか。答えは単純。

依頼の成功のためなら、殺人をも犯すから。

一つの依頼で一人殺す。そんな噂が流れるほど、彼らは何事もないように、さも当然のように、人を殺す。

だから『死神』。それが『死神』。

だからこそ、三神の言葉は本当だ。それに躊躇するような人間は、『死神』にはいない。

「どの指がいいかい?親指?人差し指?中指?それとも全部切って欲しいかな?」

そう言いながら、三神がナイフを構える。

狂気に染まった顔。

それはまさに––––––死神だった。

「ほら、どうするんだい?大人しく来るか?それとも指を切って欲しいかい?」

「私は––––––」「ちょっと待て」

白石の言葉を遮る。

「僕のことを、忘れてもらっちゃあ困るなぁ」

「? 誰なんだよ、お前」

「僕は、囲島だよ。知らないかな?」

「知らないな、そんな名前のやつは。まぁ、お前に用はないんだ。そこをどいてくれ」

「嫌だね。僕は、同級生の指が切られるところなんて見たくないし、白石が連れていかれるのも御免だ」

「どけ。殺されたいのか?」

「いーや。殺されたくはないよ。でも、白石が連れていかれるのは嫌なんだ」

「囲島、私は大丈夫だ!!だから––––––」

「君が、闘うって?それは駄目だ」

「なぜだ!あいつぐらいなら、私だけで、」

確かに。三神くらいの相手であれば、白石でも対応できるかもしれない。だが、

「保証は、あるのか?君が無傷であいつを倒せる、保証が」

「それは............」

「100%なんて、あり得ない。選択肢にリスクがないことなんて、いつだってないんだ。君がリスクを背負う必要はない。そのリスクは......僕が背負う」

「なんで、そこまでするんだ。初対面の、私に」

理由付けは、いくらでもできる。本心を隠すことも、容易い筈だった。けど。

僕は、言った。

「もう、後悔したくないから」

その時、僕はどんな顔をしていただろうか。あの過去を思い出して、どんな気持ちだったんだろうか。

「それに、君と僕は、似ているしね」

そうだ。同じじゃない。白石と僕は、似ているだけ。それを、忘れていた。彼女との、明確な違いを。

「あーあーあーあー!!」

三神が、突然、叫ぶ。

「くそ、いつまで喋ってるんだよ、お前ら。面倒だ。あー、もういい。分かったよ。お前、殺してやるから」

そう言って。

三神はこちらに近付いて、ナイフで僕の心臓の辺りを、を刺した。

あー。いってぇなぁ。

傷口から、体内の何かが流れていくのがわかる。多分、血だ。

まぁ。大丈夫だろ。

だって、僕は。

「あー、くそ、面倒だなぁ、また上に怒られる。だから殺したくなかったんだ––––––」

「だぁーれが、殺されたって?」

僕は、死なない。

何故かって?

「僕は––––––不完全なんだ」


次回、『不完全』!!

お楽しみに!!


※三神の一人称が分かり難かったので、私で統一しました。すみません

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