力
いや、その後が短かったら、頑張って四話に収めようとした意味がないでしょうに。
というわけで、多分六話くらいになるかと......
「私の名前は、水野周太郎。水野博士と呼んでくれ」
その男、水野博士は、確かにそう呼ぶに相応しい格好をしていた。
グレーのスーツの上から前の開いた白衣を着て、黒縁の眼鏡にもじゃもじゃの天然パーマは、確かに博士を思わせる............どちらかというと、研究者じゃないか?
そんなどうでもいいノリツッコミはさておき。
「力って、言うのは、どういう......?」
「そのまんまの意味だよ。ただまずは、君のその怪我を『直さ』なきゃね」
そう言って水野博士は、住宅街の塀に座り込んでいる僕のところへ近づき、銃弾で撃たれた腹の部分に手をかざす。
「な......にを」
「見てれば分かる」
水野博士の手が、僕の傷口に触れた。
「.......ってぇ!!......」
「少しの間だから、我慢してくれ」
すると。
水野博士の手がかざされた部分の傷口が、みるみる閉じていった。まるで、元の状態に戻ったように。
「これは......なんで」
信じられない。
最初は、そう思った。
人が手をかざしただけで、傷が治るはずがない。
異次元。異常。異様。異端。
「これは、私の力なんだ。『修復能力』。触れるだけで、大抵のことは直せる。直すだけで、治せはしないけど」
「でも............」
「信じられないか?でもそれは、自分を守ってるだけだ。ハリボテの常識で自分を固めて、壊れることを、壊されることを、恐れてる」
そう言って、水野博士は体のあちこちの殴られたあざを、直し始めた。
「殻を破れ。非常識を受け入れろ。じゃないと少年君は、いつまで経っても進めない。............さてと。修復も終わったことだし。本題に、行こうかな。
少年君は、力が欲しいのかい?」
力。鈴芽を助けるための、力。
鈴芽が助かるための、力。
それがあれば、鈴芽を助けられる。
「力が......欲しい」
そう言うと、博士は白衣の中に手を入れて、一つの試験管のようなものを、取り出した。真っ赤な、試験管を。
「中に入ってるのは、血だ。力を持つ者の、血。これを少年君の体内に入れれば、少年君は力を得る」
「そんなに、簡単なのか?」
「あぁ、簡単さ。さて、じゃあ、ここで二つ、忠告したいことがある。言っておくが、君は実験体だ。失敗する可能性もある。それについては、いいかい?」
「あぁ、大丈夫だ」
「そして、二つ目の忠告なんだが。この力は、多分、君が思っているようなものじゃない。
完全なる『不完全』だ。それでも、いいのか?」
「どんなに小さな力でも、無いよりはましだ」
そう告げる。
無力さは、痛いほど味わったから。
「鈴芽を、助けなきゃいけない」
あぁー。さっきから、そればっかだなぁ、僕。
「だから、僕に力をくれ」
でも。これが、僕の憧れる、主人公なんだ。
「分かった。じゃあ、飲んでくれ」
「飲むのか!?............いや、分かった。飲むよ」
まさか、直接飲むことになるとは思わなかった。
注射器とかを使うのかと。
試験管を受け取り、中の血を覗く。
綺麗で、透き通るような赤。
そしてそれを。
一気に、飲んだ。
鉄分のなんとも言えない味が、口いっぱいに広がる。
そうして。
僕はむきむきになったとか。
そういう変化はなかった。
「......?何の変化もないぞ?」
そう言うと。
「じゃあ、試してみるか」
そう言い、博士は拳銃を僕の心臓に突きつけ。
「ちょっと失礼」
撃った。
水野博士登場です!!
次回、『異能』!!
お楽しみに!!




